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リサコラム
連載827回
      本日のオードブル

花を持って歩く7人

第7話

「最後に花を持って
歩くひと」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。甘いものは苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家はロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




どんなに
大変な時も
家をきれいにして
おけば乗り切れる。
失敗しても、怒られても
家にお花をたくさん飾って
家で癒されれていればいいん
じゃないの。




 



第7話
「最後に花を持って歩くひと」




 パンデミックの直前まで、私の仕事は主にヨーロッパへのツアー

で、多忙な日々だった。主にイタリア、フランス、スペイン、

ドイツだが、それもほぼゼロになって3年半近くになる。



            


 
私は壁にかかった古いヨーロッパツアーのポスターをはがしな

がら、旅行どころではないのに、なぜ花が必要なのか?なぜ、

あの花屋はこんな時に次から次へと新しいプロモーションを打

ち出すのか?そんな湧き上がる思いを打ち消そうとしていた。

しかし、3枚4枚、10枚と見なれた古いポスターをはがす頃

には気分も少し晴れてきた。そしてすべてポスターをはがした

あとの壁にはその形に汚れが縁取りを作っていた。


            


 
「壁を掃除するしかないな」私ははがしたポスターを折りたたんで

紙資源のリサイクルボックスに入れたあと、今まで使ったことなかっ

た洗剤をやたらに壁にスプレーしてブラシでゴシゴシこすり始めるこ

とにした。すると壁の汚れは気持ちいいくらいに落ちていった。

そうなると次第に掃除モードも気分も上がり、私は次に書類ケースや

雑多なものがぎゅうぎゅうに詰まった棚、書棚、冷蔵庫まで動かして

壁の汚れ落としにはまり込んでいた。


            


 
約1時間半、壁磨きを続けた結果、薄グレーだと思っていた壁が

真っ白に変わった。「洗剤とは、すごいもんだな~」私は妙に感動

しながら回りを見渡すと、次に壁から外すために棚から外していた

書類ケースや宣伝入りのクリアファイル、プロモーションのノベルテ

ィ、中には錆びた懐中電灯、いつからあるのかわからない食品、雑多

な紙や壊れたプリンターまで数多くものが積み上がっていた。それに

かなり前のパンフやカタログが詰まった分厚いファイルもおびただし

い量あることに気づいた。


            


 
「これ、ほぼ全部、ごみだな」私はため息とともに、この機会に

整理と処分をするしかないと思った。「これが、断捨離か~」そんな

言葉を吐きながら、私の自宅マンションの物入れを思い出した。


            


 
そこには10年前に越して来たのだが、未だに押し入れには整理が

ついていない書類、古い雑誌の数々、何が入っているか不明な段ボー

ル箱が5,6個ある。それは、いつかやろう、時間ができたらと思っ

ているうちに1日が1週間になり、1年になり、10年になったもの

だった。それでも引っ越して2、3年間は見れば、いやな気分になっ

ていたが、次第になんとも思わないようになり、それが普通になっ

た。これがいわゆるマンネリのドツボというものだ。しかし、マンネ

リズムに気付かなかったこの小さな旅行代理店なんて、まったく眼中

にないように、近所の有名な花屋は次々とプロモーションを打ち

出し、繫盛している。そう思うと私は一気に焦りと不安に苛まれ

た。「どうせ暇なんだから、誰も手伝ってくれはしないけど、

一気に処分するしかないな!よし、乗り掛かった舟だ。片付け

よう!」そんな気持ちになったことはない私が一気に片付けモード

に入った。私は集中しようと思えば集中できるんだよ。そんな言葉

も頭に浮かんだ。


            


 
それから丸1日、私は整理に没頭した。気づけば花を抱えた人が

帰宅する時間になっていた。その間、だれもやって来ないオフィスで

黙々とリサイクルごみと処分ごみの山を築いたことになる。今では紙

の書類、パンフの類は必要性が極めて低いのに、今まで、私たちの店

は何を大事に抱えこんでいたのだろうかと大きな疑問が湧いてきた。

あの花屋がやっている絵になるような気持ちいい店、空間にしない限

り、お客さんは戻ってきてはくれないのかもしれないという思いにも

突き動かされていた。


            


 
断捨離を終えた店のカウンターの上には小さな立て看板が2つ、

キャビネットの上にはファックスと電話だけで白くなった壁が際立っ

て見えた。すっきりした店とオフィス、それは初めてみる光景で、

初めて味わう、清々しい気分だった。


            


 
「花を飾ろう!」私がふいに思いついた。私はさっきキッチンの

下で見つけた大きなガラスの花瓶を思い出して、あの花屋に足を運

んだ。とは言え、花屋に慣れていない私はどの花を何本くらい選ん

だらいいかもわからなかった。そこで私は花瓶を取りに帰り、花屋

のスタッフに頼んでアーティスティックに美しく活けてもらうと、

店のカウンターの上に置いた。


            


 それは、何かみずみずしい生き物が店の中にやって来た感覚だっ

た。「写真に撮ろうかな~」そんな思いがふいに浮かんだ。今まで

自分の働く店を写真に撮ったことなど一度もなかった。そんな被写

体ではなかったからだろう。「いい気分になれる空間じゃなきゃ、

人はやって来ないんだよね」私はパンデミックから3年半たって気

づいたが、花屋はとうの昔に知っていることだった。「あの花屋の

素晴らしいプロモーション力を借りれば…」自分ひとりでは無理で

もコラボすれば何かできるかもしれないと私は思いついたのだ。

コラボならこれまで経験があったから私は花屋とコラボするための

方法とメインテーマを探し始めた。


            


 
3日後、やっと思いついたタイトルが、“Voyage et Fleurs”

(ボワイャージュ・エ・フラー)「旅と花」だった。美しい景色

を求めて人は旅するように、「旅のない人生はつまらない」、

「花のない人生はつまらない」というサブタイトルを付けたら

どうかと。


            


 
次の日から私は店に飾る花を買いに花屋に足を運び、もちろん、

家に飾る花も買い、そうして顔を覚えてもらい、常連と言われるま

でになった時、イラストレーターに依頼しておいたイメージイラスト

を花屋の店長に見せて私のアイデアを持ちかけた。数週間後、ミーテ

ィングを持ってもらうことができ、それからも回数を重ねて、ようや

く、今の店はオーナーに任せ、自分の店を花屋の一角に出すことが

できた。


            


 それから半年が経ち、私の店にも常連客ができた頃、私はフランス

語のいいことわざを見つけた。「不幸も何かのためになる」

”Quelque chose malheure est bon.” ケルクショーズ・

マロー・エ・ボン)パンデミックで世界から厄介者扱いされた私が

ようやく立ち直れたのも、パンデミックのおかげだなんて、ちょっ

と笑うけど、これはまさしく私のことだった




   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

どんなに大変な時でも
家を整えておけば乗り切れる。
失敗しても、怒られても、家で癒されておればよい。
実は私の信条なのです。
花を育てるのも、部屋に飾るのも
そのひとつだと思っています。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2022年9月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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