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リサコラム
連載905回
      本日のオードブル

『花を愛でる家』

第3回

「バラの庭」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




バラ入りの

ローブを着て

窓ごしに隣の家の

美しいバラの庭を眺める女性

何を思う。


 



第3回 「バラの庭」



 「心地よい初夏になりました。お元気でお過ごしでしょうか?

その節は私のテーブルコーディネートサロンにお集まり下さりあり

がとうございます。8年越しにやっとサロンの再開にこぎつけまし

たので、ここに案内申し上げます。つきましては、またぜひ、お運

びいただきたく、まずは、美しいバラの庭を愛でながらのティパー

ティにお越しになられませんか?もちろん、無料にてご招待申し上

げます…」彼女がこのバラの庭の家に引っ越してきたのは 2年前。

それまではずっとマンション暮らしだった。


            


 その思いは今から8年前の初夏を前にした心地よく晴れたある日、

彼女は友人に誘われて蓼科にあるバラ園を訪れたことから始まった。

その日訪れた広大なバラ園には絵のように、いや、絵より数百倍も

美しいオールドローズが競い合うように咲き誇っていた。ふたりは

歩き回る内にコートを脱ぎ、次にジャケットも脱ぎ、ブラウス1枚

の軽装になって、バラ園の中でお茶を楽しみ、散策を楽しみ、ほぼ

丸一日を過ごした。


            


 まずはエントランスのバラのアーチを何度もくぐり抜けては、

イングリッシュガーデンを巡り、バラのトンネルでは子供のように

はしゃぎながら写真を撮りまくり、レストランではバラの庭を眺め

ながらフランス料理のフルコースを堪能し、午後はハイティ、そし

てブティックでバラ関連のお土産物を買い込み、さらにイングリッ

シュガーデン、バラのトンネルと一巡し、名残惜し気にバラのゲー

トを抜けるときには、夕陽に照らされた彼女の身も心はすっかり

バラ色に染まり、バラの庭のある家を作ることを決意していた。


            


 ちょうどその頃、彼女は自宅マンションの1室で十数人の生徒を

集め、テーブルコーディネートのレッスンを続けては来てはいたけ

れど、窓から見える景色はビルばかりで、そのせいか、生徒も3人

減り、5人減り、10人減りと、やむなく教室を閉じることになっ

たちょうどその頃だった。


            


 早速、彼女のバラの庭を実現する土地探しが始まった。すぐに一

軒の庭のある古い民家を見つけ、購入を前提に庭師に相談を持ち掛

けた。彼女はバラ園で買ってきた本を見せ、彼女の構想を語り始め


ると、庭師の男性はネイリストが整えた彼女のとがった爪先をちら

っと見るとこう言った。「ご存知かもしれませんが、バラの庭を維

持するのは並大抵のことではありません。まず、バラはとげがあり

ますから鋭いとげは手袋の
からでも刺さります。それに、肝心な

ことは、咲いた花を地植えしても、次の年に花を咲かせられるかど

うかはわかりません。また、1年の大半は枯れ枝を眺める庭になり

ます。バラが咲く時期は多くても2,3ヶ月の間ですから。それを

まずはご理解いただいてからお始めになった方が良いのではないか

と思います」


            


 中の上流くらいのサラリーマン家庭に生まれ、姉2人と弟の1人

の間に生まれた彼女は家事もあまり得意ではなかった。結婚して主婦

となった後は、週に1日は家の掃除や料理の下ごしらえなどに家事手

伝いの家政婦を雇っていた。


            


 彼女は今まで土いじりなどしたことのない自分の美しい手を眺め

た。その時、あれほどの固い決意をしたのにもかかわらず、それが

夢の城のようにガラガラと崩れてゆく音を自分の中で確かに確認す

ると、庭師に向かって、あっさりと、「そうですか、わかりました」

と言った。結局、その土地と家の購入は諦めることになり、それか

らまた数年が経った。


            


 そんなまたある日、「近所にすごく素敵なバラの庭のある家を見

つけたの」と同じ友人から誘いがあり、彼女の家にほど近い、その

バラの庭のある家を見に行くことになった。


            


 その家自体も非常に美しく、さらに手入れの行き届いた前庭があ

り、そして、なにより、狭い道を隔てた向い側の古い空き家に彼女

の関心は集中した。彼女の特技は思い込みの強さで、それからその

古い家が売りに出ないかほぼ毎週のように見に行ったり、周辺の不

動産屋に聞きに行ったりもした。そして、その空き家が近いうち

に、売りに出されるという情報を入手すると、いち早く手付を打

った。そして空き家付きの土地を手に入れてしまった。


            


 彼女は玄関を南側に配置すると、北側の向いの家の玄関側に

リビングを置くことにした。翌年の春から初夏に向かう頃、お向か

いの前庭の美しく大きなバラがフェンスを越えて彼女の家に向かっ

てどんどん伸びてきた。彼女は決断をした。早速、8年前に閉鎖

したサロンにかつて通って来ていた生徒に、バラの庭のイラスト

付きの案内状を作り、サロンの再開とティパーティの案内状を送

ったのだった。彼女は10数人すべてのかつての生徒にメッセー

ジを書き終えたあと、封を閉じ、切手を貼った。その後、これま

で大事にしまっておいた蓼科のバラ園で購入したバラのエンボス

入りの便箋を取り出すと万年筆で別の文面の手紙を書き始めた。


            


 「…兼ねてから行っておりました趣味と実益を兼ねたテーブルセ

ッティングのサロンを、この自宅にて再開することにいたしまし

た。その前にぜひ、アフタヌーンティにお越しいただけないかなと

思い、拙い手紙をしたためました次第です。日中、ほとんど家にお

りますため、ご都合のよろしい時にいつでもお声掛けいただけまし

たら結構でございます。」彼女はバラのエンボスの便箋に3度書き

直して、ようやく最後に自分の名前を書き記した。そして、追伸と

して、「美しいお宅様のバラの庭を私のサロンから堪能できます幸

せをご一緒に味わっていただけますことが、私の願いです。素晴ら

しいバラの前庭をお持ちなのに、おそらく、お家のリビングなどか

らはご覧になれないと存じますからです。しかし、私共は毎日、美

しいバラの庭の借景を自宅リビングから独占で堪能させていただい

ております。それがあまりに忍びないのでございます。」それから

封をすると、バラで埋め尽くされた前庭のある隣の家のポストにそ

っと投函した





  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

実際に前庭にだけ咲くバラの庭のお宅、あります。

道行く人たちのためにバラのお庭はあるのだろうと思います。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年2月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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