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リサコラム
連載897回
      本日のオードブル

『宮殿ホテルの人々』

第8回

「花を活けるひと」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ここはパリの宮殿

パラスと呼ばれる最高ランクのホテル

★が5つでは足りないようででも

6つだと5つと見分けが

付きにくいからでしょうか?

丸い赤い絨毯の上で

白い制服のスタッフが

バラの花を青い花瓶に

活けているようです。

さて、話しを聞いてみましょうか?



 



第1回 「花を活けるひと」



 「タッチさん」いつも私が花にささやきかけている呼び名です。


            


 タッチとは、触れるという意味の他に、最後の一筆を入れるような

仕上げの意味もあります。この最後の一筆がどれくらい大事かは芸術

家や音楽家やシェフだけでなく、家庭のキッチンで料理を作る普通の

主婦も知り尽くしているはずです。最後のタッチで、全体がすごく

よくなったり、あるいは全部をダメになったりと、そんな重要なエン

ディングを私は担当していると思っております。


 私はパラスと呼ばれる最高ランクのパリのホテルで働いています。

仕事はスイートルームのハウスキーピングです。


            


 考えて見ればホテルとは不思議なところです。結婚式場であり、

宿泊施設や会議場、レストランですが、裏方では洗い場であり、

家具、備品の収納庫、リペアをする修理工場でもあるのです。


たくさんの食材を運び入れ、たくさんの廃棄物を出し、常に一部の

隙もなく清潔に美しく整えるために、様々な物的、人的資源をあら

ゆるところから集めて統合した1つのコンツェルンのようなものだ

と感じています。


            


 ホテルの規模により内容は異なりますが、パラス、宮殿となれば、

顧客には国家元首、王様、女王様もいらっしゃいますから、まるで小

さな国家を接待しているようなものです。また、いわゆるレジデント

と呼ばれるホテルの中で生活する人々も実は少なからずおいでです。

そのお客様の中にはホテルで会社を運営なさっておいでの方もいらっ

しゃいます。つまり、ホテルは家であり、生活シーンであり、仕事場

であり、小さなひとつの安定した安全な惑星のようなものだと言って

も過言ではありません。お金さえ払い続ければ、一歩も外に出ること

なく、外の冷たい風を感じることなく、事故やその他、人生に起きる

不運な出来事に遭遇することなく、穏やかな人生を送ることができる

のですから。ただ、そんな人生が幸せとは限りませんが…しかし、

そんな場所はホテル以外にありえないのです。


            


 私はその小さな惑星の中で最後の仕上げ師の役割を担っていると

思っています。まあ、なんて、おおげさな、とお思いでしょうか?

しかし、お部屋をきれいに整え、最後にお花を飾ることで、人間の

力では及ばない命のデコレーションをさせているのですから最後の

仕上げに他なりません。毎朝、注文していた生花が運び込まれると

エントランスホールの大きな活け込みは、お花屋さんがやってくれ

ますので、スイートルームのメイキングが完了した後、急いで下処

理をしてスイートルーム、廊下等手洗いなど花を活けて50カ所ほ

どに振り分けます。そして、毎日、水替え、お花の調達も行ってい

ます。


            


 この仕事につく前、私は移民としてこの国にやって来ました。

設備も古く、環境も悪い、さらに何の趣もない狭い郊外のアパルト

マンに入居しました。最近はそんな安いアパルトマンでも素敵な

ガラス張りのビルが新築されているようですが、私がいたアパルト

マンはお世辞にもいいとは言えない住環境でした。このホテルにお

泊まりになる方はそんな場所をご存知ではない方も少なくないでし

ょう。そんな住まいから、空港内の売店などの仕事に行きました。

真っ暗な時間に空港に向かうバスに乗り、その仕事が終わると、夜

はオフィスの掃除の仕事をしました。目的はもちろん、少しでもお

金を貯めて家族に仕送りをすること、そして洗練されたパリ風のマ

ナーとマクロン大統領がしゃべるような美しいフランス語を身に付

けることです。


            


 それからホテルのハウスキーピングに雇われ、ベッドメイキング、

掃除の仕事に従事しました。その後、2、3年ごとにホテルを変わ

るたび、ホテルの星の数が1つ、2つずつ増えていたのです。そう

して10年後、こんな私もこの宮殿ホテルの従業員の一人になれま

した。だからこの私の仕事はもう誰にも渡したくはないのです。


            


 ホテルのゲストの中にはお花なんてまるで見ていない、関心など

寄せない方もいると思います。しかし、お花というものは大変な力

を持つものなのです。例えばお誕生日、結婚祝い、お見舞いなどそ

んな時は必ずお花が登場します。お花がなくては結婚式も成り立ち

ません。さらに、お花は謝罪の言葉も伝えます。ハウスキーピング

に不備がある場合は、それもほぼ、毎日ですが、お花とチョコレー

ト菓子等を持ってスーツのスタッフが謝罪に向かいます。花言葉は

よく調べておく必要がありますが、言葉では伝えられないようなち

ょっと照れてしまうようなこともお花に代弁してもらうことができ

ます。そんなふうにお花によってこれまでどれぐらい多くの人が悲

しみを癒したり、元気付けられたり、勇気をもらったりしたことで

しょう。そういう意味でもお花は本当に貴重な存在で、欠くことの

できないものだと私は痛感しています。


            


 元気で上り調子で平和な時、人間は神の次の位にあると幻想を抱

きますが、実はお花の力がなくてはスムーズな人間生活は送れない

のです。花から命をいただいて、花の力を借りていると思っていま

す。しかし、花も生き物ですから枝から切り落とされた時点で寿命

が10分の1以下になります。そのまま土の上で根を張っていれば

、あと10倍長く花を咲かせていたかもしれないし、花が散っても

別の枝から新しい生命が生まれて来たはずなのですから。


            


 そんな花を活ける日々、花たちに向かってこうつぶやいているの

です。「今日も私の、私たちの思慮のなさを、不備を、思いやりの

足りなさを補い、悲しさをやわらげてね。時々は恥ずかしがり屋さん

を上手にエスコートしてね。そしていつも本当にありがとう、アシス

タントのタッチさん」と。花がアシスタントなんてヘンと思われるか

もしれせんが、花以上に優秀なアシスタントは今のところ、見つかっ

ていないのです




 



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

 2024年、パリオリンピック、パラリンピックの年

またまたパリのホテルの物語です。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年1月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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