MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載904回
      本日のオードブル

『花を愛でる家』

第2回

「叔母と花の街パリ」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




エッフェル塔

中世の雰囲気の建物

カフェ、街灯

花屋さん

パリの象徴はいくらでも

どこにでも、パリなら。



 



第2回 「叔母と花の街パリ」



 私には12歳、ちょうど一回り上の叔母がいます。今はもう交流も

ほとんどないのですが、子供の頃は同じ1つの屋根の下に住んでいま

した。叔母と言っても12歳の年の差ですから、お姉さんのような存

在でした。それも怖いお姉さんでした。


           


 家には両親、兄たちの他、祖父母と叔父が二人、その他、今まで

ほとんどないのかもかもしれませんが、居候と言うような人がい

ました。そして住み込みのお手伝いさんのような人がいましたの

で、最も多い時で12人くらいの人間が1つ屋根の下に住んでい

ました。ただ、昼間、子供は学校や幼稚園、外で友達と遊んだ

り、大人は外に行っていますので、家の中にはだいたい、叔母

と祖母だけがいたようです。その祖母も温泉旅行や趣味でよく

出歩いていましたので、私が幼稚園から帰ってくると長ひょろ

い家には私と叔母だけということがよくありました。


            


 
私の記憶では叔母はグラフィックとか絵画とかをやっていたよ

うで、美術の専門学校に行っていたようです。当時の流行語で言

えば、インテリぶった感じでカタカナの難しい言葉をよく私に浴

びせかけていました。言葉自体は覚えていませんが、キュビズム

とかアールデコとかアールヌーボーとかいったそんな言葉ではな

かったのかなと思います。


            


 
その叔母は、別に親でもお姉さんでもないのに、私の成績表に

常に目を光らせていて、毎日宿題や勉強しているのになんでこんな

に成績が悪いのかとよく叱りました。友人が家に遊びに来て一緒に

走り回ったりしていると、廊下の先に仁王立ちした叔母が睨み付け

ていました。それ以来、廊下は抜き足差し足で歩くようになりまし

た。また勉強せずに漫画を読んだり、トランプで遊んだりしている

と、「本を読みなさい!」とまた厳しく叱られました。


            


 
叔母はまた、よく私にお金を渡して、「チョコレートを買って

来て」とお使いに出しました。そして買ってくると、今度のはあま

り好きじゃないとか、いろいろ文句を言いました。それならなぜ、

自分で買いに行かないのか?と思ってもいたのですが、買ってくる

と、必ず、そのお駄賃にチョコの箱を開けて、銀紙の端っこをぱきっ

と割って、1列か2列のかけらをくれるので、私は文句を言われて

も喜んでチョコレートを買いに行ったものでした。


            


 その叔母が20代半ばで結婚することになり、家を出るときに、

叔母の部屋に飾っていた絵をくれたのです。「この映画はパリのモ

ンマルトルと言う所で買った非常に貴重なものよ、わかる?」と、

彼女は「パリ」と「モンマルトル」を強調して言いましたが、当時

小学6年生私には、パリはわかっても、モンマルトルは初めて聞く

言葉でした。後になってゴッホ、ルノアール、ピカソなどの有名に

なった画家たちがまだ貧乏だったころに多く住んでいた場所だった

ということを後に、本を読んで知りました。


            


 絵には大きなエッフェル塔と左右に大きなクラシックな感じの

建物が描かれていて、建物の1階部分のテントの下にはカフェが

あり、そこには黒いアイアンのテーブルと椅子が並んでいまし

た。その当時、カフェと言う言葉は知りませんでしたが、アウ

トドアの喫茶店というイメージはすぐに理解できました。その

カフェの一番手前のテーブルには赤いバラの花束が置いてあり

ました。


           


 貴重な絵なのだからとビクビクしながら額を両手で恭しくも

らうと、自分の机の前の壁に画鋲で打ち付けました。どう見て

もコピーのようでしたが、しかし、パリのモンマルトルで叔母

が購入した絵だと思いながら、毎日眺めては、その絵の中に入

っていったのです。


            


