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リサコラム
連載842回
      本日のオードブル

私とフランス語と
インテリア

第8回

「語学の天才は
フレンチシェフ」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。



丸い
テーブルに
白いテーブルクロス
食器もすべて白です。
椅子はボルドー色
バラの花の色も
合わせました
メニューは
クロワッサン
サンドとコーヒー。
これでも十分にフレンチでしょ?


 



第8回
「語学の天才はフレンチシェフ」




 フランスに行ったら、必ず何度も聞くことになる音のつながりが


あります。それは、“ウッホ”というカタカナでは書き表しにくい妙な

(?)音。€ユーロeuroのことです。


            


 日本語式にユーロと言っても通じませんから、euroの最初の“eu”の

音節は“ウ”の口で“ユ”と発音し、次にすぐ、水なしでうがいするつもり

で、“ro”を発音するとフランス語のeuroに近い音になります。この

r」の発音は例えが悪いのですが、喉につかえた痰を吐き出すような

嫌な音とも言えます。フランス語初心者はこのちょっと気恥ずかしく

難しい「r」の音を出せるようになるのが最初の一歩なのです。


            


 しかし、euroがちゃんと言えるようになっても買い物は常に1ユー

ロとは限りませんから、例えば、2ユーロはdeux eurosですから、

deuxの最後のxとeuroseがリエゾンして、”ドゥゾホ“と発音され

ます。こんな感じで話し言葉としては発音しない単語の語尾の子音は

次の母音とリエゾンする場合がほとんどです。


            



 ”ドゥゾホ“、私にはとても美しい音には聞こえないのですが、

ある時、私たちのアメリカ人の先生がこういったことがあります。

「フランス語は歌っているみたいで、きれいだね」と。フランス語

は美しいとよく言われます。しかし、フランス語でレゼタジュ二

les États-Unis)と言えば、アメリカのことですが、the United

states
の発音の方が私にはかっこよく聞こえますし、私はフランス

語学科の学生の頃、フランス語が美しいとは一度も思ったことがあ

りませんでした。英語の方がよっぽど美しいし、いや、日本語のほ

うがもっと美しいんじゃないかな?とも思っていました。フランス

語が世界で一番美しいと言ったのは、きっとフランス人だろうと思

います。それくらいフランス語の発音に苦しんだのだろうと思いま

す。前にも述べたのですが、フランス語学科であってもフランス語

が嫌になるのはこの発音と複雑な文法だと思います。



            


 同じ事はドイツ語など、ヨーロッパの他の言語にも言えると思

いますが、大学1年生から2年生まで住んでいた下宿のお隣の部屋

の女の子はドイツ語学科でした。お父さんは広島の大学の先生だっ

たようです。しかし、彼女はドイツ語がどうしても合わない、嫌い

と言うことで、大学にはほとんど行かず、下宿から予備校に通いな

がら浪人生活を送り、翌年、青山学院大学の英文科を受けて合格す

ると引っ越してしまいました。しかし、彼女は特別ではなく、そん

な学生は他にもいました。英語以外の外国語を真剣に勉強してもそ

の語学を生かせる就職先がごくわずか、いえ、ほとんどないとわか

ると、学んでも意味がないと、最初から大学は卒業証書をもらうた

めに行くだけでいいという冷めた雰囲気が蔓延してきていました。


            


 そんな大学3年生の後期の授業が終了した春休みに、各大学から

1、2名、合計30人ほどの学生を選んでフランス語の集中セミナ

ーが開かれるということを知りました。私は早速、卒論担当の先生

に推薦状を書いていただき、行くことになりました。それは八王子

の山の中にありました。バンガローのような戸建て形式の部屋が点

在し、そこに2人一組で寝泊まりしながらフランス語だけの約2

間を過ごしました。そこで得たものは非常に大きかったと思います。


            


