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リサコラム
連載845回
      本日のオードブル

私とフランス語と
インテリア

第11回

「ホテル・ロータス」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




ドアを
開ければ
大理石の床に
ヤシの木の鉢植え
左手にはガラスの壁で
仕切られたバスルーム
さらに奥は
どうなっているのでしょう?
そこは禁断の場所、桃源郷です。
逃げ出すためのロープはしっかり
にぎりましたか?それならどうぞ存分に






 



第11回
「ホテル・ロータス」」




 早くも学生時代に世の中にはハイソなホテルライフがあることを知っ

たおかげで、仕事を始めてからは都内の外資系ホテル、リゾート、

特にプーケットやバリなどの近場のビーチリゾート、ひとりでも安心

なシンガポールの老舗ホテルに宿泊するのを目的に2、3泊の旅行を

度々していしました。まだスマホもなく、ケイタイ電話は通信主体の

時代のことですから、見かけのいい本を数冊持って行って、高級ホテ

ルのプールや、ビーチリゾートのデッキチェアに寝っ転がって、ゲス

トがみな、これ見よがしに本を開くというリゾートの優雅な習慣に、

分不相応にもはまってしまったのです。しかし、庶民が貴族的な習慣

に憧れて真似るのは今から130年前からあったようです。


            


 舞台は19世紀末のニューヨーク、ブロードウェイにある高級ホテ

ル、「ホテル・ロータス」。賑やかな街中にあっても、静かな避暑地

のようなそのホテルに、毎年、1週間滞在しにやって来る若い貴婦人

がいました。名前はマダム・エローズ・ダーシー・バーモンというい

かにも貴族出身のような長い名前の若い女性です。エレガントなドレ

スをまとい、立ち居振る舞いのすべてに完璧な貴婦人のオーラを立ち

昇らせながら彼女がロビーの螺旋階段を降りて来るとき、スタッフは

みな、にこやかに、そして気品ある婦人に見合うようにちょっと緊張

の面持ちで挨拶をし、言葉を交わします。上流階級の貴婦人のような

気品を漂わせつつも、謎めいた彼女は、ホテルスタッフからも一目置

かれる存在でした。しかし、実は、マダム・バーマンは、本名ではな

く、ディスカウントショップの靴下売り場の店員だったのです。彼女

は夏の1週間をこのホテル・ロータスで過ごすために1年間、倹約に

倹約を重ねる生活を送っていたのです。


            


 蓮の花をイメージするホテル・ロータスも、マダム・バーモンもO.

ヘンリーの小説『理想郷の短期滞在者』に登場するアイテムに過ぎま

せんが、その本を読んだ時、私は、気品を醸し出しているという点は

除いて、高級ホテルやリゾートという桃源郷「ホテル・ロータス」で

たった3,4日を過ごすために1年間がんばって仕事をしているまさ

に、マダム・バーマンそのものだと思いました。


            


 今はリゾートが世界中にあふれて、リゾートという言葉に特別感は

薄れてしまいましたが、まだ20年ほど前はハイソな香りをたずさえ

たエクスクルーシヴなイメージでとらえられていたと思います。


            


 リゾートにエクスクルーシヴな要素を持ち込んだ先駆けと言われる

アマンリゾートは、タイのプーケットのアマンプリから始まりまし

た。20戸ほどしかないバンガローが広大なヤシの森に点在し、メイ

ンプールは黒いタイルを敷き詰めたブラックプールで、見る角度で

海とつながっているように見える設計です。ロビーラウンジ、レスト

ランも完全アウトドア。巨大なヤシが途中にょっきと生える大階段を

下りると、ビーチボーイズが甲斐甲斐しくお世話をしてくれる白砂の

プライベートビーチとパラソル付きのデッキチャアが待っています。

望めば好きな場所でアフタヌーンティに、ランチボックス付きのピク

ニックをアレンジしてくれますし、プールサイドでは地元の主婦によ

るアフタヌーンティサービスが行われ、夜はタイの民族楽器の演奏を

聴きながら、ブラックプール越しにアペリティフに、ディナーにと、

長いリゾートの夜は暮れて行きます。


            


 小規模でラグジュアリーなハイダウェイリゾートは日常とも外界と

も切り離された桃源郷です。そこに一歩足を踏み入れた途端、たとえ

学生であろうと、サラリーマンであろうと、著名人やハリウッドスタ

ーであろうと、その同じ空間を共有するエクスクルーシヴなリゾート

の住人になってしまいます。ですから3日もいれば常連客のような顔

で親しくなったスタッフについ、いろんな要望も言いつけることにな

ります。当然、スタッフはそれに誠心誠意答えようとしますから、

それまで人に甲斐甲斐しくしてもらったことのない人でも、デッキチ

ャアに横になったままで、食べ物や飲み物の注文から、レストランの

予約、滞在を1日伸ばして欲しいという要求も堂々とできるようにな

ります。それにより起きる様々な手配や飛行機の便の変更などもスタ

ッフを通じてできます。その内、心配事は全部忘れて、世の中はどこ

もこのリゾートのように平和で豊かなのだ、という錯覚さえ覚えるよ

うになります。そこが高級リゾートの恐ろしい魔力だと思います。


            


 たとえ、リゾート滞在中に掃除が行き届いていないなどいろんな

不満な点があったとしても、手練手管で様々な魅惑的なシーンを見

せつけるリゾートに最後はやられてしまいます。そして喉元過ぎれ

ばで、素敵な情景、体験だけが残り、嫌な気分は消しゴムで消され

たように忘れてしまうのです。


            


 リゾートは奥にゆくほど深く濃密で、一度はまれば麻薬のように

常習性があり、断ち切るには難しく、そのため、リゾートから帰れ

ば、すぐにまた行きたくてしょうがなくなるという禁断症状が出ま

す。


            


 私は10年間のリゾートという麻薬と禁断症状から無事、社会復帰

できたとき、もっと身近に、いつでも、毎日でも行ける場所に桃源郷

「ホテル・ロータス」を作ることに決心しました。それが私の提唱し

ている自宅リゾート化の始まりなのです




   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

 「ホテル・ロータス」を自宅ホテルの名前にしようと
思い始めて早、18年、その間、
たくさんの「ホテル・ロータス」を
お客様のお家の中に作り出して来たように思います。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年1月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

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