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リサコラム
連載919回
      本日のオードブル

『Audrey』

第9回

「オードリーの庭園紀行」

木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




緑深い庭園のベンチに座る

オードリーは

明らかにくつろいでいる雰囲気。

白いブラウス、白いスカート、

ライトブルーのベスト

白い服が緑に映えて

美しい。

実際はどのくらい美しかったのか

想像も尽きません。


 



第9回 「オードリーの庭園紀行」



 
 議長はジリジリし始めた。ガーデンパーティーの会場に移動した

メンバーは、相変わらずペチャクチャと話しに花が咲き、その花は

あちらこちらで咲き始めると、しぼむ気配がなかった。ただ1人居

場所を失っているのが議長その人だった。


            


 「みなさま!」議長の悲痛にも聞こえる呼びかけにようやく数人

が耳を傾けた。すると、他のメンバーも12人と話を止めて、

議長のほうに視線を向けた。議長は最後の力を振り絞るように、

また声を張り上げた。


            


 「みなさま、時間が押してはおりますが、最後をこの美しい庭園で

締めくくれることを、大変うれしく思います。オードリー・クラブ、

初会合の大事な目的はこの歓迎パーティです。それを庭園でやりたか

った理由はと申しますと、オードリーはユニセフ親善大使をやってお

りました頃、ある仕事を受けております。それが『オードリー・ヘッ

プバーンの庭園紀行』というものです」すると、広い芝生の庭の奥の

方で遠くの方で声が聞こえた。「はい、おっしゃりたいことは重々、

承知しております。皆様が一刻も早くシャンパンで乾杯されたいと言

うことも。しかし、晩年のオードリーを語る上で、『庭園紀行』は避

けて通れない重要なことです。そのこともみなさま、ご存じだとは思

います。そして、この場所を無償でお貸し出ししたいとのお申し出を

いただきましたメンバーの方に敬意を表するために、今一度、『オー

ドリーの庭園紀行』について考察したいと思っております」議長はそ

う言うと、深々とお辞儀をした。


            


 すると、まるで電波が走るように、次々に「どなたのお宅?」

「え~、誰?」「もしかして、オードリーのご子息の縁者の方?」

などと犯人捜しならぬ、恩人捜しが庭園の中で始まった。


 「そうです。あのマダム・オードリーさまがご自分の別荘のこの

庭園を無償で快くお貸しくださったのです。マダム・オードリー

さま、メンバーを代表いたしまして、心からお礼申し上げます」

議長はそう言ってから、マイクを置いて深々とお辞儀をした。

そしてまた、「みなさま、マダム・オードリーに拍手を!」と

マイクで高らか過ぎる程の声を挙げると、庭の方々から拍手が

沸き起こった。議長はまた騒がしさが戻ると判断して、さらに

最後の力を振り絞って、「それでは僭越ながら、乾杯の音頭を

取らせていただきます」と言ってから、一呼吸置き、「オード

リー・クラブの今後の発展と貢献に乾杯!」と声を挙げた。


             


 
パーティ会場はシャンパンとアミューズのオリーブでなごみ

始めると、すぐに、「メインはまだなの?」という声が聞こえ

てきた。議長は「お楽しみのお食事に行きたいところですが、

庭園をご提供頂きましたマダム・オードリーへの敬意を込めて

先ほど申し上げました通り、彼女の最後の仕事の意義について

、今、申し上げたいと思います。ご存知の方ももちろん大勢い

らっしゃると思いますが、メンバーとしてオードリーを忍んで

という意味もございます。まず、『オードリー・ヘップバーン

の庭園紀行』の撮影は1990年4月に撮影が始まり、1回、30

分、全8回の番組でした。1回の番組でも数か国の庭園を案内す

るという、今でも考えられないようなハードスケジュールで、

案内役のオードリーを含め、スタッフがヨーロッパ、アメリカ、

日本、そしてドミニカ、インドネシア、ハワイと旅をする紀行

番組でした。その頃、既にオードリーは癌に起こされ始めてい

たと思われますから、体調的にもすぐれない時もあったのでは

ないかと思います。そんな中でこの取材は決行されたのです。

非常にタイトなスケジュールの中、しかも、飛行機や電車、

車などを使っての大移動となりました。


            


