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リサコラム
連載876回
      本日のオードブル

『夢、描きます。』

第5回

「扉の向こう」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




敷石を
とんとんと
あれ?ここは
どこから入るのかな?
窓は開かないみたいだし
でも、部屋の中にはドアもない、
まさか、天井からスパイダーマン
みたいに
するすると
糸を垂らして
入るのかな?
そんな部屋ってあり?



 



第5回 「扉の向こう」



 「『本日は晴れ。

 
窓から差し込む光は柔らか


            


 私専用の書斎で、変わった形のグリーンのソファベッドに体をゆだ

ねる…頭の下には白とブルーの大きな枕が2つ。ああ、まるでさや

えんどうの中の豆になったみたい…今日は真っ白いお気に入りの

シャツにデニムを履いて、おなかの上にはレモン色の小さな

クッション。その上にこんな本を置いて読んでいます。なあんと、

『堕落のすすめ』。今日1日、家族のためにがんばったご褒美です

もの…』


            


 先生、これは、今日、インスタグラムに投稿した写真に添えた

コメントです。写真というのは先生に描いていただきました絵な

んですけど…でも、すごい反響なんですよ。コメントがどんどん

きちゃって、もう、びっくりです。


            


 その絵は自宅の3畳ほどの家事室の壁に掛けています。そんなと

ころに?と思われるでしょう。どうしてリビングとか玄関とかじゃ

ないのか?と。でも、私は最初からこの家事室の壁に掛けるために

この絵をお願いしたのです。この部屋で、毎日、家族全員の分の

洗濯物を洗って、干して、たたんで、また、干して、たたんで…

シャツや制服にはアイロンをかけて、これを繰り返しています。

それが終わるのが夕方4時半頃です。そうしてやっと椅子に座っ

て、晩ごはんの支度を始めなければならない午後5時頃まで壁に

掛けた絵の中に入り込むのです。それはもう、夢のような永遠の

30分間です。


            


 先生、この気分、おわかりになられますか? 3人の子供たちと

格闘しながら、日々を送る専業主婦の私に、365日、1日の休

みもありません。それをもう19年も続けてきたのです。この19

年間、外に働きに出たいと、何度、思ったことかしれません。いや、

思わなかった日は1日たりともありません。友人はみな保育園に預

けて仕事をしていたのですから。私は友人たちがうらやましかった

のです。しかし、主人は外で働くことに賛成しませんでした。主人

は母親が常に家にいて家事や育児に専念するという家庭で育ってき

たからです。今は、専業主夫だっているのに、なんという時代錯誤

かと、常々、腹立たしく思ってはきましたが、それも慌ただしさの

内に過ぎて行ってしまったのです。


            


 そして、3人の子供たちはなんとか無事に、来年、大学生、高校

生、中学生になります。このことを喜ぶべきなのか、それとも私の

これまでの人生の無念さを悲しむべきなのか、私だって、人として

学びたいこともたくさんあったのです。


            


 この19年間、家族のためにずっとがんばりながら、家出してみた

らどうだろうか?そうすれば、母親のありがたみがわかるというもの

だとか、衝動的に、黙ってひとり旅に出てみようとか、そんなことを

思ったことは数しれずありました。そして、今日、先生に描いていた

だいた絵をSNSに投稿したら「なんて、うらやましい」とか、「私も

家族から解放されて、そんな生活したい~」なんていう切実な声がた

くさん聞こえて来て、…ああ、私だけではないのだと思いました。

当然ですね。しかし、真っ最中は自分だけが損して、苦労している

ようで、周りが見えなくなってしまっていたのだと思います。きっ

と、社会に出ていても同じような、いや、違う意味でもっと大変な

場面を味わっていたでしょうから。いろんなことを改めて考えさせ

られました。


            


 そして、なんとなくわかってきたことが、自分だけが辛い思いを

していると思っていること自体が、自分の人生を楽しんでいないとい

うことです。


            


 高い天井から俯瞰したこの絵の部屋は本当に私の夢そのもので

す。天井から切れた2面のガラス窓からは、敷石を置いた庭と外

の光を運んでくる木々の緑が見えます。ここは実は地下なんです

ね。そして他の2面はすべて書棚です。日本文学、外国文学、数学、

物理、歴史、法律、AIの本もあります。全部、私が子育てをしながら

ちょこちょこ集めてきた本です。しかし、そのほとんどが積読で読ん

でいない本ばかりです。これらの本をゆっくり読める時間がほしいと

心から願い続けてきました。そして、思い切って、先生に私の夢の絵

をお願いしたのです。そして、絵の反響の大きさに驚いて、先生に

ぜひ、ご報告をと思った次第です。


            


 コメントの中にはひとつ、こんな質問がありました。それは、

『開かない窓と書棚だけの部屋にどうやって入るんでしょうか?』

と。鋭い質問ですよね。そう、私もこの部屋にはドアらしきものは

見当たらないことに気づきました。そして、しばらくして、わかっ

たんです。この書棚のどこかがダミーで隠し扉になっているのだと。

貴族のお屋敷にあるような、あの隠し扉です。そうわかった時、さら

に楽しくなりました。隠し扉の向こうはいつもの生活。でも、隠し扉

を開けて中に入ったら誰も知らない私だけの空間。誰にも邪魔されず、

気兼ねなく寝っ転がって好きな本が読める。本を読まなくてもぼうっ

としてコーヒーを飲みながら自分だけの時間を過ごすことができる。

そうなんです。それが最もやりたかったことなのです。私にこれまで

できなかった自分だけの時間なのです。


            


 隠し扉は現実にはないものですが、私の空想の中ではその扉から絵

の中に入り込めるのです。一旦、絵の中に入り込むと、ちょっと変わ

ったさやえんどう型ソファベッドの中で私はその豆になれます。胸の

上に本を置いて、窓からの光を受けながら、もう何も聞こえない。

誰からも何も言われず、自分だけの悦楽の世界に浸れるのです。

そんな技を、先生、この絵を毎日、毎日、じっと見ていたら習得し

たのです。


            


 今は、この夢の部屋の実現は無理です。でも、目標ができました。

目標という言葉のなかった私の人生に目指すゴールができました。


            


 先生、絵の中に込められた自由な魂への扉を開けて、きっと実現

してみせます。次は実現したご報告をいたしますから、それまで、

どうか、お元気で、ごきげんよう。」



   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *2023年4月よりリサコラムは毎週金曜日に連載いたします。

p.s.1

 さやえんどうの中でどんな本を読みたいですか?


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年8月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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