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リサコラム
連載995回
      本日のオードブル

『ノックの音が』

第10話

「イヴの占い師」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




月が美しい

イヴの夜、

みんな二人連れのカップルばかり。

そんな時、

一人で足が向いた場所に

もしかしたら、

運命の人が…。


 



第10話 「イヴの占い師」




 「実を言いますと、ずっと名ばかりのクリスチャンで、カトリック

の学校の生徒さんの前で先輩面してしゃべる資格があるのかしらと

思うばかりで…それに、クリスマスが怖いのです」演台の上の演説者

はちょっとどぎまぎしながら話し始めた。「最近は教会にご無沙汰し

ておりますし、コンビニにも行けば、映画も見れば、お酒もたしなみ

ます、ごく普通の一般市民ですから。ただ、私の場合は、主人がクリ

スチャンで、真面目に働くことをよしとする人ですから、私の行き

当たりばったりの雑な生活を立て直してくれた恩人なのです。先ほ

ど、クリスマスが怖いと申しましたが、その一方でものすごくクリス

マスが待ち遠しいです。


            


 それは大学4年生、22歳の時でした。学生時代はアルバイトに

専念し、就職も決まらないまま卒業の冬を迎えていました。その当

時、女子学生の間ではバイリンガルだの、帰国子女だのが流行り言

葉のように飛び交っていたんです。就職も決まらないなら、海外留

学でもして箔をつけて日本に戻ってきたらきっといい職につけて、

高学歴、高収入のイケメンと結婚できるのではないかと思ったの

です。もちろん、そんな先輩たちの華やかなサクセスストーリーを

見聞きしてきましたから、自分にもそんな美しいゴールしか見えて

いませんでした。私は早速、フランス、そう、花の都、パリに留学

をすることに決意しました。親の反対を押し切って、多額な借金を

してまでです。


            


 しかし、花の都、グルメの都は、行って見ると、物価は高く、薄

汚いビストロのようなレストランで定食を食べるのがやっとで、

普段は自分で作ったバゲットにハムやチーズや野菜を挟んだサンド

イッチばかり食べていました。フレンチのコース料理なんて、一度

もお目にかかったこともありませんでした。しかし、時々は私をか

わいそうだと裕福な友人が自分のアパルトマンに招いて、ごちそう

をしてくれたこともありました。友人とはおいしいご飯にありつく

ためにあるという私の寂しく悲しい日常だったのです。それに、授

業は全てをフランス語で行われ、まるでついて行けませんでした。

だって、どんなに頑張ってもベルギーやらカナダなど、フランス語

を第二の母国語にする学生たちとは、素養が違い、比べものになり

ません。さらに、生活費の足しに働きたくても、学生ができるアル

バイトはほとんどなく、不平等だと言ってもフランス語をしゃべれ

ない人間を雇ってくれるところはありませんでした。時にはレスト

ランから、廃棄される食材もいただくこともあったのです。そして

何とか1年が経ち、最悪の成績で留学を終えると、屈辱にさいなまれ

ながら日本に戻ってきたのです。


            


 すると、どうでしょう!私の留学経験はなんと金ピカの金メッキ

がかけられ、就職先には留学が勲章か何かのようになりました。

その勲章を持っていけば、どこでも受け入れてもらえるようなそん

な時代だったのです。しかし、そんな風潮にも陰りが見えはじめま

した。バブル崩壊から5年も経つと、私の勤務していたフランス系

の企業も日本から撤退することになり、私はまた路頭に迷うことに

なりました。それからというもの、5年間も定職につけませんでし

た。


            


 もう、限界というクリスマスムードも盛り上がりつつあった11

月の末、街を歩いていたら、ふと道端の手相占いの人と目が合って

しまったんです。私は、もう藁をもつかむ心境で無意識に足はそちら

に向いて、気づけば、私は占い師の前に腰をかけていました。私は

無言で手を出しました。占い師の男性は私の手を見るなり、真面目

な顔でこう言ったのです。


            


 「このすぐ近所のカフェで出会った人があなたの理想の相手で

す。その彼のもとに行きなさい」たったそれだけです。私は3千円

払い、しかし、半信半疑でまた、ぶらぶらと、通りを歩いて行きま

した。ちょうど夕食時で、どのレストランも席が埋まっているよう

な状況でした。金曜のこんな晩にそんな理想の相手なんかいるわけ

がないじゃないの?私はそう思いながら、財布を開くと、3千円支

払った使ったことで、レストランで食事ができなくなっていること

に気づきました。そんないい加減な金銭感覚になっていたのです。

でも、とりあえずどこかの店に入ろうとカフェバーに入りました。

楽し気な笑い声が耳に一斉に入ってきました。すぐにウェイターさ

んが「お一人ですか?」と聞き、「はい」と、私はか細い声で答え

ました。すぐ、学校の机のような大きなテーブルに案内されました。

そして渡されたメニュを広げて、空虚な気分で眺めていたのです。

また先程ウェイターがやってきたので、私は一番安いものを指さし

て、「これを」と言うと、パンケーキが来ました。私は水とパンケ

ーキを食べながら、読みかけの本のページを開いて読んでました。


            


