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リサコラム
連載819回
      本日のオードブル

2CVと過ごした夜

第7話

「ホテル・ノルマンディー」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



ホテル・ノルマンディー
北フランスにある
19世紀にできた
イギリスの
チューダー
様式の
外観の
ホテル
内装は
フランスの
伝統的な
壁紙
トアル・ド。ジュイ
白いベッドリネンが
中庭の緑に映える
美しいホテル


 



第7話「ホテル・ノルマンディー」


 

 「クロード・ルルーシュの監督映画、『男と女』って、きっとご存

じじゃないですよね。お若いから」今度は、2CVに関する自分の

話をしたいと実はうずうずしていた私はカフェ2CVのオーナーの話

がひとしきり終わると、こう、問いかけてみた。


            


 もう50年以上も前の映画で、フランスの恋愛映画の金字塔などと

言われた伝説のラブストーリーではあるが、30そこそこの若者がこ

んな古い映画を知るはずはあるまいと思ったからだ。


            


 
彼は想像通り黙ったまま、ぽかんとした表情を浮かべていたため、

ちょっと探りを入れながらも、さて、この金字塔のラブストーリーの

どこから始めたら、彼の興味を惹くのかと考えながら、とつとつと

話し始めた。


            


 
もちろん、この映画の話を始める理由は、今日初めて会ったこの彼

との共通点、つまり、二人ともシトロエン2CVのオーナーであると

いうことだから、映画の中に2CVが出てくるに決まっている。しか

し、このラブストーリーはそう軽々しく語ることができない理由があ

る。そのひとつには、私のこの映画に並々ならぬ思いがあるというこ

とだろう。あまりに思い入れが強いと、かえって語れないものなの

だ。実際、私は、舞台となったホテルにこの映画の面影を慕って宿泊

したことさえある。もちろん私だけでなく、多くのファンが訪れる有

名なホテルなのだが。


           


 そのホテルはホテル・ノルマンディーと言った。今は多少名前を

変えてはいるが、当時のままの姿でフランスの海辺のリゾート地に

立っている。そう言うと、カンヌ、ニース、そしてお隣のモナコを

思い浮かべるのが普通だろう。しかし、そこはノルマンディー上陸

作戦で有名な北フランスのノルマンディー海岸に面した、ドゥーヴ

ィルという場所にある。19世紀の半ばから富裕層、ブルジョアの

避暑地として開かれた場所で、かつてシャネルが帽子店を開いたこ

とでも知られているリゾート地なのだが、カンヌ、ニースという

南フランスの明るく陽気なという形容とは少し違う、落ち着いたスノ

ッブな雰囲気も漂っていた。


            


 ホテルはイギリスの影響を受けたノルマン・チューダー様式と言

われる木の梁や柱が目立つ外観で屋根はスレートの三角屋根だっ

た。当然、ビーチリゾートなのだから、夏には多くの観光客が訪

れるのだが、冬に撮影された映画『男と女』のおかげで、

1.4kmに渡って続くホテルの前の砂浜でドーバー海峡を渡って

くる冬の冷たい風をほほに受けながら犬を散歩させる姿が似合うよ

うになったのだから、スノッブとしか言いようがない。ちろん、

撮影に使われた部屋は今でもそのまま残されている。


            


 
主人公は妻に自殺されたカーレーサーのジャン・ルイ、俳優は

名優ジャン・ルイ・トランティニャンという。そしてもう一人が、

スタントマンの夫に先立たれたアンヌ・ゴーチエ、女優はアヌーク

・エーメという美しい女性だった。寒風吹きすさぶ砂浜にカモメが

舞い踊り、そこで男女二人とそれぞれの子供が波と戯れるのだが、

モノトーンの大人の香りあふれるこの砂浜でのシーンがあまりに

美しく、もちろん、『男と女』の映画ファンであれば、好きに決まっ

ているのだが、だから、このシーンを語るときは、かなり自分をセー

ブする必要がある。


            


 
そして、恋愛映画の常道として、男女の互いの過去の思いが交錯

し、そこにすれ違いが生まれ、ストーリーが展開してゆくのだが、

この映画が深みを増したのは、『男と女』が封切られてから53年

後の2020年、同じ監督、俳優たちで53年後がラブストーリー

タッチで語られたというところにある。


             


 
主人公のジャン・ルイは老人ホームにいたが、かつての恋人のアン

ヌをずっと慕っているということを知った息子がアンヌを探し当て、

そして再会させる。80歳を過ぎ、車椅子に乗ったジャン・ルイはア

ンヌを乗せて海辺までドライブをするのだが、その車がなんと、

2CVなのだ。私はこの53年の時間をつなぐ空白の時間を映画評論

家のような顔で、きっとそう見えたとい思うが、フランス映画独特の

哀愁とセンスを込めて無事に語り切った。その間、頷きながら黙って

話を聞いていた彼は、私の話が終わると、「ダバダバダ、ダバダバ

ダ、ラララ、ダバダバダ、ダバダバダ~」と小さな声で鼻歌を歌い始

めた。それは1966年の『男と女』の映画で世界中に知られるよう

になったメロディだった。


            


 「存じだったんですか?」私はあっけにとられて彼の顔を見た。

それならそうと言って欲しかったと私は思った。ひとり悦に入って

しゃべってしまったからだ。


            


 「ええ、ちょっと。2CVが出てくるシーンなら何でも。今は結構

簡単に調べられますから。でも、主役のジャン・ルイ・トランティニ

ャンがつい先日、亡くなりましたから、これからより一層、話題にな

るでしょうね。私はそれを懸念しているんです」


            


 
「懸念って?どんな懸念です?」彼は少し悲し気な表情を浮かべる

とこう言った。


 「2CVのファンが増えることを懸念しているんです」と。



   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

 映画『男と女』の53年後の『男と女』、
まだ観てはいません。2CVが最高に似合うシーンのようです。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2022年6月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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