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リサコラム
連載906回
      本日のオードブル

『花を愛でる家』

第4回

「美しい物語」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




青い空に

向かって

花開く大きな花。

青い花瓶

青いレースのカーテン

美しい物語が始まる予感です。


 



第4回 「美しい物語」



 先日、実に変った体験をしました。それは姪の教会の結婚式での出

来事です。まあ、常識的には教会での結婚式で変った出来事なんて

起きないものです。そんな厳粛なお祝い事の場合は、つつがなく

という素敵な形容詞が最も似合うシーンですから。


            


 しかし、私の姪は私に似てちょっと変わったところがありまし

た。結婚が決まるずっと前から、披露宴はしないと宣言していた

からです。そんな一風変わった子供でしたから、式が無事終わ

れば、ガラガラと空き缶を引きずりながら、さっさとリムジンで

空港に向かうというシナリオだったのでしょう。そんなふうに過去

における推量で語らなくてはならないということは、つまり、その

ようにはいかなかったということなのです。


            


 
ハプニングは、新郎、新婦の入場のあと、クライマックスの指輪

の交換の前に、神父さんが2人に結婚の誓いの言葉を述べさせるシ

ーンで起きました。新郎に向かって「病める時も、健やかなる時も」

と述べられた後、「お風呂掃除はします、トイレ掃除もします、毎日

シーツにアイロンをかけます」と続けたのです。すぐに新郎の顔色

に変化が現れました。蛇かゴキブリでも見たようなびっくり仰天した

顔になっていたのです。さらにその後、神父さんは、「毎日、料理も

作ります。毎日、花を買ってきて花の水換えもします」と続いた時、

新郎の顔は、いきなり、怒りの形相に変化しました。当然、列席者

からも驚きの声が上がりました。50数人は立ち上がったり、奇声を

あげたり、中には、きっとこれはジョークだろうと大笑いする者もい

て、拍手も巻き起こり、場は騒然となりました。しかし、新郎が「そ

んな約束をしていないよ!」と声を張り上げると、しんと静まり返っ

てしまったのです。涼しい顔で笑っていたのは唯、一人新婦でした。


            


 
「掃除、洗濯だけじゃなくて、なに?風呂掃除に、トイレ掃除に、

シーツにアイロン?料理?毎日、花を買ってきて、花の水換えもす

るんだって!!何、それ?あんまりだ!」新郎は顔を真っ赤にして

怒っていました。しかし、新婦はどこ吹く風と、笑みを浮かべるば

かりです。新郎はその時、はっとわれに返って、「もしかして、ここ

にいるみなさんはグルですか?私に恥をかかせるつもりですか?」と

列席者を見渡しました。もう、これでは式が進行するわけはありませ

ん。神父に詰め寄る新郎を抑えつけるために、すぐに列席者の数人が

駆け寄ってきました。しかし、新郎は「こんなことをこんな場で誓わ

せるなんて卑怯だよ。そんなことは後で、話し合いで決めることじゃ

ないのかい?ひどすぎる話だよ!」と、押さえつけられたまま、新婦

をにらみつけると、クールビューティな新婦は堂々と、「誓約できな


            


いと言うのなら、ここで『いいえ、妻にはしません』と言われたら結

構です」とだけ静かに言い放ったのです。


            


 
もちろん両家の親はあたふた、座っている人はいなくなり、

式どころではありません。両家の家族が二手に分かれ収拾のつか

ない戦場と化してしまったのです。私は「あっぱれ私の姪っ子ちゃ

ん!」と思いながらその一部始終をひとり遠巻きにしつつ興味津々

でビデオを撮っていました。その時、私は3年前の自分の緊急入院

ことを思い出していたのです。思い出しながらほくそ笑んでいました。

3年前、私は自宅で突然、急激な発作に襲われ倒れ、救急車で運ばれ

7日間、意識不明の重体に陥ってしまったのです。目が覚めた時は

いろんな管が体から出ていました。そして、私の顔の上に人の顔が覆

いかぶさってきました。親友のユリでした。彼女は「よかった!

よかった!」と涙ながらに、連呼しながら私の頬を両手で撫でてい

ました。それからユリは窓辺にある花を指差して、「きっとあなたが

目を覚ますはずだと信じて、ずっとお花にお祈りしていたのよ。

つぼみも全部咲いたら、絶対にあなたがこちらに戻ってくるって。

みごとに全部の花が開いたら、ほんとに、あなたの目が覚めた

のよ!すごくない!ねえ、見える?すっごくきれいでしょう!」

彼女は力強い手で私の手を握りました。それから次第に私は元気を

取り戻して、歩けるようになり、自分で花の水換えもしました。


           


 
後日談で、夫が私の看病に来たのは一度きり、しかも泊まり込ん

だことはなく、後の世話はユリに任せきりだったことを知りまし

た。人生って偶然が必然を引き寄せてくれるのですね。私はその

時につくづく思いました。


            


 
偶然が引き寄せた必然とは、退院した後、夫と別れてひとり暮ら

しを始めたことです。夫は、病める時も、健やかなる時も、花を買

ってきて、水換えをしながら、回復を待つことさえ嫌で、面倒だっ

たということがわかったからです。それから、ひとり暮らしをする

ようになってからは毎日、自宅のあちこちに花の花瓶を置くように

なりました。ですが、あちこちに置いている花の水換えを毎日やる

となるとちょっとした労働なのです。しかし、そのおかげで花はい

つも固い蕾も開かせて、麗しい瞳で私を眺めてくれます。だから、

まあ、子供の面倒をみているようなものだと思っています。


            


 
その結婚式の戦場をそっと抜け出した私はひとり、教会の前で待

機していたタクシーに乗り込みました。走り出して教会の門を出た

あたりで後ろを振り向いたとき、今日、2度目の驚きが走って来ま

した。新婦の姪っ子ちゃんたら、まるでダスティン・ホフマンの

映画『卒業』のように、ウエディングドレスのままで、私のタク

シーを追いかけてくるではありませんか!たった1人で! 私は

タクシーのなかも構わず大声で叫びました。「姪っ子ちゃん、

あとになって後悔するくらいなら、この際に及んで、花の水切り

もしたくないような心の小さな男なんて、切って捨てなさい!」

と。


            


 
今、出窓に置いた濃い赤ピンク色のユリの花は青空に向かって

ぐんぐんと大きな花を開かせ、今日、ひとつ古い花を散らせまし

た。もし、私が倒れなかったら、主人の真の人格は知らずにいら

れたでしょう。それならそれでよかったのかもしれません。

しかし、私の姪は賢かった。私の体験を存分に活かしたのです。

きっとこれから、ほんとうの美しい物語が始まるのでしょう




  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

今日の物語は音声で5分で作りました。時間がなく切羽詰まって

いたものですから。だいたいいつも、そのような感じです。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年3月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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