 この番組の中には数々のオードリーらしい秘話があります。まず

番組の予算の問題がありました。そこで、オードリーはヘアメイク

や衣装担当の経費を削減するために、自分から申し出て、自分で

ヘアメイクを行ったと言うのです。それだけではありません。

衣装はオードリー用にオリジナルで作らせたものではなく、

すべてラルフローレンの店にかかっていた既製服をオードリーが

そのシーンに合わせて選んだものなのです。彼女はイメージに合

わせて細かに衣装を変えることにしました。さらにアイロン台と

アイロンを現地に用意させて、自分で衣装のアイロン掛けをした

そうなのです。私はそこにオードリーの真の素晴らしさを見まし

た。そんな女優さんは他にいらっしゃるでしょうか?めったにい

らっしゃらないと思います。


            


 そうやってオードリーの庭園紀行は始まりましたが、彼女は自分

でアイロンをかけ、ヘアメイクをし、セリフも全部覚えてから番組

に望んでも、遅刻することなどなかったそうです。それどころか、

ディレクターの服にまでアイロンをかけたという逸話もあります。

しかし、オードリーは自分のこの8回の番組を1度も見る事はなか

ったのです。さらに皮肉なことに第一回の番組はオードリーがなく

なった翌日に放送されました。オードリーはどんなにか無念だった

ろうと想像できます。彼女は庭と草花を愛していましたし、自分の

庭も他人の庭も愛していたはずですから、まさに適任でした。大変

な中にも楽しみもあっただと思います。。その上、さらに番組の出

演料はユニセフに寄付しているのです。


            


 彼女はオランダで戦時下を過ごしました。その子供時代に、

今のユニセフから施しを受けたお返しを、エチオピア、ソマリア、

南アフリカなど、飢餓に苦しむ人々を助ける基金集めの役を必死で

やったのだと言っています。もちろん、オードリーだけでなく、大

戦を経験した方にはそんな辛い出来事がたくさんあると思います。


            


 ここで、私事で恐縮でございますが、私の恥ずかしい、わがまま

な娘時代のことをちょっとお話しいたします。私は中学、高校と

制服のアイロンがけ、お弁当作りを母親にさせていました。

「学校も塾も部活もあるんだから、私、忙しいのよ」という顔を

して、専業主婦の母に、家事も何もかも押し付けて、手伝いもし

ませんでした。ですから、オードリーのこの話を知った時、浅は

かの極みだと思いました。自分がどれほどの人間なのか、知るこ

とも、わきまえることもなく…私はその反省を込めてそれからオ

ードリーのことを知ろうと思ったのです。


            


 オードリーは食べられない人がいるのに自分だけがおいしいも

のをたくさん食べるのは間違っていると言う考えから、贅沢のもの

は食べなかったそうです。その思想にのっとり、予算の都合も確か

にございますが、オードリー・クラブの基本理念にそれを盛り込む

ことにいたしました。そのため、ご承知いただいていると思ってお

りますが、このパーティでも贅沢なものはお出しできません。質素

なものばかりです。話が長くなって参りましたので、それではメイ

ンディッシュをお持ちいたします」。それを合図にバトラーがテー

ブルに皿を運び始めた。「みなさま、ご堪能くださいませ!」議長

はそう言うとマイクを外し、そして深々とお辞儀をした。


            


 運ばれてきた皿の料理を見て、あるメンバーは笑いだし、そして

またあるメンバーは口に手を当てて驚きの表情を表した。ひとりが

議長の方に歩み寄ると、「議長様、一体これはどういうことですか

?」と聞いた。しかし、議長は表情ひとつ変えずに、「と、おっし

ゃいますと?」とあえてゆっくりと返してから、「もしも、お召し

上がりになられたくなければどうぞそのままで構いません。お料理

の大半はこちらのお庭で採れたものでございます」と言った。女性

はただ口をぽかんと開けたままで、立ち去る議長の背中を追った。


            


 「いくらなんでもねぇ、ちょっとひどくない?」「どういうこと

かしら?」「なにこれ?」とあちらこちらから、悲鳴のような声も

聞こえてきた。そして一人が、「オードリーになった気持ちで、

恵まれない人たちに思いを寄せて、私たちも甘んじて粗食を楽し

むべきでしょう」と言うと、出されたものを、自分の皿に取り分

け、ナイフとフォークで小さくカットして口に運んだ。それにつ

られて、他のメンバーも同じように自分の皿に料理を取った。


 メインディッシュとして出されたものは、丸ごと蒸した、

にんじんそのままだった




      



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

『オードリー・ヘップバーンの庭園紀行』は

DVDがあります。亡くなった後に放送されたものを

見たファンの気持ち、どうだったでしょう。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年6月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

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