 
バラの花束のテーブルの前には黒い窓枠があって、その手前

にはカーテンがかかっていました。淡いピンク色のレースのよ

うな生地にバラの花がプリントされていて、さらにその前には

オレンジ色に白い線が入ったチェックのカーテンがかかってい

たのです。


 当時、私の家にはそんなかわいいカーテンはありませんでし

た。花柄のカーテンも見たことがなく、カーテンと言えば、ブ

ルーとかグリーンとか無地のカーテンというイメージでした。

また、何のために使っているのかもよくわかりませんでした。

時々開けたり閉めたりして日差しを遮るためにはあるのはわか

っていましたが、それが装飾的な役割を果たしているとは全く

想像もつきませんでした、そんなわけで、そのバラの花のレー

スカーテンもオレンジ色のチェックのカーテンはとても新鮮

な驚きで眺めました。


 そしてその絵を私はその高校3年生までずっと机の前で見続

けました。1年も経つとその絵は絵ではなく、窓ごしに見える

私だけの景色にほかならなくなっていました。


            


 
そして高校卒業後、その絵を大学生のアパートの部屋に持って

いきました。まず、4畳半1Kの狭いアパートの部屋のリビング

兼寝室兼勉強部屋の壁にその絵を掛けました。エッフェル塔、

カフェ、クラシカルな建物、そして赤いバラの花束、バラ色の

レースカーテン、オレンジ色のチェックのカーテン、これらが

全部ひとまとまりになって万華鏡のような感じで花の街パリの

覗いているような気分は常に私の青春時代と共にありました。

そして卒業旅行で私はこの絵に描かれている場所を探したいと

パリに行ったのです。


            


 まず、パリに行って驚いたことは、この絵のような場所がいく

らでもあるということです。高いエッフェル塔はパリのどこから

でも眺められ、カフェはたくさんあり、どの建物もほぼ同じ高

さ、様式ばかりだったのです。歩いても、歩いてもこの絵のよ

うな光景が広がっていて、一体どこを描かれたものなのかを探し

当てるのは不可能だと思いました。私はそこでこの絵は本当に

そんなに特別な絵だったのだろうかと思いました。世の中に1

しかない特別な光景だと思ってきたその花の街パリはいたるとこ

ろにあり、その絵の価値が一気に下がった思いでした。


            


 それから大学を卒業して就職、転勤を繰り返すうち、絵は押し

入れの段ボールの中に仕舞い込まれたままになりました。忘れた

わけではありませんでしたが、パリに行ってから、そして社会人

になってからは絵のことを気に掛ける余裕がなかったのです。


しかし、もしかしたら、叔母が言ったように本当に貴重なものか

もしれない。私は思い切って絵を画廊に持っていったのです。


            


 画廊の店主らしき人は、私が風呂敷を開いて絵を見せたとき

「ふ~ん」と言って腕組みをしました。「正直、いくらぐらい

欲しいです?」と彼は言いました。私は「いえ、いくらという

より、これはいくらぐらいするものなのかなと思って持ってき

ました」と言うと、画廊の店主は開けてもよいかと聞きまし

た。私は「はい、どうぞ」と答えました。額から外すという

考えは今まで一度もなかったのです。店主は、私の目の前で

裏の板を外して、その絵を出し、ひっくり返したのです。

 
「そうですね、額縁があるから、500円てとこですね」

と言ったのです。私は唖然としました。正直、数十万円くら

いを期待していたのですから。驚いた雰囲気を察した画廊の

店主は「これは銀行か何かのカレンダーの絵でしょう。きっ

とカレンダーを破って額に入れたものだと思います」と言っ

たのです。私はびっくりしました。インテリぶって洒落もの

のあの叔母がパリのモンマルに行って買ってきた絵だとばか

り思っていたのですから。画廊の主人は「あなたにとっては

大事な絵だと思いますので、お部屋に飾られておいた方が良

いでしょう」と、すぐに結論を出しました。私は恥ずかしさ

と落胆がミックスされた気分で風呂敷に包んだ絵を持って帰

りました。


            


 今、あの絵は新築したばかりの私の家の家事部屋の壁に掛

かっています。絵の左右の壁には同じようなオレンジ色のチェ

ックのカーテンを吊るし、まるでその絵が窓になっているかの

ように見せかけているのです。休日の家事が一段落すると、私

は絵の前のアイアンのコーヒーテーブルを持って来て、花の街

パリでコーヒーブレイクをするのです




  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

パリ自体が花を愛でているようですから。

p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年2月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.