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リサコラム
連載805回
      本日のオードブル

マダム・シック

第11話

「ノンシャランな
マダムになる!」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




パリの
空のような
美しい天井に
淡いブルーの
壁紙とシルクの
グリーンの
カーテン
煌めく
クリスタルの
シャンデリアの下
ガラステーブル一つ
掛け椅子4脚が美しく
センス良く並んでいます。
ここはパリ16区、貴族の末裔の
お屋敷ですもの。



 


 第11話「ノンシャランなマダムになる!」



 ジェニファーがパリの16区のマダム・シックの邸宅にやって来て

ちょうど1か月目の朝が来た。つまり、今日でアンヌのハウスキー

ピングレッスンが最終日を迎える。それはジェニファーの側から見

ると、やっとアンヌの厳しいレッスンから解放され、貴族のお屋敷

に家政婦として捕らわれた悲劇のプリンセスから自由の身になるこ

とを意味していた。もちろん、今後もハウスキーピングがつつがな

く行われているかの厳しいチェックを入れるためにアンヌは週1回

やって来ることには変わりないが、明日からは実質、ジェニファー

がひとりでこの屋敷を守ることになる。


            


 
ジェニファーはこの華麗なルイ16世紀様式の貴族の屋敷をひとり

で留守番をするのかと思うと、晴れがましい気分と同時に重圧感、そ

して緊張感でいっぱいになり、今朝は夜明け前から目が覚めた。すぐ

に、パジャマの上にシンプルなワッフルジャガードのローブを羽織り

ルームサンダルを履き、バスルームに行った。もちろんパジャマにも

ローブにもそれなりにアイロンが当てられていた。


            


 
自分の部屋を出たらお屋敷内でも外と同じだからいつ来客があって

も恥ずかしくないように、それよりお客様に対して失礼にならないよ

うにローブを羽織る、それは、お客様がいらっしゃらなくても同じこ

とだなんて、1か月前のジェニファーには考えられなかった。しかし

彼女は3か月後、カリフォルニアの自宅に戻っても、その習慣を守れ

るかどうかと言うと、それはまだ自分でも自信はなかった。


            


 彼女の家族の誰一人、そんな習慣を知る者はいないし、それどころ

か、みんなまともなパジャマさえ持っていなかった。と言うのも、

家の中はおろか、TシャツかジャージにGパンかショートパンツで近

所のレストランに入っても誰も怪訝な顔をする人はいなかった。

当然、みな似たり寄ったりだった。そんなカリフォルニアガールの

ジェニファーもアンヌの厳しいハウスキーピング&マナーレッスン

を受けて2週間もすると、夜、一人でお屋敷にいるときも、16区

マダムらしきふるまいをすることに抵抗はなくなった。それどころ

か、誰にも見られない時でもきちんとした服装で、きちんとしたふ

るまいをすることに誇らしささえ感じるようになった。それに、一

歩外に出れば、パン屋さんでも市場でも、蚤の市でも「マダム」と

呼びかけられることが何より心地よかった。最初は気恥ずかしさも

あったが、適応能力の高いカリフォルニアガールゆえ、ほぼ数日で

慣れ、今ではあえてそう呼ばれるように仕向けることもあった。


            


 アンヌに会って間もない頃、ジェニファーは、「未婚でも、マド

モアゼルではなくて、マダムって呼ぶものかしら?」と聞いたこと

があった。アンヌは、「リセエンヌ(女子高校生)は、先生からマ

ダムと呼ばれるんだから当たり前でしょ?」と言った。


            


 “高校生ですでにマダムなのか!”とジェニファーは少し驚いたが、

しかし、高校生にもなれば、みんな自分の香りのオー・ド・パルフ

ァムくらい持つのは当たり前だと言うから、まあ、理解できなくも

ないと思った。それにフランスでは高校卒業と同時に基本的に家を

出て独立しなくてはならないから、そういう意味では、親離れも早

い。しかし、学校では掃除などは一切しないから、子供たちも18

歳での一人暮らしに向けて小さい頃からキッチンでお手伝いをする

のは当たり前のようだった。


            


