前略

私の夢のお部屋を描いていただけますでしょうか。と申しましても、

イメージなどといったものはまるでないのです。だからどのようにお

伝えしたらいいのかずっと考えていたら、このメールを書き始めてか

らもう、2時間も経ってしまいました。


　　　　　　　　　　　　


　噂によれば、先生は非常に想像力のある方とお聞きします。これは

SNSで読んだことなんですが…依頼人の気持ちを推し量ってそれを

的確に表現してもらえるとか、いや、人によっては、まるで先生が

その人の頭の中をのぞき見しているのではないかというくらいに

自分ではカタチにできないものを３Ｄで表現してくださるのだと

言っている人もいます。もちろん絵ですから２次元には他ならな

いのですが。だから私も期待を込めて、いいえ、プレッシャーを

かけるつもりはありません。そうではなく、私の言葉足らずの思

いから想像してくださって自由に描いて下さいという無理なお願

いなのです。


　　　　　　　　　　　　


　もう一度はっきり申し上げます。私の夢は特にないのです。

それじゃ、いくら何でも描けないとお思いでしょう。でも、自分

の夢がわからないので夢の絵をお願いしているのです。矛盾して

いるのはわかっています。


　　　　　　　　　　　　


　でも、思うに世の中の人たちの多くは私と似たり寄ったりじゃない

かなと思っています。もしも、街頭インタビューなんかで突然マイ

クを向けられて「あなたの夢はなんですか？」とか「あなたの夢の

家はどんな家ですか？」と聞かれた時、即座に自分の真実の気持ち

を的確な言葉で答えられる方ってそういないんじゃないかと思うか

らです。だって人の夢は単数ではないからです。いくらでも夢を叶

えてあげますから好きなだけ言って下さい、と言われたら、いくら

でも夢は思いつくはずです。それは夢ではなくて、欲望だと言われ

るかもしれません。だけど、私がそんな質問をされた時、もし、精

神的にも肉体的にも、ものすごく疲れていて、自分の散らかった家

に帰りたくないと思えば、「ノリの効いた真っ白いシーツのシンプ

ルなホテルの部屋みたいな部屋が夢です」と答えるかもしれません。

でも、実際にそんなお部屋で１週間も過ごしたら、ちょっと飽き

て、次はゴージャスなホテルにも泊まってみたいかな～なんて思う

だろうと自分でも想像がつくんです。ということは、夢の家とか理

想のインテリアみたいなものはその時の体調とか精神状態によって

変わるとも言えると思います。


　　　　　　　　　　　　


　私は普段は、シンプルモダンが好みですとか私も言ってはいます

けど、まあ、私の今の家も部屋もそんなそっけない雰囲気の部屋な

ので、でも、もし、そんなシンプルモダンな家とベルサイユ宮殿み

たいなデコラティブな別荘があってその一つにただで１週間泊まれ

るとしたら、あれ？私、もしかして、デコラティブ過剰気味のイン

テリアも好きかも…、それじゃ、ベルサイユ宮殿風にしてみようか

な？なんて思っちゃいます。


　　　　　　　　　　　


　人間なんて不思議ですよね。日頃、シンプルモダンなインテリ

アが好みです。と言っている私は、単に自分の懐具合を勘案して

の好みなのかもと理解せざるを得ません。その証拠に、私のような

庶民とは一線を画す王様とか貴族とか大名とかが住んでいた宮殿と

か、お屋敷とは、そのほとんどデコラティブな装飾で彩られていま

す。何の装飾のない無地でのっぺりした私の今の家のようなところ

に王様が住んでいたなんてことはないですから。そこで、もしもお

金のことを全く考えなくていい立場や状況にいたら、私もきっとシ

ンプルでモダンではない家の作りにするだろうと気づいたのです。

それが王様とか女王様の共通の意識というか精神構造ではないかと

思います。


　　　　　　　　　　　　


　そんなことを考えていたら私自分の夢は何なのか、自分はいった

い何が好きで、何が嫌いで、そして私という人間はいったい何なの

か、それすらわからなくなってしまったのです。人類がお金という

価値観を表す数字を発明して以来、人は生まれてから死ぬまで、

お金という数字に束縛される唯一の動物になったのだと思います。

お金という数字のせいで、理想と夢と欲望の区別がつかなくなって

いるのですから。


　　　　　　　　　　　　


　今、世の中はスマホ決済で買い物をするのが普通になりました。

スマホで扱うのはデジタルのお金の顔をした数字です。こうして、

この世の中からお札がなくなる日も近いでしょう。その日を待たず

に現金とその現金を表す数字は乖離しつつあります。


　　　　　　　　　　　　


　ある数学者に「数字って何ですか？」と、聞いたら、「それは

人類にとっては永遠のテーマだ」と答えました。すると、お金を

表す数字の羅列は宇宙に描いた幻想のようなものでしょうか？

すると人々は宇宙に描かれた幻想という訳のわからないものに

全生涯をささげているのかもと、そんな気持ちにもなったので

す。


　　　　　　　　　　　　


　先生、こんなわけのわからないメールをここまで読んでくだ

さってほんとうにありがとうございます。こんな私のために、

先生の好きな部屋を描いてください。それだけが確実な今の

『私の夢』なのです

　　　



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.１

ブルー、グレー、ベージュ、

そしてホワイト、２０２３年９月１５日の

私の夢の部屋


p.s. 2　　インスタグラム、私の日常です。

　　
「もの、こと、ほん」は下の写真から、２０２３年９月号です。


　　　　　　　　　　　


p.s.3
　　　　E-Book「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」

　　　　の英語版です。

　　　　写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


　　　　　　　　　　　


　　　　タイトルは、"Bedroom, My Resort”

　　　　Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

　　 　Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms

　　　　趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

　　　　チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

　　　　E-bookにしていただいたものです。
　
p.s.３
　　　　下は日本語版です。

　　　　E-Book「Bedroom, My Resort　 リゾコのベッドルームガイド」

　　　どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。