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リサコラム
連載875回
      本日のオードブル

『夢、描きます。』

第4回

「復讐の儀式」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





段を
下り降
りると
たわわに
実った黄色い実
レモンでしょうか?
緑濃い庭を写す水面は
エメラルドグリーンに輝いています。

 



第4回 「復讐の儀式」



 真っ白な湯気が立ち込めるシャワーブースの中、うつむいたまま、

かれこれ10分間もじっとしている女性。滝にでも打たれているかの

ような異様な雰囲気は彼女のロングヘアの髪の毛から急流のようにど

ぼどぼと音をたてて流れ落ちる水音からわかる。その水は排水口に吸

い込み切れず、足首が浸かるくらいの水たまりを作っている。


            


 女性は相変わらず下を向いたままで壁に両手を伸ばすと、張り付く

ように固定されているポンプ式のボトルから液体を手に取り、手の中

で泡立てた。途端にレモンのような清涼な香りが泡とともに、ブース

の中に広がった。


            


 女性はそこでやっとハンドルを回して水を止めた。そして、その

泡を頭に乗せ、次にまた泡を立てると全身を包み込んだ。そのまま、

白い泡が足元を覆いつくし、体の前に垂れた髪の毛の先から小さ

な滝が流れ落ちるに任せた。


            


 水の中で、「やっとね。やっとよ。やっと終わったわ」と女性は

つぶやいた。そして床に届くほどの長い髪の毛を両手で挟みながら

水滴を絞り取ると、そのまま一気に勢いをつけて、うつむいた頭を

後ろに向けた。その途端、長い髪の毛の束は270度回転してばさ

っと背中側に落ちた。そして滴り落ちるしずくをそのままにガラス

扉のフックにかかっている巨大なタオルを頭からすっぽりかぶると

、シャワーブースのガラスドアを押した。そして外の壁にかかって

いる白いバスローブを羽織るとバスルームの外に出た。


            


 冷たい冷気が一気に彼女におそいかかってきた。「ああ~、いい、

き、も、ち、これで、全部、何もかも終わったのよ。あとは…」そう

言うとデスクの椅子に腰かけて、電話の受話器を取り、ボタンを押し

た。「コンシエルジュデスクでございます」と澄んだ女性の声が聞こ

えてきた。「あの、準備ができました」それだけ言うと、相手は

「かしこまりました。それではすぐに伺わせます」と言った。


            


 女性は電話を切った後、デスクの引き出しから1枚のフォトフレ

ームを取り出し、デスクの上に置いた。そしてそのフレームの中の

絵と対峙するかのように、「わたしって、極端て言われるんだけ

ど、でも、女性にとってはこれも大事なことなのよ」そう独り言を

言いながら、絵を見つめ続けていた。


            


 「キンコーン」ドアの外で音が鳴り、続けてノックする音が聞こ

えた。彼女は立ち上がると来訪者のスタッフを向かい入れた。中年

の女性スタッフは、「それでは、早速、」と言って、絨毯の上に約

2m真四角の白いシートを敷くと、その中心に椅子を置いた。

「さあ、どうぞ!」スタッフは女性に手招きをした。女性はデスク

のフレームを手に取ると言われるままに座った。


           


 「あら、素敵なお家ですね」スタッフは女性の手の中にある写真

に目をやった。「ここ、どこですか?」「まあ、自宅、とでも言

えますかしら?」女性ははにかむように笑った。「わ~すごい、

こんなプール付きの家にお住まいなんですか?」スタッフは食い

入るようにその絵を見た。「素敵ですね~、こんな家、私も住ん

でみたいものですよ」そう言いつつ、腰からきらっと光るものを

出した。


            


 「それではよろしいでしょうか?」スタッフはそう言い、

「ええ、もちろん」と女性は答えた。「それでは行きますよ」

それを合図に女性は目をつぶった。


 15分後、女性の足元は彼女の黒い髪の毛で覆われていた。

スタッフは目を開けた女性に手鏡を渡した。お尻の下まであった

長い髪の毛は耳の下ぎりぎりでカットされていた。「結構です。

ありがとう。これで、この絵との執着もなくなりました」と女性

は言った。「絵との執着?」「ええ。この絵は、『実現不可能』

というタイトルをつけて、ある敵対する方からもらったんですが、

かれこれ25年も前にね。私も執念深いもので、以来、それが私の

『復讐の家』になったのです。こんな家に住みたいってね、大理石

の石段とプールのある家です。そして25年経って、こんな家がや

っと手に入りました。この異国の地で」「なるほど、だから今日か

ら生まれ変わりたいと言うことで、髪の毛も切られたのですね」

「ええ、ずっと伸ばし続けてきたんですけどね。今日でこの絵とも

髪の毛ともすっぱり執着が切れます」「でも、わざわざ、ホテルで

髪を切られたのはどうしてです?」「私、子供の頃から何でも極端

て言われてきたんです。でもね、○○式ってつくものに参加する前

には、清浄な場所で自分を洗い清めてって、そんな意識があるもの

ですから。だから、新しいホテルの部屋がよかったんです。でも、

すっきりしました。これまでの人生のドロドロやごちゃごちゃも髪

の毛と共に切り落とされたんですから」「そうですか、それなら、

はおまけにこの絵も切ってさしあげましょうか?」スタッフは女性

の絵を額縁から出すと、さくさくと千切りにした。


            


 「ありがとう。これで何もかも終わりです。今から別の人間とし

て生きてゆきます」おかっぱ頭の女性はパッションフルーツのよう

にみずみずしい笑みを浮かべた。



   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *2023年4月よりリサコラムは毎週金曜日に連載いたします。

p.s.1

 実現不可能なら可能にして見せようという意欲が
人間の作った文明をこれまで作り上げて来たものですね。
時々、壊しながら。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年8月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

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