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リサコラム
連載988回
      本日のオードブル

『ノックの音が』

第3話

「ひまわり畑」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



夕焼け空を眺める

黒いシルエットのj女性、

その前は遥か遠くまで続く

一面のひまわり畑。

さあ、SFの世界へ!





 



第3話 「ひまわり畑」



 「コンコン」瑠偉は白い木製のドアをノックした。


            


 「どうぞ、お入り下さい」ドアがしゃべると、ゆっくりとドアが

開いた。中に入ると、直径4mの円形のスペースが現れた。エレベ

ーターの中だった。大きな窓にはカーテンがかかり、ちょうど一人

用ホテルの部屋のようになっている。このエレベーターは最上階と

1階とを結ぶ1人乗りエレベーターのため、誰かが途中で乗ってく

ることも、途中の階に降りることもできない。しかし、このエレベ

ーターは、ゆっくり降りることも、早く降りることも好みで速度調

整が無段階にできた。途中で停めることさえできた。


            


 「今回は、1時間かけてゆっくり降りようかなと思ってま~す」

瑠偉がそう指示を出すと、「まずは、お好みのお相手をご指示くだ

さいませ」エレベーターは瑠偉にそう言った。エレベーターの中の

声もいろいろと選べるようになっている。「それじゃ、今回は小学

生3年生の男の子の声で!」瑠偉がそう言うと、ちょっとたどたど

しい男の子の声で、「かしこまりました。では、1階まで参ります」

と言い、エレベーターはとてもゆっくりした速度で下降し始めた。


            


 たかがエレベーターとはいえ、最上階の101階と1階のみを結

ぶロボットが制御するこのエレベーターには様々な機能と仕掛けがあ

った。まず、内部は高級ホテルのラウンジのような作りで、円形の壁

まで床には青いふかふかの絨毯が敷き詰められ、横になれる一人掛け

のソファと、円形の躯体に沿って、バーカウンターとハイスツールが

あり、好きな飲み物や軽食を注文することもできる。コンパクトなバ

スルームさえある。


            


 瑠偉はコーヒーか紅茶か、あるいはシャンパンかと迷ったが、まず

はリーフパイが食べたい気分だったので、バーカウンターに向かって

、「リーフパイ、アンド、カプチーノ、プリーズ!」と言った。こ

のロボットカウンターは、英語、日本語、韓国語、中国語、インド

ネシア語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ロシ

ア語と、10ヶ国語を理解する。話者の母国語を判断して、その言

語で返事をする。瑠偉の英語は日本人の英語だとこのロボットは理

解したようだった。


            


 「かしこまりました」と、小学生の男の子の声で返事がきた。

そして、その3分半後にカウンターの一部のふたがぱっと開いて、

注文の二つがトレーに乗って出てきた。瑠偉はそのトレーを持って

、一人掛けのソファに腰掛け、その脇の丸くくりぬかれたようにく

ぼんだ場所にトレーを置くと、早速、そのリーフパイとカプチーノ

を堪能し始めた。さくさくさくと、軽やか音が静かなエレベーター

の中に響く。「やっぱり、ここの焼き立てのリーフパイはおいしい

わ~」今回は特別に何かおいしい気がする。この前は、ちょっとク

レームつけたから、レシピを変えたのかしら?ゆっくり外の景色の

移り変わりを眺めながらコーヒーを飲めるから、どんなカフェより

ここが1番よね、と瑠偉は思った。


            


 「おほめのお言葉、うれしいです。今後はさらに、おいしいリー

フパイをご提供できるように、そして、もっと楽しんでいただける

ように、精進いたします」と、エレベーターがまた男の子の声がそ

う言うと、瑠偉はおかしくて、つい、ふふふと笑った。ロボットは

言葉だけでなく、表情や言葉の行間も理解するようだ。


            


 落ち着くと、瑠偉は、外の景色を見たくて、「カーテンをあけて

ちょうだい」とエレベーターに言った。するとゆっくりカーテンが

開き、シースルーのエレベーターの窓からちょうど、夕暮れ時のト

ワイライトタイムが広がった。エレベーターは青紫色の空から、赤

紫の空に向かって、まるで動いていないかのようにゆっくり、ゆっ

くりと雄大に広がる景色に向かって下降を続けている。


            