 講師陣はNHKのラジオやテレビのフランス講座を担当されている

ような方とそのアシスタントの方ばかりでした。そんなフランス語

漬けの集中講座にひとり中央大学の法学部の学生N君がいました。

その他の学生は当然、フランス語か、あるいはフランス文学部の

学生です。なぜ、そんなセミナーに法学部の学生が来るのだろう

か?そもそも、学ぶ必要があるのだろうか?しかも、N君は驚いた

ことに授業中、全く上の空な顔で聞きもしないどころか平気でグー

グーいびきをかいては寝ているのです。ほんとに気が気でなかった

のですが、しかし、議論の時間になるとN君は流暢なフランス語で

フランス人の先生と十分に渡り合って難しい話をするのです。だか

ら先生も誰も何も言えませんでした。しかも、N君の得意はフラン

ス語だけではなく、中国語も英語もほとんどネイティブ並みにしゃ

べれたのです。さらに、お昼休みの度、東大のフランス語の先生方を捕

まえては、「どこどこの石油のパイプラインは…」などと、全く専

門外の議論を吹っ掛けますから、先生さえ、N君を敬遠していたほ

どでした。


           


 そしてある時、ひとりのフランス人の先生が、N君をこらしめよ

うと思ったのか、「フランス語の1番長い単語を知っている人はい

るか?」と学生たちの顔を見てにっこり笑いました。するとさっき

まで上の空で聞いていたN君がさっと手を挙げて、さされる前に教

壇に上がり、3メーターほどもある黒板の左端から右端までぎっし

りとアルファベットの連なりの一文字を書いたのです。フランスの

小学生でも習うレベルでは、anticonstitutionnellement(アンテ

ィコンスティテュショネルモン=憲法違反の)という長い単語が

ありますから、先生はそれを意図していたようなのですが、N君

が書いた単語はさらに長い化学式のような単語でした。そんな言葉

は今ならネットで簡単に調べられますが、その当時はインターネット

のない時代で、どうやってそんな言葉を知ったのか分かりません。

今、ネット検索すれば、おそらく彼が書いたのはこんなような単語

だったのではないかと推測していますが今はもう覚えていません。

aminométhylpyrimidinylhydroxyéthylméthythiazolium

(意味を知りたい方は、ネットで検索して下さいませ。) 


私は、その時、この世には語学の天才がいることを知りました。


            


 
そんな語学の天才N君はちょっと人を馬鹿にしたような辛辣な言葉

をいつも吐いていました。見た目はちょっと太めでフランス的なセン

スがある感じではありませんでした。どんなすごい天才といっても性

格が悪くちゃね、とか、センスがなくちゃね、なんて負け惜しみのよ

うなことを思っていたのですが、セミナーが終わってそれぞれが学校

に戻ってしばらくした後、N君は自分の誕生日パーティーの招待状を

そのセミナーに参加した学生、先生みんなに送って来たのです。私の

アパートのポストにも入っていました。見ればその招待状はエンボス

の豪華なグリーティングカードで、中はフランス語で書かれていまし

た。フランス語のタイプライターで打たれたその招待状を見た時、全

体から醸し出される雰囲気と語彙のセンスに驚きました。さらに出欠

のカードと記念切手が貼られた返信用封筒も同封されていたのです。

後日談では、N君の家は上野にある大きな家で、友人たちに自分の手

料理、しかも、フランス料理でもてなしたとのことでした。


            


 N君は法学部の学生でありながら、語学、政治、経済などあらゆる

分野まで垣根なく貪欲に学ぼうとする人でした。これをやって将来役

に立つか?立たないか?立たないなら適当にしておこうという精神の

人間はN君にとって蔑むべき人間だったのだろうと思いました。社会

に出て、こんな人が同じ組織にいては到底、勝ち目はありません。


            


 さて、N君のその後はわかりませんが、フランスに行って弁護士

になって、中国人、アメリカ人、イギリス人の弁護をしているので

しょうか?きっとドイツ、イタリア、スペイン語もらくらくマスター

しているでしょう。友人をフランス料理と議論でもてなしているか

もしれません。あるいは世界中を股に掛ける自由人になっているの

かも。


            


 こんな見返りがあるから、これを学ぶ、役に立たないなら学ばない

という意識を捨てることができたのは、実はN君のおかげなのです




   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

 今考えれば、N君の誕生日会に行っていたほうが
よかったかもしれません。(笑)


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2022年12月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
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 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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