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リサコラム
連載883回
      本日のオードブル

『夢、描きます。』

第12回

「ある美容師の家」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



銀杏の
巨木が
吹き抜けの
2階の窓の上に
丸テーブル3台に
シースルーのチャア
ピンクベージュの
シフォンレースの
テーブルクロスが
ロマンチック
2階の図書室
からさらに
すてきな紅葉を
眺められるでしょう。



 



第12回 「ある美容師の夢」



 先生、はじめまして。私は美容師をしております。いろんな美容室

を渡り歩いて25年、やっと独立して自分のお店を持つことができ、

かれこれ20年になります。トータル、学校を出てから45年も美容

師をやってまいりました。そして、このたび、私のお店を継続してく

れる優秀な人材を得ましたため、第一線から完全に退くことを決めま

した。


            


 以前から先生のお噂は複数の方から聞いておりましたので、引退し

た暁には、ぜひ、私の夢の家を描いていただこうと思っておりまし

た。幸い、子供たちはみんなそれぞれ家庭を持ち、夫は単身赴任中

ですので、私には家の間取りを考える自由があります。早急に家を

建てるというわけではありませんが、小さな別荘のような家を近い

うちに建てられたらと思っております。


            


 しかし、これまで美容師の道一筋、わき目も振らず、突っ走って

きたものですからはさみ以外のものを持ったこともなく、絵心もな

いため、自分ではどんな家にしたいのか描けません。そこで、これ

までの私の人生を語りながら、先生に私の夢の家を描いていただけ

たらと、たいへん都合のいいことを考えているのです。


            


 引退しますと言ったら、辞めないでくれと懇願されたお客様もお

いで、後ろ髪を引かれる思いを振り切っての決意だったのですが、

これまでの人生を振り返った時、私には他に何の趣味もないことに

気づきました。これからの第2の人生をどう暮したいのかわからな

いのです。先生はたくさんの方の夢の絵を描いてこられているの

で、おそらくいろんな人生をご存知でしょう。私のような人は結構

はいるものなのでしょうか?


            


 希望は都会ではなく、田舎がいいです。そして、山がいいです。

ただ漠然としたイメージとしては、広い吹き抜けのリビングのよう

なヘアサロンのような空間と寝室が欲しいです。そこで今まで読め

なかった本を読むことです。


            


 ご存知のように美容師の仕事はかなりハードです。まともに昼ご

はんを食べた事はありません。それがもう当たり前になっているの

で、特に過酷だとか辛いとか思うことはありませんが、これからの

美容業界は昼休みの確保が必須だと思います。それで体を壊した仲

間もたくさんいます。貧血で倒れたり熱中症で倒れたり、あるいは

かえって暴飲暴食をしてしまうので糖尿病になった人もいました。

ただ私は幸いなことに病気もせずいられましたが、中にはやはり精

神的に参った人もいます。


            


 美容師が精神的に参ってしまうって言ったらなんでと思われるで

しょうか?髪切るのになんで精神的に参っちゃうの?って。でも、

その業界にいないとわからないことって結構あると思います。私た

ちの仕事はシャンプーをする、髪を切る、パーマをかけるなどなど

の他に重要な仕事があるのです。それはお客様とお話をすることな

のです。お話しをしながらお客様を癒すということなのです。純粋

に髪の毛を切りに来ている方ばかりではありません。半分以上の方

は癒しが目的に入っていると思います。人に頭を洗ってもらい、マ

ッサージをしてもらう、髪を整えてもらうことで癒されるのです。

みんなそれぞれ、疲れているから簡単に美容室で癒されたいのだと

思います。裕福な方もそうでない方も椅子に座れば対等ですから。

「あぁ私、大事にされている」という感覚が癒しなのだと思いま

す。その時にどんな話をしたらいいのか、その方の雰囲気を察知し

て、あるいは髪の毛の手入れ具合などを判断しながらお話ししてい

くのですが、テクニックと言うよりも慣れだと思います。


            


