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リサコラム
連載854回
      本日のオードブル

カフェにて

第6回

「最後の誕生日会」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




マス
ク柄の
ピンクの
テーブルクロス
中心にバラの花瓶
デザートとコーヒーを
楽しんでいる5人の様子
これは女子会か?いやはや
女性のような、男性のような
賑やかなパーティーのようです。



 



第6回
「最後の誕生日会」

 

  「あら~、こんなところで会うなんて…おひとり?」


 「ええ、もちろん、そちらは?」

 「私も実は1人」


 「それじゃ、ぜひ、アフター8のコーヒーブレイク、ご一緒させて

くださいませ!」


            


 「もちろん、喜んで。あったかくなったから、私、休日はカフェ

めぐりよ、あなたは?


 「そうね、私の方はいろいろと忙しくて、最近は全然かな…半年ぶ

りくらいだと思う」


            


 「そうぉ、忙しいのね」


 「まあね、それに、いろいろ考えることがあって…ずっと独身でき

たけど、次の人生を考えたときにもっと別な生き方はないかななぁん

てことも。そんな年齢だから。実を言えば、私、こんなカフェやりた

いな~って、ずっと思っていたのよ。ほら、お菓子作りが私、趣味で

しょ。それで、同じく独身&バツイチOL仲間と一緒にやれないかな

ぁなんて、ラインしてたら、なんとみんなそこそこ同じようなことを

考えててね。それで話が進んで行って、だんだんと少子化問題になっ

たわけ」


            


 「はぁ~い、少子化問題ね~」


 「昨年1年間に生まれた子供が80万人を切ったらしいね。

つまり、労働生産年齢人口がどんどん減っていくってことでし

ょ。10年後には大学もだぶついてくるし、年金問題はさらに

深刻になるでしょ。年間200万人も人口が減ってる計算になる

そうよ」


 「へ~、そうなの、詳しいね。200万人、ってことは、政令指定

都市のどれかが毎年、ひとつずつ、なくなっていってるってことじゃ

ない?」


            


 「まさに、おっしゃる通り。深刻だってわかるよね。だから、私み

たいな独身OLは肩身も狭いし、世間に対して、まあ、申し訳ござい

ません、みたいな顔をしてなくちゃならないでしょ」


 「それは違うでしょ!人それぞれ、ライフスタイルや、仕事に対す

る考え方はいろいろだから…」


            


 「そうよ、それは私たち、女性が一番わかっているんだけど、じゃ

あ、独身の中年OLに何ができるかって言ったら、子育て中の女性た

ちのためのリーズナブルなカフェを運営して、そのカフェは託児所付

きで、働いている子育て中の女性のための癒しの場所“マザー&ベビー

カフェ”って、どうかなぁなんて思ったわけです。子育て中の女性を応

援していこう!っていう、スローガンを掲げてね」


            


 「ほう、すごいじゃない!」


 「そう、私にできるのは趣味のお菓子作りだから、私はそこでカフ

ェに出すお菓子を提供するとか、そんな話を今年の私の誕生日会でし

ようと思って。実は、ずっと悪友4人を呼んでフルコースのランチで

私の誕生日をやっているんだけど、今年はそんな崇高なテーマを掲げ

たのよ」



 「すごいじゃない。あなたの友人はそんなプラス思考の


アクティブな人多そうだもん」


 「それでも、年を追うごとに、話は多岐にわたって、尽きないわ

けよ~、ランチを通り過ぎて、最後はワイン会になっちゃって」


           


 「へ~楽しそう、私も参加したかったな~」


 「まあ、中年女性が4人集まると、まずは男性の悪口でしょ。

男は子供同然ってことから、男性十人がいたら、喧嘩になるけど、

女性なら仲よくできるとか、経済は女性が握っているとか、だから

女性なしではこの世は成り立たないとか。でも、4人の中のひとり

が、今は、男女の区別だけではないらしい、実は、男性と女性の間

には虹のようなグラデーション性があるんだって言い出したのよ。

今、話題になっているLGBTの話ね。それがつまりは個性とか人格

を形成しているってことになったんだろうけど、そこで、私、なに

げにみんなのケーキの皿を観察して、気づいたことがあるの」


            