 ジェニファーは最終日を問題なく終わらせようと心に誓いながら、

長い廊下の先にあるバスルームで念入りに顔洗うと、また長い廊下を

歩いて自分の部屋まで戻った。途中サロンを覗いてみようと思った。

トリミングが施されたクラシカルなデザインの春夏用のグリーンの

カーテンは眩いばかりでジェニファーはうっとりした。なんら、昨

日と変わるものはないが、明日からこのサロンの期間限定のマダム

になるかと思うと、ぐっと胸に迫るものがあった。


            


 「とうとう、堂々とあの椅子に腰かけて本を読めるのね!」そう思

うとほほにピンク色の熱を感じた。しかし、まだ、部屋の隅にコンソ

ールテーブル代わりになっているテレビが無事に映るのかどうか試し

ていなかった。見るから年代物のブラウン管のテレビが21世紀に

まだ存在していること自体、ジェニファーは不思議だったが、映った

としても、そんな小さな画面でテレビを見る気にもなれなかった。

ジェニファーの認識ではテレビとは、ソファに寝転んで、あるいはカ

ウチにあぐらをかいて壁一面を覆う巨大なスクリーンで見るのが、

正しいテレビの見方だと思ってきたから、無理もなかった。そんな

古式ゆかしいブラウン管テレビは文化博物館に展示されているよう

なものだと思っていたからだ。


            


 それから部屋に戻ると、ストライプのシャツに膝にじゃがいもの

つぎ当てのあるデニムを履き、鏡の前で髪の毛を無造作に掻き上げ

ると、ゴムで一つに結んだ。長いおくれ毛も自分では気に入ってい

た。なかなか、 Nonchalant(ノンシャラン)じゃない!我ながら

いい感じよ、ジェニファー!彼女は自画自賛した。


            


 実はパリに来てから、彼女はノンシャランのほんとうの意味を知

った。それまではノンシャランと言えば、そっけない、無関心な態度

に対して使っていたが、パリに来てから、それはもっと素敵な意味合

い、スタイルを意味していることがわかった。


            


 
街を行く女性たちは、ジェニファーが冬の定番としているダウジャ

ケットやダウンベストのようなナイロンのもこもこしているようなも

のは身につけていない。大半はウールか綿のコートを羽織り、少々肌

寒くても前を開けてキックスターターに乗って颯爽と通勤してゆく。

しかし、髪の毛もコテでくるっくるに巻き上げることもしていない。

化粧もほとんどしていないように見える。ノンシャランとは、あえて

無造作に見せるスタイルで、その実、計算し尽された高度なテクニッ

クのおしゃれだということに道行くパリジェンヌを観察していて気

づいたのだ。


            


 
もしかしたら、この人も、あの人もこんな邸宅に住んでいる人な

のかもしれない。そんなことを思い巡らせながら、パリのマダムた

ちを早朝のパン屋で、市場で、蚤の市で、舐めるように観察するのが

何より楽しかった。


            


 
そして、ちょっとおしゃれをして花束でも持って歩けば、

「すてきだね!」とすれ違いざまにイケメン男性に声を掛けられ

ることもあった。そんな風に気軽に人を褒めようというエスプリ

がたまらなくうれしかった。さらに、パン屋さんやパティスリー

などの入り口で、先に入った男性が次に来る女性のために、たとえ

その店に入るかどうかわからない場合でも辛抱強くドアを押さえて

待っている。そんなパリジャンのスマートなマナーも素敵に見えた。

こんなパリに住めるなら、ジェニファーはがんばって、パリ16区に

ふさわしいマダムを目指そうと誓ったのだった。


            


 
「まずは、ノンシャランなら私に合いそうだから、これからは

これで行こう!」ジェニファーはパリに来てひと月でやっと自分の

目指すスタイルもやっと決まった。


            


 午前7時、ドアベルがなった。ジェニファーはいそいそとアンヌ

を出迎えた。アンヌは、挨拶を交わした後で、いかにも不快そうな

顔をした。「ジェニファー、この1月で何を学んだんですか?髪の

毛はぼさぼさ、お化粧もなし、シャツの袖山にはアイロンがかかっ

ていない。エプロンはシミがついている。ノンシャランさえ程遠い

いわね!」




   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは2021年より毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1
 ノンシャラン、簡単ではなさそうですが、
私も実は目指しているスタイルなのです。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2022年3月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

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