 大体の場合は私たちがお客様に話しを合わせることになるので、

会話はスムーズに心地よく進みます。ただ、私だけではなく、美容

師はみなそうだと思いますが、家に帰った時にすごい疲労感を感じ

るのです。これはおそらく美容師でないとわからないと思います。

お客様とのお話しは勉強になることもたくさんあるのですが、お客

様の髪の毛を扱いながら、コミュニケーションをとるのは未だに大

変に感じることもあります。美容師ははさみを持ったら真剣勝負な

のですが、お客様にとっては、癒しの時間なので、双方のスタンス

と言いますか、心持ちがまるで正反対なのです。それを長年やって

きたら知らず知らずのうちに精神的に疲弊してくるのです。きっと

健康でない方を診るお医者さんも同じような状況ではないかと私は

思います。つい、愚痴のようなことになってしまっていますが、カ

ルテに書き留めることも、カルテを見ながらの施術もできませんか

ら、一所懸命覚えて、次いらしたときに、「この前は、ああでした

ね、こうでしたね」と思い出しながら話を続けることになるので

す。現実に1日、30人もお相手をしていたら、それぞれの方のお

話しや体調のことを全部覚えてはいないのです。


            


 私は最近、年齢のせいか、覚えることがなかなかできなくなって

きて、それが苦痛になってきたのです。私がこの仕事をやめようと

思ったきっかけはそこなのです。お客様ひとりひとりに対してホス

ピタリティを持って接しながら、髪の毛を切りすぎないようにと神

経をすり減らして仕事をすることに限界を感じてきているのです。

ですから、今度は私自身が癒されたいと思っています。


            


 10年ほど前、友人の、友人の別荘にお邪魔したことがあるので

す。小川のせせらぎが近くで聞こえる素敵な山荘でした。庭には大

きな銀杏の木があり、ちょうど落葉の季節で、吹き抜けのリビング

の大きな窓から、映画のワンシーンのように、黄色い銀杏の葉がは

らはらと風に乗って飛び散り、庭に黄色い絨毯を作ってゆく様子を

テーブルでお茶をいただきながら眺めました。特に何をしゃべった

か記憶はありませんが、なんて幸せな時間だっただろうって思い返

す度に思います。あの家にもう一度行けたらいいなぁと何度思った

ことかしれません。


            


 それ以外には、吹き抜けの2階部分に本棚がありました。私は

1階のリビングから眺め上げただけなのですが、ガラスで仕切られ

た壁の向こうはたくさんの本が並んでいました。きっとその奥には

座り心地のいい椅子があって本が読めるのかなあと思いました。

先生、素敵な感じ、伝わるでしょうか?あんなすばらしい家を建て

られるとは思いませんが、先生に夢の家を描いていただけたら、

自力でメンテナンスをやれるくらいの小さな家を建てて、新たな

趣味も見つけられそうな気がします。本当はこの話を先生に直に

聞いて欲しかったのですが、すると、この紙に書いていること以

上のことをペラペラと喋るはずですから、おそらく先生はお疲れ

になるでしょう。今日、私の気持ちを先生に打ち明けることがで

きましたから、すっきりしました。


            


 実は、引退したらもう誰ともしゃべりたくないと思っていたの

ですが、きっと先生の絵ができて、自分の別荘ができたら、やっ

ぱり自慢したくなって、友人、知人、家族みんなを呼びたくなる

と思います。ですから、グループで座れるようにテーブルを3つ

お願いいたします。そして、最後にひとつお願いがあります。ハ

リウッドスターが入るような大きなお風呂をリビングに描いてく

ださいますか?バラの花びらをたくさん浮かべた、あれです。実

はこれが、一番の夢なのです。(笑)




   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

ローズバスタイム、女性なら一度は憧れるシーンです必要です。

いない方はご自分で。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年9月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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