 「ここでちょっと停めてちょうだい!」瑠偉は言った。すると

「了解しました。お停めします」とまた子供の声が聞こえた。そし

て、地上から150mほどのところで止まった。「ああ、きれい

!まさに、絶景ね。上にいるとわからないけど、こんな風に世界

は見えるのね。「おかわりのリーフパイもお願い。それにシャン

パンと軽いオードブルもいただけるかしら?」と言った。3分後

注文の品が同じカウンターの引き出しから出て来た。


            


 「何を食べても飲んでもお金を払わなくていいのを、最初、不

思議に思ったけど、これが正解よね。お金のやりとりがなければこ

んなにも楽なのよね。ちょっと前までは何か1つ買うでも、スマホ

出してQRコードを読み込んだり、お財布からカードとか現金とか

いうものを出したりして、とても面倒だったけど、そんなことがな

くなって、ほんといい世の中になったわ~」瑠偉は外を眺めながら

ぽつりと言った。「みんなが好きなことをして、好きなようにもの

を作って、音楽を奏でたい人は好きなように楽器を鳴らして、行き

たいところに行き、食べたい時に食べ、働きたい時に働けるから、

何の争いも起きない。こんな世界、どうしてもっと早く実現しなか

ったのかしら?お金のやりとりなしだから、富める人も貧しい人も

いなし、住みたいところに住んで、好きなことを職業にして、みん

な楽しそうにして、みんな太陽の方を向いて生きている、ひまわり

のように。だから、ぶつかり合うこともない。


            


 瑠偉は夕焼けのトワイライトショーを眺めながら、シャンパンを

一口、一口、味わいつつ、感慨にふけった。そして、エレベーター

はさらに、ゆっくりと夕暮れのすばらしい景色の中を散策するよう

にして、やっと1階に着いた。着いてもドア自動では開かない。自

分が好きなときに開けられる。外でエレベーターを待っている人が

いない限りその中でずっといることもできる。誰も焦る人はいない。


            


 「コンコン」しばらくして、エレベーターの外でノックの音が

聞こえた。次の人が乗りたがっているようだと瑠偉は思った。

瑠偉はトレーを開いたボックスの中に入れると、ゆっくりとボッ

クスは閉じた。「カプチーノにミルフィーユに、シャンパンに、

オードブルも堪能したし、それじゃ、そろそろ降りますね!」

そう瑠偉が言うと、エレベーターの室内は静かに自分自身の清掃

を始めた。そして、次の人が入って来る準備が整うと、ドアが開

いた。


            


 「どうそ、お降りください」と少年の声が言った。エレベーター

にいる間に小学3年生は5年生くらいの声に成長していた。そして

瑠偉が降りると、ドアが閉まり、反対側のドアがゆっくりと開い

て、「お待たせいたしました。どうぞ、お乗りください」と言っ

て、次に乗りたい人が入って来た。


            


 瑠偉は今日、1年ぶりに101階から地上に降りて、これから

1年を、地上で生活をする。先ほどの入れ違いの人と交代で、畑

を耕し、野菜を作り、太陽と共に生きる。しかし、世の中がこんな

システムに落ち着くまで人間は恐ろしくたくさんの争いを起こし

破壊と再生を際限なく繰り返して来た。やっと、22世紀を前に

ロボットと人間の数がちょうど半分半分の数になったとき、

101階と地上で生きている人の数もちょうど半分になり、1年

交代で生活することで、地上と天上の世界の人口がちょうどよく

なった。そこでやっと世の中は安定して、人間が他人の役に立つ

ために生きるという、おそらく本来の人間らしさを獲得して、お

金の要らない世界になったのだった。


            


 エレベーターホールの外はガラス張りになっていて、その向こう

は太陽に向かって伸びる一面のひまわり畑だった




   




上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。



p.s.1


昔読んだ、幸せなお金持ちのほんに

そんなことが書いてあったのですが、

お金の要らない世界、実現するでしょうか?

して欲しいです。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2025年10月号へ。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
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