MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載885回
      本日のオードブル

『夢、描きます。』

第14回

「斜陽」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





ブルー
グレー
パープル
ペールピンク
ペールオレンジ
ダークオレンジ
整備された公園
ぴょんと頭を出したエッフェル塔





 



第14回 「斜陽」



 画家の元に1通のビデオが届いた。それは画家に絵の依頼した

作家からのもので、母校である中学の体育館で公演を行っている映像

だった。添えられたメッセージには、『斜陽のパリの絵をお願いいた

します。』とだけ書かれていた。そしてビデオはこう始まっていた。


            


 「なんだかんだ言ったってやっぱりパリが好きですよね。ヨーロッパ

にはたくさんのすばらしい場所がありますよ、流行りの北欧、ノルウェ

ー、スウェーデン。美しい手つかずの自然が大事に生かされているけれ

ど、国民は非常に高い税金を払わなくちゃならない。車を買ったら同じ

額の税金を払うんですから、日本人みたいに簡単に買い替えはできな

い。しかし、その分の見返りの社会福祉は非常に行き届いています。

ノルウェーやスウェーデンは日が沈むのが早いけれど、地球環境問題を

抱える地球にとっては、まさに、『日、昇る』清潔なエコ先進国だと思

います。それに反してフランスはパリという毒気のある街。ねずみもゴ

キブリもたくさんいますよ、そんな大都市を地方が支えている国で

す。なんと言っても食料自給率100%の農業国ですから、農地のな

いパリと地方との格差は大きいし、みんなそれぞれに政治に、政府

に、さまざまな不満を持っています。デモが趣味という人がいるく

らいデモをするのは普通のこと。ストライキで足止めをくらってもお

互い様だから文句は言っても、仕方ないと思う。生活を楽しむことが

美徳という、アール・ド・ヴィーブル(Art de Vivre)という考え方

が根幹にあるから、働くこと自体は美徳ではない。バカンスを取るのは

当たりまえで、医者でさえ2か月休みますから、かかっている病人は死

活問題ですよ。そんな風に個人主義は徹底しています。だから、スー

パーのレジで自分の後ろに長蛇の列ができていても、平気でレジの店

員とペチャクチャしゃべっているお客さんがいる。いらだっている人

もいるけれど、大半が我慢している。それに営業時間が短いです。

久しぶりに日本に帰ってきたら真夜中なのに、コンビニの店員さんの

親切なことに涙が出そうになりました。ホスピタリティのすばらしさ

は日本をおいて他にないでしょう。


           


 そんな日本から花の都、パリに憧れを抱いて移住の決意でやって

来たら、多くの人が精神障害を起こすらしいですよ。それでも、

ガンみたいな命に関わる病気にかかったら医療費は全部タダなん

ですよ。歯医者さんの医療費はすごく高いけれど、歯が悪くなった

のはちゃんと歯を磨かなかったせいで、さらにそれを放置したあな

たが悪いから仕方ないけど、命にかかわる時は国が助けてあげまし

ょうっていうことでしょう。そこら辺はうらやましいなと思います

ね。


            


 私はパリに何度も行きましたが、どんな風景が好きかと言われた

らやっぱり、夕陽のパリです。高いところからパリの街を見渡せる

場所に行くと、エッフェル塔の真ん中から上がぴょんと立っている

んです。ほかは空しかない。エッフェル塔を際立たせるためにパリ

には高い建物は立たせられないんです。だから、夕陽のパリの空は

泣けるくらい美しいんです!


