MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載847回
      本日のオードブル

私とフランス語と
インテリア

第13回

「最後のホテル」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つ販売員。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




白く
波打った
天蓋用の曲線の
板の左右に下がる
ライトブルーグレーの
レースカーテン、その間から
光を放つシャンデリア7本の線が
入ったヘッドボードを持つ白いベッド
ナイトテーブル
ブルー&グレーの
リラクシングピロー
ライトグレーに輝く
ベッドスプレッド
ベッドスカート
ここはどこの
ホテル?






 



第13回
「最後のホテル」




 ココ・シャネルは没後50年以上経ってなお、多くの、特に女性に

影響を与え続けているデザイナーだと言えると思います。


            


 本名、ガブリエル・シャネルは孤児院で生まれ育ち、波乱に満ちた

人生に多くの謎を残しながらも、二つの大戦を潜り抜けてオートクチ

ュールという華麗な世界の第一線に君臨したままで、パリのリッツの

自宅レジデンスで生涯を終えました。息を引きとる前日まで仕事関係

の友人とリッツで食事をして「じゃ、明日、店でと!」と言って別れ

たと言います。そのホテル、リッツにあったシャネルの自宅は自身の

センスで細部に至るまでデザインされた伝説の住まいで、今でもその

名を冠した部屋はシャネル・スイートとして宿泊ができるようです。


            


 高級ブティックが軒を連ねるヴァンドーム広場に面したリッツの

レジデンスの自分のベッドで息を引きとることができるなんて、

これはその後、多くの人の憧れとなったのは当然です。それを真似

したいと実践した人がやはり日本にもいました。「さよなら、

さよなら、さよなら」という最後のセリフを聞けば、ああ、あの人

と名前は出なくても独特のしゃべり方ですぐに顔を思い浮かべる方

も多いと思いますが、映画評論家の故淀川長治さんです。


             


 淀川さんは都内の某ホテルでまさしくシャネルのように一生を終わ

りたいと願い、棺桶が入る大きなエレベーターのあるそのホテルに住

むことにしたといいます。結局、映画監督の黒澤明さんが亡くなった

2
ヶ月ほど後、病院で息を引きとることになり、その願いは叶えられ

なかったようですが、もしも、快適な美しいホテルの自分のレジデン

スで、最期の時を迎えられたらどんなにいいだろうと私も思いまし

た。しかし、庶民である自分がパリのリッツのレジデンスに住むな

ど到底できそうにないと思ったとき、方法は1つしかありませんで

した。それは自分のベッドルームを理想とするエレガントなホテル

の部屋に近づけることでした。そうする中で、快適で優雅で快適な

気分を味わう目的のためだけに、高級ホテルに宿泊するのはもう止

めようと思うようになりました。


            


 それは、2022年のカタールワールドカップの選手が宿泊する

5つ星ホテルでも大きな問題になったことですが、ホテルの清掃等を

行うスタッフの待遇です。世界のサッカー選手たちが宿泊するような

美麗なホテルを維持管理している人たちの大半が住む家を追われた移

民の人々です。彼らは劣悪な住環境に追いやられていますが、それは

カタールやアフリカ諸国に限らずアジア、アメリカ、ヨーロッパで

も同じだと思います。私は、プーケット島の高級リゾートでスタッフ

が早朝出勤してくる様子を見たことがあります。大勢が同じバスに乗

せられてやってくるのですが、その表情は暗いものがありました。多

くの家族を養っている人もいるでしょう、宿泊するゲストとは好対照

でした。また、シンガポールのコロニアルな老舗ホテルでも、大階段

の大理石の石段と真鍮の手すりを這いつくばりながら汗だくで磨いて

いたうら若き黒人スタッフの女性の表情が今も忘れられません。パリ

の高級ホテルでもハウスキーピングスタッフの大半が黒人です。彼女

や彼らは日々どう感じながら、おそらく一生に1度も泊まることはで

きないかもしれないホテルの部屋を掃除しているのだろうかと思いま

す。願わくは、彼らの住まいが狭くて清潔でありますようにと思うば

かりですが、そのような低賃金できつい仕事に従事している人たちに

支えられている世界の高級ホテルの現状を垣間見て来てきて思うこと

がありました。


            


