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リサコラム
連載800回
      本日のオードブル

マダム・シック

第6話

「ポム・ド・テール」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



マダム
シックの
邸宅はパリ16区
高級住宅地の貴族の館
濃いブルーの重厚な玄関ドア
の向こうには自由、平等、友愛
そして、憂鬱もあるようです。
カリフォルニアガールの
この先はいかに?
幸運を
祈るばかり

 


 第6話「ポム・ド・テール」



 ジェニファーのパリの貴族の館でのスタートは波乱の幕開けとなった。

初日はハウスキーピング、アンヌの指導の下、オリエンテーションの長い1日

が終わった。


            


 恐ろしい生活指導の先生のような、強面ハウスキーピング、アンヌ

の登場をジェニファーはもちろん、予想していなかったが、

なんといっても、愛用のヴィンテージのデニムが一体どうなるのか

膝の穴にどんな継ぎが当てられるのかがが目下のもっとも気がかりな

ことだった。


           


 アンヌの言ったポム・ド・テールを検索すると、じゃがいもという

意味だった。「でも、まさか、じゃがいもなんて、そこまではいくら

なんでもないわよね?」しかし、ジェニファーが不安な気分になった

のは、それだけでもなく想像を遥かに凌ぐ、矮小で旧式のキッチン

だった。


            


 もちろん、狭いクローゼットスペースには落胆したが、夢見ていた

大理石のバスルームどころか、マダム・シックのそれは、5歳の

子供にぴったりなくらいのバスタブがついた小さなバスルームで、

バラの香りのバブルバスでくつろげる雰囲気はまるではなかった。

さらに、アメリカの自宅の自分の部屋に併設されているわけでもな

く、1階まで降りて行って、長い廊下を歩かなければならなかった。

また、彼女に用意された部屋にはテレビはなく、あるのは、リビング

の片隅で花台にされたブラウン管の小さなテレビだった。


            


 「マダム・シックの家の人たちはほんとに、みんなテレビを見ない

のかな?そんな、まさか!」しかし、ピエールの口ぶりでは、はたして

ちゃんと映るのかどうかなんて言ってるくらいなのだから…」.


            


 マダム・シックの邸宅は確かに、豪邸には違いなかったが、そこは

ジェニファーが妄想していた豪奢な暮らしとは違っていた。ジェニフ

ァーの予定では、パリ在住のアメリカ人ジャーナリストの友人を呼ん

で、最新のキッチンで一緒にわいわいフランス料理を作り、最新モデ

ルの大型スクリーンで古典的なフランス映画、そう、「巴里の空の下

セーヌは流れる」を鑑賞する、そんな古き良き時代のパリのロマンチ

シズムを感じたかったのだ。「なんと言っても、この元貴族の邸宅は

4か月間、私の管理下に置かれるのだから!ソファに寝っ転がって、

オイスターやチーズをつまみに、ボルドーワインを味わいながら、

そう、夜ごとボードレールの言ったパリの憂鬱を体験できる!だっ

て、カリフォルニアの陽気な風土の下では、『惡の華』も

『パリの憂鬱』なんて詩は全くピンとこなかったけれど、ここ、

本場パリなら、きっとわかるだろう」そんな知的好奇心もなくは

なかった。


            


 しかし、彼女が考えていたのは自由奔放な気分をパリで味わうこと

だった。「なんて言ったって、フランスって自由、平等、友愛でし

ょ?」しかし、そのジェニファーの夢も初日でしぼみつつあった。


            


 2日目の朝7時、玄関のベルがけたたましい音を立てると共に、

ハウスキーピングのアンヌが入って来た。「ジェニファー!どこに

いるの?」はアンヌは階段の下からジェニファーを呼んだ。「すぐ

に降りてきて!床磨きを教えますから!」ジェニファーはベッドか

ら飛び起きた。「あっ、えっ?床磨き?ですか?この私が?」

「もちろんです」「あの、アンナ、マダムからはそんなこと聞いて

いないんですが」「マダムからは、毎日のハウスキーピングをすべ

て叩き込むように言われていますから。最初のひと月は教育期間で

す。だから、月曜から土曜まで、朝7時から昼食をはさんで午後5時

まで、毎日です。そうでなければ、こんなお宅を維持管理できないで

しょう。はははは」アンヌはいかにも想定内という笑い方をした。

「そんな、毎日、ですか?」ジェニファーはこの厳しいハウスキー

ピングに特訓されるひと月をなどまるで想定外だった。その特訓の

日々を想像すると、もう次の言葉も出てこなかった。


            


 「もちろん、毎日です。あなた、おおらかなカリフォルニアから

来られたんですよね。こちらは、パリの由緒ある貴族のお邸ですよ。

カリフォルニアスタイルを持ち込まれちゃ困りますよ、ははは…」

アンナはまた陽気に笑った。


            


 10分後、ジェニファーは膝にジャガイモのアップリケがされた

たデニムを履いて、ブラシで長い廊下の床磨きをしていた。「ほら、

アップリケがなくちゃ、膝が擦り切れるでしょ?そうそう、これが

終われば、お風呂掃除と窓ふきとカーテンのメンテナンスを教える

わ、それから、お買い物に行ってもらいますからね。あなたのお部

屋にもお花がいるでしょ。チューリップがいいかしら、それとも、

バラかユリがいいかしら?ちゃんと毎日、水切りするのよ。わかっ

た?」アンヌはジェニファーの背中を軽くポンと叩いた。


            


 「ウイ、アンナ、だから、ポム・ド・テールの膝当てがいるん

ですね。よくわかりました」ジェニファーは力なく笑った



   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 あわれ、ジェニファーの運命やいかに?
期待や妄想は裏切られるためにあるのですよね。
ところで、今日で800回になりました。
なんと、15年と4か月も書いているのですね。
もう、いい加減にしたら?


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2022年2月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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