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リサコラム
連載1000回
      本日のオードブル

『千夜と千日』

第1話

「日の出」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





クロード・モネの

『印象ー日の出』は

その後の印象派という絵画の手法を

産むきっかけの代表作となったそうです。

模写するとそのタッチの

勢いがわかります。



 



第1話 「日の出」




 「『日の出見る日は、この月に限る』なあんてね。ご来光なんて、

久しぶりだな~」千夜は背負ったリュックを岩の上に下ろすと、

つぶやくように言った。そして、横に並んで水平線をじっと見つめて

いる千日の横顔をちらっと見て、「いいね~、日の出。生きるのに

疲れた時は、初日の出をみるべしかな?」とまたつぶやいた。千日

は視線に気づいて、小さくうなずいたが、くちびるを動かすことも

なく、じっと、赤い光を見つめていた。


            


 千夜はだらっと垂らしていた腕を組み、またほどいて、次に頭を

掻いて、さらに腕組みをしてから、またぶつぶつとつぶやき始めた。

「人は生まれた時から、その日が無為に暮れるのを恐れて、必死で生

きているのか?それとも、次の日の出までの間、必死に動いて、食べ

て、時間つぶしをしているのか?」千夜の問答のような問いかけに

も、千日はまばたきすることもなく、じっと水平線を見つめている。


            


 千夜はまた、千日の方をちらちらと見やりながら、また、腕組み

をしたり、背伸びをしたり、肩を回したりしながらも、哲学的つぶ

やきを続ける。「ならば、人は、なぜ、1年の始まりに日の出を見

に来るのか?自己実現を果たした成功者が言うセリフのように、『

さあ、やろう!さらなる飛躍を目指して!』と、自分を鼓舞するた

めなのか?千日は、どう思う?」


            


 「ああ、ふぅ~、ごめん、息止めてた!」千日は、千夜の顔に笑顔

を向けてから、両手を頭の上で組んで大きく背伸びした。「ああ~、

この瞬間に出会えてよかった。ただ、それだけ!」と、うるうるし

た瞳を千夜に向けた。


            


 「へ~、そう?僕にはそうは思えない。日の出はきれいにはきれ

いだけど、よかったとか、頑張ろうって気にはなんかならないね。

しまった、また、一日が始まっちまったよ!って感じしかしないよ

ね。一日が始まったら、また、終わりが来る。そして、また、別の

一日が始まって、またその日の終わり来る。僕には、一日の終わり

までの間を、退屈しないために必死になって暇をつぶしてるだけの

ような気がしてるけどね、どう?」


           


 その問いかけにも、千日は、海面から上がってくる赤い光の、

その一瞬、一瞬の光景を見逃すまいと、息を殺して、じっと見つめて

いる。そして、ふっと息を吐いてから、「ごめん、私ね、モネの絵

のことを思ってたの」と言った。「あの有名な絵よ、『印象―日の出』

っていう。その絵を展覧会で初めて見た批評家が、子供の落書き

だとか、雑な描きかけの絵だとかって酷評したらしいけどね、

確かに雑に、ささっと描いたように見える絵には違いはないんだけ

ど、見た一瞬の感動を急いで描きたかったんだと今ならわかる。だ

って、刻一刻と太陽は上がって来るし、それにつれて空の色だって

変わるでしょ。舟も動いているし、影も動くし、その一瞬の感動を

すばやく、必死に写し取ったんだって、今、よくわかった。写真を

撮って、アトリエでゆっくり時間かけて描く絵とは違う、一瞬の感

動がこもってる、だから、伝わる人には伝わるってこと。一瞬の感

動だからいいのよ。ずっと感動しっぱなしはないから。そんなのは

、感動って言わないし。さっき、千夜が言ったみたいに、1日の始

まりと終わりの間を何とか、退屈しないために、みんなが必死にな

って何かしてるんだと思う。その中で、一瞬でいいから、感動する

瞬間があれば、人間は幸せと、その余韻の癒しを感じるんだと思う

わ。そう、もし、病気でもなく元気な人が、お正月、ゴールデンウ

イーク、夏休みに外出も許されず、刺激もなく、ベッドでじっとし

ていなくちゃならないって言われたら、どうなるかしら?退屈に耐

えかねて、精神的に病んでしまうかも。一日のうちでほんの一瞬だ

け、ほ~っと感動する瞬間があれば、健全に生きていける。そのた

めに、人は生きてるのかも。だから、千日続けて、日の出を見てる

人と、千日に1回だけ日の出を見た人の感動のレベルは全然違うと

思う。もしかしたら、その感動を質量で計ると、そのふたつの質量

は同じじゃないかしら。だから、モネの『印象―日の出』にはその

膨大な質量の感動が一気に入り込んでて、見る人にそれが伝わるん

だと思う」


            


 
じっと腕組みをして聞いていた千夜は、「なるほどね」と言った。

そして、付け加えるように、「ずっと抑圧されていた方が感動は大

きいってことだよね、わかるよ、言いたいことは」と言ってから、

リュックの脇に腰かけた。「ひとことで言うと、こんなことだと僕

は思う。人間は退屈から逃れるために生きている。だって、よく言

うよね、現役時代に仕事に忙殺されていた人がやっと人生の第2幕

が来て、何もせずに、一日、ぼうっとしていられるって喜んでいた

けど、いざそうなると、何もしなくなったがために、一気にぼけ始め

るんだって。それまで、日々、必死に悩み、苦しみながら、

忙しくしていたのは、実は退屈という、敵から身を守るためだった

んだって


            


 
「と、いうことはよ、」千日は千夜を遮るように、口を挟んだ。

「人間の最大の敵は、暇があって、何もすることがない状態ってこ

とになるよね。何もない砂漠か、宇宙空間にひとり取り残されて酸

素と水と食べ物だけで生きなさいと言われたら、もう生きていられ

なくなくなると思う」「ああ、そうかも。きっと。そこにあるもの

は孤独と退屈。人間だけが味わえる感動なんてないしね…うん…感

動って得難いものなんだね~」「そうよ、だから、そう簡単に得ら

れないように、苦しみや悲しみが多いんだと思う」


            



 「さあ、初日の出も時間が経てば、ただの太陽、感動を持ったま

まで帰るとするか!」千夜は千日の手を取った。


 そうして、また次の千夜、千日が始まるのらしい。




   




上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。



p.s.1


 2006年9月20日に第1回を書き始めて、

それ以来、毎週、拙いのもを書き続けて、

今回で、千回目となりました。

次なるターゲットは2千回でしょうか、自然にゆけば…



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2026年1月号へ。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































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-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
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