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リサコラム
連載825回
      本日のオードブル

花を持って歩く7人

第5話

「世界の終わり」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




お城のようなアーチが
通路にできました。
レッドカーペットも
敷かれました。
壁には文字が
えっ?
世界は
終るの?
ウソでしょ?



 



第5話
「世界の終わり」




 2022年の春、やっとパンデミックも収束へ向かうと思った

矢先、ヨーロッパで勃発した戦争は長引くパンデミックで疲れ果てて

いた世界中の人々に、「ああ、この世界も終わりに近づいているの

か」と思わせたことだろう。もちろん、この私もそう強く感じた

ひとりだ。


            


 これでますます、ヨーロッパ旅行は遠のいてしまった。日本人は

特にアメリカ大陸よりヨーロッパへの旅を好む。民主化されたヨー

ロッパの国々は過去に排斥した王や貴族が作り出したおびただしい

数の遺産を糧に生計を立てているという矛盾は感じつつも、美しい

建築物、城、庭園、芸術に旅行者は知的好奇心をくすぐられる。


            


 
それにもましてビールに、ワインに、シャンパンに合うアートな

料理を堪能できるとなれば、たかだか250年の歴史しかないアメ

リカでは得られないヨーロッパの芳醇な奥深さを体感できる。


            


 そんな垂涎の旅行先にこれほど長く旅行者を送ることができなかっ

たことはないだろう。それでも神は、さらに人間の忍耐と英知を試し

たいとでも言うのか、パンデミックと戦争だけではもの足りないよう

で、こんな時に、天災というさらなるダメージを与えるようだ。


            


 今、フランスを強烈な熱波が襲っている。日照りによる干ばつで

ぶどうが枯れているのだ。今年のワインはどうなるのだろうか?私は

日々、気が気ではない。グランクリュのワイン畑は無事だろうか?

ボージョレー・ヌーヴォーは高値がつくのだろうか、あるいは、品

質が低下するか、ボルドーのぶどう畑が壊滅的被害を受けたらどう

なるだろう?それも今年だけの話しではない。温暖化がますます加

速すれば、今後、ぶどう栽培をやめざるを得ない農家も出てくるだ

ろう。そうなると、ボルドーのワインカーヴを巡るツアーは次第に

寂しくなってゆくだろう。5年後、10年後にはなくなっているか

もしれない。南フランスのツアーの目玉は、ニースとカンヌだけ

か?それなら、冬はどうする?


            


 
私はフランスの熱波、干ばつのニュースを見るにつけ、ここ数週間

はそんな悪夢のような想像が私の頭と言わず、体中を跋扈(ばっこ)

する。そんな私の癪に障るのは、近所の花屋の相変わらずの盛況ぶり

だ。私の店の前を、花を抱えた人の行き来が絶える時間帯はない。憂

さを晴らすなら、旅行でも行った方がよほどいいと思うのだが、花を

買う彼らの感覚を私はまだよく理解できない。


            


 そして今週からはさらに不穏な動きがみられた。パリのギャルソン

を意識しているのか、その花屋のスタッフはみな黒くて長いエプロン

をしているのだが、女性3人、男性3人が通路に道具を持ち出して、

何かを組立て始めた。


            


 けっこう大がかりなそれは、白い鉄の柵のようなもので、2日目に

は左右の鉄の柵がつながってアーチになった。バラのアーチでも作る

つもりだろうか?しかし、バラの季節は終ったはずで、来年の仕込み

なのか?こんな通路に勝手にバラのアーチなんて作っていいものか?

どこかの許可を得たのか、それとも近所でイベントが行われるのか、

いや、そんなことは聞いてはいない。こんな小さな流行ってもいない

古臭い、旅行代理店なんて蚊帳の外というわけだろうか?私は妬まし

いという感情が根深い不安をどろりと取り囲み、そして彼らといえ

ば、緑の葉でアーチを取り囲んだ。もちろん、フェイクな葉に違いな

などと思いながら私はじっとギャルソン風のスタッフがやるこ

とを眺めていた。次にアーチの下にレッドカーペットが転がされた

のには驚いたが、さらに私の心臓を鷲掴みしたのは、白いチョーク

かペンキのようなもので壁に書かれたフランス語の1文だった


            


 
「ス・ネパ・ラ・ファン・デュ・モンド 

Ce n’est pas la fin du Monde.)」私は拙いフランス語の知識しか

持ってはいないが、この言葉だけは一度、見聞きしたことがあった。そ

れはパリで添乗をした時、30人のお客さんを連れてルーヴル美術館に

行ったときのことだった。


            


 
その前日、情報を確認していなかった私の大失敗なのだが、

なんと、ストライキで休館だったのだ。しかもストライキは4泊6日

の全工程に及ぶことが明らかにされていた。右往左往していた私の前

であるひとりの若い男性が壁に落書きされた文字を指さしていた。

それが「ス・ネパ・ラ・ファン・デュ・モンド」と書かれていたの

だ。私はその言葉を後で調べてみた。直訳すれば、『それが世界の

終わりではない』という意味で、落ち込んだ人を勇気づける少々、

大げさにも聞こえる言葉なのだが、ルーヴルの壁のその落書きを私

は一生忘れることはできないだろう。


            


 ということは?私はあの時のはずかしさ、落胆、『それが世界の終

わりではない』と言われてもという感情を思い出していた。あの時

と今ではどちらが世界の終わりに近いか?そう考えたとき、今の私は

あのツアーの時ほどではないような気がしていたのだ。


            


 
「『それが世界の終わりではない』か、なるほど。一体、これか

ら何が始まるのか?見てやろうじゃないか!]





   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

 Ce ne pas la fin du monde.
フランス人はかなり大げさな表現をするんだなと思います。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2022年8月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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