 ふと、目を上げると、そこに若い男性が立っていました。まあま

あのイケメン。「すいませんが、相席お願いしてもよろしいでしょ

うか?」私は慌てて「あ、どうぞ」と言いました。いつも安い食べ

物屋さんで食べていましたので、相席は慣れっこでした。私はその

時、もしや?と思ったのです。「あの占い師さんが言っていた、そ

の人かも?」しかし、その人はもう一人の女性を手招きすると、二

人で食事を始めました。最初の夜はこうして終わりました。


            


 そして、次の日も、その店に行きました。無職の身には辛い出費

でしたが、私は毎日、その店に通い、本を読み、常連のようになり

ました。他に行く場所もなく、だれかの意見にすがるしかなかった

のです。親の反対を押し切って、留学し、帰国子女に有頂天になっ

て贅沢をしたあげく、貯金もなく借金だけ背負って失業したのです

から。それから、31日目のクリスマスイヴの前の日、そのカフェ

で出会ったのが、今の夫です。


            


 イケメンでも高学歴でも、長身でも、裕福でもないけれど、敬虔

なクリスチャンでした。その翌日、一緒に教会のミサに行ったので

す。そして、その同じ教会で、1年後、結婚しました。それから私

は一念発起して、真面目なサラリーマンになりました。そして20

年勤め上げ、昨年、独立してフランスとの懸け橋をする仕事を始め

ました。


            


 今でも、あの夜の占い師のことは忘れられません。あの占いは、

当たったといえるのか、しかし、一か月、ひとりで毎日通いつめれ

ば、いつかは誰かかと出会うものとも言えます。どちらとも言えま

せん。そこで、私は今、ふたつの気づきを先輩として助言したいと

思います。ひとつは、運とは、積み重ねだということです。何かを

達成しようと思ったら、まず、同じことをずっと続けること、そし

て、ふたつ目は、誰かが自分のことを思って、助言をしたら、その

人は神の使いだと思うことです。普通の人間の恰好をしているので

す。サラリーマンの恰好をしていることもあれば、浮浪者のような

恰好をしていることも、あるいは、占い師のような恰好かもしれな

いのです。神様はイエスキリストのような伝道者のような恰好で現

れるわけではないのです。私がみなさん、お若い方にお伝えしたい

のは、この2点だけなです。本日は、ご清聴、誠にありがとうござ

いました」演説者は拍手を浴びながら演台を降りて、控室に直行し

た。


            


 しばらくして、控室にノックの音がした。まだ興奮気味の演説者

の心臓はドキンとした。すぐに椅子から立ち上がると、勇気を振り

絞って、「どうぞ」と言った。静かにドアが開いて、老齢の神父が

立っていた。演説者は心臓の鼓動を抑えるかのように、固く手を握

り締めていた。


            


 「お疲れ様でございました。まことにすばらしい演説でした」

「そうでしょうか?こんな不敬虔な私のお恥ずかしい過去をお話し

して、若い方に伝わるかものか、心配でした」「いいえ、十分に伝

わったと思います」そう言うと、神父は演説者に椅子に掛けるよう

促した。


            


 「実は私も似たり寄ったりの経験をしていますから。私も若い頃

は迷い、悩み、そして最後は占い師に自分の行く末を相談したんで

す」「ええ?ほんとですか?」「はい。そしたら、『教会へ行きな

さい』と言われましてね」「教会へ?」「ええ、まあ、私もその年、

初めて、イヴのミサを経験しました。結局、この道に進むことにな

りましたが、実は、30年ばかり後でわかったことがあったんです」


            


「わかったこと、ですか?」「ええ、その占い師は神父が副業で人材

確保のためにやっていたそうだったのです。だから、私も今では、

占い師を見ると、神父に見えてくるんですよ。ははは。まあ、考えて

みれば、お告げを代弁するのですから、神の使いと同じことですね」

老齢の神父は厳かさを保ちつつ、ぽかんとした顔の演説者を残して部

屋を後にした





   




上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。



p.s.1


 ここ、30年、イヴ=ギフトラッピング。

しかし、高校生2年生まで、プロテスタントの教会で

キリストの生誕の劇をしていました。懐かしい思い出です。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2025年11月号へ。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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