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リサコラム
連載681回
      本日のオードブル

あるデザイナーの夢

第2話


「Rikoのリフォーム」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




6畳の
ワンルーム
床を磨き
白いビニール
クロスの上に
オレンジ色の
ペンキを塗り、
反対の壁に黒の
ストライプの線を描き、
そして中古のデスクと椅子
クッションを何個かと
クマのぬいぐるを
買いました。
私の部屋も
まんざらではなくなったでしょ?


 







        

第2話 「Rikoのリフォーム」




 「Rikoは自転車で自宅に急いで戻りながら考えていた。「Sariは

わたしと同じくらいの年齢だろうか?」と。


            


 美術系の専門学校に通いながら個人宅のお掃除スタッフとして働くRiko

は32才。大学で芸術系の学部に入る前、Rikoはすでに2年浪人していた。

そして大学2年生の頃、アルバイトでお小遣いを稼ぐのに忙しく、そのため、

勉強もおろそかになって1年留年した。だから、卒業した時はすでに、友達よ

り3年遅れてしまった。


           


 就職は自ら希望して営業職の仕事についたものの、周りはすべて後輩の先輩。

仲間には入れず、さらに営業成績は芳しくなかった。芳しくないというより最

低ラインという方が正しかった。


            


 毎月初め、営業成績のトップから3名の名前が朝礼で読み上げられる。しか

し、Rikoはそんなトップ集団とは全く縁のない、どちらかと言えば最下位

の3位には必ず入るくらいの成績だった。もちろん、そのポジションに安住す

るつもりはなかったけれど、別にそれを苦にすることもなかった。ただRiko

より3つ年上の直属の上司はそんなRikoをすでに見放した感があった。


            


 彼は「私の気分が悪くなるから叱らないけど、まあ、来月は頑張るんだよね」

と毎月、Rikoに言った。しかし、それも1年経ち、2年目に入ったある日、

Rikoを呼び出すと、「真面目だけど、もっと効率のいいやり方を見つけな

いと、この先、上がることはないと思うよ。そもそも、成績が悪いことが苦に

はならないのかね?」と少々呆れ顔で言われた。Rikoはその顔を見ながら、

中学2年の担任の教師の銀縁眼鏡の顔を思い出した。その先生もRikoに

「真面目だけど、勉強の仕方がどうも効率的ではないようだね。あなたは成績

が悪いことを苦にしないのかね?」と言われたことがあった。


            


 Rikoはその担任の眼鏡の奥の細い目を思い出しながら、上司の前でじっ

と思っていた。「成績の悪いことを苦にしなくちゃいけないの?苦にするって

いいことなの?生活苦とか、病気を苦にしてとか、人間関係を苦にしてとか、

いろんなことを苦にした人の行く末って、見えているんじゃないの」しかし、

Rikoは相変わらず、「次は頑張ります」とだけ言って済ませた。


            


 それでもRikoの営業成績は上がることはなく、低迷を続けた。Riko

は首にならない限り今の仕事を続けようと思ってはいたものの、自分より成績

のいい年下で先輩が成績を上げ続けることを苦に、ひとり、2人、3人と会社

を辞めて行った。そうなると、Rikoはボトムアップされたように顧客が自

分の方に流れ込んできた。すると今度は上司が、「頑張っているようだね。そ

の調子で頑張れ」と言ってくれたが、Rikoは大して頑張ったわけでも、さ

らに何か効率的な仕事の仕方を開発してわけでもなかった。同時にまた別の後

輩で同僚はRikoだけがいい思いをしていると陰口をたたく者もいた。


            


 Rikoはそんな陰口を苦にすることなく、そのまま会社に居続けたが、

ある日、学生時代、同じ美術系の大学に行っていた友人にばったりあって、彼女

が今、グラフィックデザイナーの仕事をしていることを知った。しかも独立

して海外でも活躍していることを知ると、Rikoは芸術とはほとんど無縁の

今の仕事に急速に興味を失った。彼女は「毎日が自分との闘いだけどね」と言

って締めくくった。


            


 そしてRikoは翌日に会社に辞表を出した。辞める理由を聞かれた時、

Rikoは「今度は自分とだけ闘います」と言おうかと思ったけれど、Rik

oはその反対を言った。つまり、「営業部員同士の闘いが苦になって」と。


            


 Rikoはそれから美術系の専門学校に入り直した。その学費と生活費を稼

ぐために、個人宅のお掃除会社で働き始めたのだった。2年が経ち、段々とい

いお宅を任せられるようになったRikoに次に回ってきた仕事が新進気鋭と

言われるデザイナー宅のデイリーの掃除で、それも学校のない朝から昼までの

仕事だったためにすぐに引き受けることにした。


            


 Rikoはそのデザイナー宅を初めて訪問した日、似ている部分はワンルー

ムに一人暮らしということくらいしかないことを知った。それなのに、相手は

自分と同じくらいの年齢で、広いSOHOの事務所を構え、広々としておしゃ

れなインテリアの中で仕事をし、そして海外でも活躍をしているデザイナーだ

った。RikoはそのデザイナーのSariに少なからずショックを受けた。


            


 その日、RikoはSariの部屋を掃除して床を磨き上げ、仕事を終え

ると、また急いで自転車でアパートに戻った。そしてアパートの向いに住む老

夫婦のオーナーに壁にペンキを塗りたいと言いに行った。オーナーは壁紙の上

に塗るならと渋々OKを出したため、Rikoは早速ペンキを買いに行き、夜

中に自分で壁をオレンジ色に塗った。それから、翌日、セカンドハンドという

中古品の店で白いデスクと椅子、そしてクッション数個とクマのぬいぐるみを

買った。


            


 RikoはSariに初めて会った日、Sariという目標ができてい

た。もちろん、Sariはそんなことは知るはずもないけれど



   



 上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1  
 
 新しい物語の2回目です。
 あなたはとRiko派ですか?それとも、Sari派ですか?
  


p.s. 2  インスタグラム始めました。どこにも行く暇がなく、
    私の部屋ばかりで、つまらないかもしれませんが。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2019年10月号です。

           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTood Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。







シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

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