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リサコラム
連載900回
      本日のオードブル

『宮殿ホテルの人々』

第4回

「自由とジェラシーと」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ここはパリの宮殿

パラスと呼ばれる最高ランクのホテル

テーブルには

モーニングサービス美しいの料理が

並んでいます。

ホテルでのこんな幸せなワンシーンは、

サービススタッフがいればこそ。


 



第4回 「自由とジェラシーと」



 「朝食お持ちいたしました」私はそう言いながらルームサービス

のカートを押してお客様のお部屋に入る瞬間が大好きです。

「さて、どんな方かな?」とわくわく感が襲ってくるからです。


 次の言葉が「今日はほんとに美しい朝ですね」、「パリの憂鬱な

空模様ですね」とか、「パリは雨が似合いますよ」となります。

その上でやっと、「どちらにセッティングいたしましょうか?」

とお客様のお顔を見ながら、楽しい会話を始めるのです。


            


 白いクロスを広げ、カップにポットにカトラリーに、そして冷たい

お料理から1つずつ並べてゆきます。その間、それとなくお客様の様

子や表情を観察します。女性のお客様は興味津々で、私の手元をご覧

なられることがあります。そして「美味しそう!」とか、「わ~」と

か感嘆詞を述べられますが、男性は無言で様子を見守っておいでの方

が多いようです。


            


 また、私の黒い肌を見て、「どこから来たの?」とお尋ねになる方

もいらっしゃいます。そうすると「ギニア人です」と答えます。する

と、「ギニア?え~と、どこだっけ…」と首を傾げられる方がほとん

どです。「ああ、ギニア湾か、昔、象牙海岸って言ってた場所だよ

ね」とか、「何語なの?フランス語しゃべるの?」と言う方も中に

いらっしゃいます。「フランス語は公用語で大半の人がしゃべりま

すが、他にも現地語があるんです」と英語、スペイン語、イタリア

語、ドイツ語、そして日本語でも答えます。まず、ここでほとんど

の方がびっくりなさいます。


           


 ギニアは1958年までフランスの植民地でした。それでも、結

構早い時期に独立した国ではあるんですけれどね。でも、こんな高

級ホテルで働いておりますと、ギニア人というだけで、ご自身がな

んだか格差社会の現実を見ているようで後ろめたいような気持ちに

なられるお客様がいらっしゃいます。ギニアは知らなくても、想像

で貧しい国だとわかるからだと思います。


            


 その通りで、ギニアの国民の半分は農業に従事していますし、

ボーキサイトなどの天然資源にも恵まれてはいますが、生活は当然

豊かではありません。首都以外のホテルでは、水のシャワーしか出

ないことも普通です。こんな貧しい国ではあるのですが、ギニア人

にはギニア人としての自負と心意気のようなものがあります。それ

はこんな言葉に表されています。


            


 「隷属の元での豊さより、自由の元での貧困を選ぶ」フランス

からの独立を問う国民投票があり、その時、ギニア民主党の書記長

だったセク・トゥーレが言ったという言葉です。フランスからの

完全独立を選んだ彼は、1958年、独立国ギニアの初代大統領

となりました。これはかっこいいのですが、実際、完全独立は大

混乱を招きました。フランスは援助の全てを打ち切り、地図さえ

持って退去したからです。その後もセク・トゥーレの気高い精神

を守る人々もいる一方、若い人々はやはり、新たな場所、つまり

先進国に行って生活を向上させたいと願います。その目指す場所

はそこからの独立を勝ち取ったはずのフランスなのです。フラン

ス語という共通言語があるためです。


            


 私は数年前からCDIになりましたが、CDIとは期間限定の

従業員ではなく、無期限で雇用してもらえる従業員のことです。

みんなこれを目指しているのですが、それがなかなか難しいので

す。どんなにCDIであっても、まじめに働いても、本国に強制

送還されることもあるのです。そんなニュースが先日流れていま

した。


            


 強制送還されたその若いギニア人はラ・ロシェルという自然遺産

を持つ風光明媚な港町のレストランでクラークとして働いていた

模範社員だったのです。本国に返された彼を連れ戻したのがレス

トランのオーナーでした。彼が当局と交渉にあたったそうです。

そんなことがニュースになるのは、ギニア人はじめ、他の国から

の移民がフランスで無期限雇用を勝ち取るのは容易ではないし、

強制送還されても、雇い主が連れ戻す交渉をしてくれることはま

れなだということを意味しています。しかし、そのニュースは私

たちギニア人にとって、とっても喜ばしい兆候でした。


            


 美しいもの、おいしい食べ物、文化、歴史、豊かな国に憧れるの

は当たり前のことですし、ここ、パリで頑張れば、貧困から抜け

出せると思ってやって来ているわけですから、まず、仕事先はフ

ランス人がもうやらなくなったような仕事、つまり、ごみ処理や、

清掃などの仕事です。このホテルでも清掃スタッフのほぼ100%

がアフリカ系移民です。かわいそうにと言う気持ちで、見て見ぬふ

りをするお客様の心情は当然、理解できます。こうして、ルームサ

ービスを運んでくる私だってこんな素敵な部屋で朝ご飯を食べなが

らエッフェル塔を眺め、そして、鏡のようにまっさらなシーツで寝

てみたいと思います。それは誰しも同じだと思うのですが、でも、

お客様が気まずい思いをされるようなジェラシーでいっぱいでは全

くありません。もちろん、ジェラシーがないというとウソになりま

す。欲しくても手に入らないから人はジェラシーを感じるのであっ

て、ジェラシーは人間が上を目指すために必要な栄養素だと私は思

っています。ジェラシーは欲求と表裏一体だから、ジェラシーを感

じたら、もっと頑張ろうと私は思うのです。


            


 そんな時、私は自由に羽ばたける気持ちになれるのです。持たない

自由がほんとうの自由と言った人がいますが、そんな感情を持った

時、隷属の元での豊さより、自由の元での貧困を選んだセク・トゥ

ーレのギニア人の魂が私の中にもちゃんと息づいていることを感じ

るのです。正しい私のアイデンティティはフランスのパラスホテル

のギニア人スタッフです。私たちギニア人にもプライドがあるので

す。ですから、出身を尋ねられたら、フランスの、パリの、ホテル

の隷属ではない自分に自信をもって「ギニア人です」と答えます。

。そして私の大好きな「パリ、フランスのことなら何でも聞いてく

ださい」と付け加えるのです。


            


 すると、「ルーヴル美術館は何時頃が空いてる?」とか「パリで

一番の穴場スポットを教えて」とか、「あなたのおすすめカフェ

を案内して」などとフランス人から尋ねられることがよくありま

す。するとギニア人の私は心の中でガッツポーズをするのです




 



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

隷属の元での豊さより自由の元での貧困を選ぶ、

有名な言葉ですが、なかなか実行できないものです。

しかし、その精神がわかる方もきっとたくさん

おいでだとおもいます。

2日前のLe Parisienのニュースでしたが

ギニア人スタッフを連れ戻したオーナーのような人が

増えることを願っています。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年1月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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