            


 夕日はもの悲しくて嫌いという人もいると思いますけど、実は私

1日は夕陽から始まるんです。昼夜逆転の生活ですので、夕陽は

朝焼けのようなものです。多くの真面目な人がお日様の下で仕事を

したり勉強したり遊んだりしている間、私は寝ていて、日が暮れる

頃になって起き出して夜中に執筆をするっていうそんな生活です。

それはフランス人の作家でマルセル・プルーストっていう人を真似

ているうちにそっちがよくなってきたんですね。


           


 彼は一生のうちに、たったひとつの本しか書いていない。なのに

20世紀を代表する作家です。それはそのひとつの本が長いのなんの

って、日本語にして400万字ですから、フランス人でさえ読んでる

人は少ないらしいですよ。でも、なぜ大作家になるのか?それって

ね、フランス人ならみんな知っているあまりにも有名なイントロか

らだと思いますね。ノーベル文学賞を取った川端康成の『雪国』

の、「トンネルを抜けたら雪国だった」のあの感じですよ。だっ

て、みなさん、その続き、知らないでしょ?私だって知りません

よ(笑)そして、プルーストは夏、美しい海辺のリゾートに行っ

ても、昼は寝ていて、夜起きて、真っ暗な海を見ながら執筆する

んですよ!そんな変わり者がフランス人にはやっぱり受けたんで

しょうね。負け惜しみかもしれませんがね。


            


 負け惜しみついでに、みなさん、『斜陽』って本を書いた作家、

誰か知ってますよね、はい、君、そう、太宰治です。プルーストは

太宰治と似たところがあります。それは資産家の息子だったってこ

とです。それじゃ、これ、知ってます?「雨ニモマケズ、風ニモマ

ケズ」はい、そう、宮沢賢治の詩です。この詩を私は小学校で暗唱

させられたんですけど、私を含め多くの人が貧しい農民の出でも努

力すればひとかどの有名人になれる、だからみんな努力しなくては

ならないと教わりました。しかし教えてもらわなかったことが1つだ

けありました。それは、宮沢賢治は貧しい農民の出身ではなかった

んです。彼はプルースト、太宰治と同じく裕福な資産家の息子だっ

たんです。太宰治に至ってはお父さんが貴族院議員、国会議員です

からね。ふたりともぼんぼんですよ。家を飛び出して上京しても、

大学にも行かず中退して自堕落な生活をしても、支援があるからや

って行けたのだと思います。ここが私と大いなる違いです。


            


 私は反対に、正しく貧しい家柄です。家柄と言うほどのものはあ

りません。とにかく貧乏で何もなくて、でも作家になりたい願望だ

けを持っていろんな仕事を転々としながらなんとかやってきて、や

っとそれで生計が立つ位の作家になりました。ですから、こうやっ

て母校の中学校で皆さんの前で話せるようになったと言う事は本当

に奇跡のようなことなのです。ですから私のケースは奇跡だと思っ

てください。奇跡というのはめったに起きないので奇跡と言うので

す。


            


 将棋で8冠を取った藤井聡太さんは天才って言われると思います

が、音楽の天才、絵画の天才、スポーツの天才なんて言われる人た

ちも一般的に言われる「1万時間の練習」をクリアしている人たち

です。1万時間の訓練の後、ようやくそこにたどり着いただけなん

ですよ。つまり、ローマ
1日にしてならず、パリも1日にしてな

らず。パリが好きと言うとミーハーなように思われますが、知れば

知るほど1日にしてできた街ではないことがわかります。この景観

を維持するために古い建物の階段を上り下りしているお年寄りがい

るのです。日本人は京都の一部を除いてそんな街や村の景観維持を

してこなかったのです。そこが日本とフランス、首都東京と首都パ

リの違いだろうと思います。


            


 東京オリンピック、パラリンピックの次はパリです。パリオリン

ピック、パラリンピックで、パリという街に対する人々の長年の思

い、センスの違いをあからさまに対比させられるでしょう。私は日

本人としてそれが非常に怖いです。


            


 まあ、それでも、いつかパリもかつての花の都と呼ばれる日はやっ

てくるでしょう。そうしてフランスは斜陽の国になるでしょう。かつ

てイギリスが斜陽の国と言われたように。それよりまもなく日本が斜

陽の国と言われるようになるでしょう。その前にまずはパリの斜陽

をみておきたいのです
。」



 



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

 ホスピタリティNo.1の日本も段々と疲れて

きているかもしれません。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年10月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.