 あたりに住む家もクリーニング店もないようなジャングルの中のリ

ゾートで都会のホテルと同じように、シーツに小さなシミを見つけて

シーツを交換させるのをこなれた客のふるまいとするのか、とか、絶

海の孤島のリゾートで星付きシェフの作るフレンチにマリアージュす

るワインを楽しむのが贅沢なのか、とか、サービスされる側の限りな

き要求とその優越感に浸っていると、その陰では、必ず大変な思いを

している、無理をしているひと、もの、ことがあるはずです。そこま

で人に、流通に、つまりは地球環境に無理をさせてでも楽しみに行く

のが経済原理に合った行動なのか?と、そんな疑問が湧いてきて、私

はリゾート礼賛を止めました。それなら、自分のベッドルームを常に

リゾートのような雰囲気にして、自分自身がハウスキーピングになっ

て、毎日、そこにチャックインして、近くのレストランでもっと安価

にフレンチにワインを楽しむ方が地域活性化、さらには地球環境にも

負荷をかけないことではないのかと思うようになりました。


            


 最後に残る問題点は自分で自分のベッドルームを清潔に整えておき

たくなる、その状態をキープしたくなるような部屋にすることです。


            


 私はこれまで100軒に迫るくらいの女性のベッドルームをコーデ

ィネートさせていただいたのですが、どんな部屋にするかを決める

時、常に提案することがあります。それは自分のベッドルームは、

自己満足が第一であっていいということです。もし、寝込んでしま

う状況になったとき、どんな部屋なら沈んだ気分にならずに済む

か、そして回復を早めることができるのかと考えると、自分の本当

の気持ちに反してかっこよさだけを狙ったら、きっと気持ちは上向

きにはならないかもしれないということです。


            


 基本は日々、清潔にすることです。その上で、心地よい寝具、

包まれているだけで幸せを感じられるような心地よいベッドリネン、

そして寝心地のよいベッドが生きてきます。その日だけの借り物の

リゾートや高級ホテルでは決して味わえない満足感が日々の幸せや

健康を与えてくれているのだと実感できたら、私はそれが自分にと

って最高で最後のホテルだろうというのが、今の結論です。


            


 さらに、窓の向こうに風光明媚な景色が広がっているところに

住んでないのであれば、おそらく都会に住む多くの人はそうかもし

れませんが、タヒチやモルディブ、エーゲ海、南仏のラベンダー畑、

モネの庭のような庭園、イングリッシュガーデン、あるいはパリの街

並み、マンハッタンの夜景、そんな自分の好きな風景が広がっている

ように演出する事はインテリアの力を借りれば可能です。


            


 インテリアの目的は、壁紙、ファブリック、家具や照明器具などを

利用してその場にはない風景、空気感を人間のイマジネーションの力

を利用しながら作り出すことだと思います。それこそがとりもなおさ

ずインテリアの役目だろうと思います。結局、インテリアはそこにな

いイメージの借景を作り出すことではないかと思うのです




   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。

   *リサコラムは毎週水曜日に連載いたします。

p.s.1

 イラストは私の今の部屋に少しアレンジを加えました。
何度も何度も描いてきた部屋なのですが、
やっぱり、部屋を見ながら描きました。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
 
 「もの、こと、ほん」は下の写真から、2023年1月号です。


           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
    の英語版です。
    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”
    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:
    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に
    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに
    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 



  バックナンバーの継続表示は終了いたしております。

  書籍化の予定のため、連載以外のページは見られなくなりました。

  どうかご了承くださいますように。













































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.