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リサコラム
連載824回
      本日のオードブル

花を持って歩く7人

第4話

「草上の昼食」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ブルーグリーンの丸いシートの
上で、ピクニック?
花かごの中身は
バラの花の
ようですが
ワイン手に
女子会
いえ
実は
もっと
アートだったりして。



 



第4話
「草上の昼食」




 「不可解なるは女性なり」私は目の前に展開されている光景を見て

頭に浮かんだ言葉がそれだった。


            


 
使い古された言葉だとはわかっている。そう言ったところで、

「だからなに?」と、彼女らは言うかもしれない。しかし、ここは

公園ではない。車は進入禁止だとしても、公道だし、しかも私の職場

の、そう、小さくても旅行代理店の店先なんだから。しかし、逆に、

「お客さん、来ないんだからいいんじゃないの?」とでもいいたげな

表情をした彼女らの様子に私のほうが店の奥の方に後ずさりしてしま

った。そうして私は店の前の通路でピクニックをしている二人のOL

に気づかれないようにそれとなく様子を伺った。


            


 
ふたりともまずまずの美人だ。左のほっそりした方はことに私の好

みのタイプだ。私はまずそう思った。


            


 着ているのはきっと制服だろうが、ターコイズブルーのベストとス

カート、それにテーラーカラーの白いシャツブラウス。パンプスを脱

いで、ブルーグリーンの丸いピクニックシートを道路の上に敷き、そ

の上にラベンダーピンクの座布団を敷いて腰を下ろしている。二人の

間にあるものは、何だろうか?私は全くもって理解にできなかった。

中心にエメラルドブルーのクリスマスツリーのようなものが2つ。

それはきらきらと光を放ち、その周りにはバラなのか、ピンク、オレ

ンジ、ブルーの花々がかごの中にたくさん散りばめられている。

そしてなんとその花かごには白いプラスチックのフォークが突き刺

してある。


           


 「えっ?食べれる花か?」私は驚いて、また色とりどりの花かごを

見た。もしかしたら、今、流行りのあれ、そう、エディーブル・フラ

ワーってやつかな?二人はワイングラスを手に持ち、ほほはピンク色

に染まっている。


            


 「不可解なるは女性なり」私はそう繰り返さざるを得なかった。

それにしても、すべてが奇妙だ。まずは制服で昼間からワインを飲む

なんて、フランス、イタリア、スペインなら考えられるが、日本

じゃ、なかなかないぞ!それに、通路にピクニックシートを敷いて、

昼食会なんてこれは何かの暗示だろうか?私は持てる知識の扉のひ

とつひとつを開けて中を覗きこんだ。2,3分後、その一つの扉が開

いた。


           


 
オルセーにあるマネの絵だ!そう、エドゥアール・マネの

『草上の昼食』だ!きちんとした身なりの二人の男性と裸婦が芝生の

上でピクニックをしているという、ありえない構図。2段腹で、今の

感覚では美しいとは言い難い女性の体とその裸体を見つめる観察者を

あざ笑うような目。パリに初めて行って、オルセーの『草上の昼食』

の前に立った時、私はまさにその裸婦の視線の先にいた。もちろん、

私だけでなくこの絵を見るものはどうしたって、裸婦に視線を合わせ

てしまう。非現実的だがリアリティを持って見返す鋭い視線。

その時、私はほとんど身動きできずに絵の前で1時間もじっとして

いた。


            


 奇妙なその絵は1860年代当時、大ブーイングを巻き起こした

が、それが故にもう一つのお騒がせ名画、オランピアと共にマネの

代表作になった。


            


 もしや、彼女らは、そのマネの『草上の昼食』の21世紀晩をやっ

ているつもりなのか?お互いに写真を撮り合ってSNSに投稿するつも

りだな?それなら、『草上の昼食』に対する冒涜だ。そう思った

瞬間、私はぞっとした。それは二人の行動の気味の悪さからではな

く、非常識極まりない行動に対する、彼女らより遥かに年長者の上

から目線の蔑みでもない。いわば、コロナ禍で劇的に変わりつつある

遊びの形の変化とそれについて行っていない私の感性に気づいてぞっ

としたのだ。


            


 
「きっとあの花屋の仕業だな!」しかし、流行っているからと言っ

て、そんな奇妙なイベントをよその店の真ん前でやっていいものか?

それから私はデスクについて、パソコンで改めて『草上の昼食』を見

た。そして大きく深呼吸をした。


            


 あの花屋が流行っているのは、なにか理由があるのかもしれない。

花を飾るでもなく、もらうものでもない人たちに新たらしいアプロー

チで花に親しんでもらうように企んでいるのかもしれない。そうだと

したら、私も黙って指をくわえて見ているだけでいいのだろうか?


            


 
二人の美女による『草上の昼食』を私は店の中からそっと眺め続

けていた
.





   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

 マネの『草上の昼食』、もしも、女性がちゃんと服を
着ていたら、名画と呼ばれたでしょうか?


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2022年8月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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