 「ほう、それで?」


 「実を言うと、オードブルからメインディッシュまでは今年は、

ケータリングサービスで取ったのよ。だって、大変だもの!でも、

ケーキだけは私が精魂込めて作ったのよ。スポンジケーキの中にマ

ロンクリーム、あずきあんを挟んでおわん型にして、それをホワイ

トチョコでコーティングして冷やし固めて、特製の硬めのカスター

ドを敷いた上に置いて、最後に茶色のチョコレートでハートを描い

たオリジナルなのよ」


            


 「わ~、すっごい。おいしそうね~」


 「ありがとう。でね、ケーキの食べ方が4人、みんな違うのよ。

私は、まぁ、あっちこっちから虫食いみたいな食べ方ね。でも、

一人はハートの部分だけをきれいに残して、回りから食べていたの

よ。それ、至難の業だと思うけど。また、別の彼女はケーキを全部

食べてから、回りのカスタードは最後にスプーンですくって食べた

の。3人目はハートだけきれいに食べてから、次に回りを食べ、

最後のひとりはブロークンハート式。失恋の経験があるのかどうい

かわからないけど、きれいにハートの中心から半分だけ食べて、

悦に入っているのよ。つまり、食べ方がみんなバラバラってこと。

それを見ていたら、新しい事業を立ち上げて、はたしてうまくいく

のかなあ?って、私、発言したの」


           


 「なるほどね~」


 「つまり、5人がそれぞれの趣味、嗜好、考え方を持っているって

ことでしょう。もちろん習慣だって全然違うだろうし、みんな部下を

抱えている独身の中年女性だから、それぞれにポリシーがあるわけで

すよ。その5人を 1つのチームとしてまとめるには個性強すぎない?

って。男性と女性の区別が曖昧だとすれば、私たち5人はきっと男性

よりかもしれないし、すると男性を非難しているのは、深層心理で自

分たちの中の男性部分に気づいているからかもしないって、そこまで

の話になったのよ」


            

 「ふ~ん、それで、5人でカフェをやるって言う話はおじゃんに

なったの?」


 「実は、運用面の話になるとね、みんな素人っていうか、抜けてる

のよね。たとえば、5人で資金を出し合って子育て中の女性たちを支

えるために、託児所付きカフェを開店します。しかし、育児をやった

ことのない女性たちが、結局は子供の面倒を見る事になるんじゃない

かって、そうすると、経験ゼロの私たちじゃ全く役立たずになるわけ

よ。じゃあ、子育て中の女性が他の子供を交代でみることにしたらど

うかな?ってなると、保育園の存在は自分の子供の面倒からしばし解

放されたい女性、男性のためにもあるから、それも違うっていう意見

もあり、仕事をすることで、子供の世話から解放されるその解放感を

味わいたいって人はまず集まらないかもって。女性がどんどん働くよ

うになっているんだから、おしゃれなカフェに来れるのは誰?ってこ

とになると、子育て中の働き盛りの女性たちではなくて、ティーンネ

イジャーか、高齢者ってことでしょ、それじゃ、ちょっと趣旨と違う

ってことになり…話は堂々巡り。ついには、人類滅亡は文明を発明し

た人類の避けられない宿命で、未来にはそんな運命にしかないってこ

とで、結局、私の誕生日会は終わったのです」


            


 「ええええ…そうなの?あの崇高なスローガンは?マザー&ベビ

ーカフェは?」



 「結末は、私の誕生日会は今年で最後にしますってことになり

ました」


            


 「それが結末?」


 「この個性派5人では、うまく行かないってことを確認するため

に、最後の誕生日会を開いたってこと。これでやっと面倒な自分の

誕生日会から解放されるわ。




   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

 お誕生日会、止めるの大変です。
もちろん、誕生日プレゼント交換も。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年3月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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