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リサコラム
連載921回
      本日のオードブル

『Audrey』

第11回

「始まりはティファニーで

朝食をから」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




高く結い上げた髪の毛

独特の高い鼻

細く長い首

ノースリーブの

黒いドレスの

華奢なその女性は

もちろん…


 



第11回 「始まりはティファニーで朝食から』




 彼女は冷蔵庫の扉を開けると、今晩の晩ご飯の献立をぼんやりと

考えた。オードリー・クラブの議長の前に主婦である彼女はこの

時間が最も苦痛な時間だった。しかし、それは致し方ないと諦め

てもいた。


            


 冷蔵庫にはトマト、ブロッコリー、レタス、きゅうり、エリン

ギ、たまねぎ、ベーコン、ピザ用チーズ、冷えたごはんがまだ、

1.5人分あった。それこれを頭の中で組み合わせると、彼女に

はひとつの選択肢しかないように思えた。そう、エリンギ、ブロ

ッコリーとトマトも加えたドリアだった。ほかの野菜はサラダに

しよう。スープは野菜でとったスープストックがある。それなら、

買い物に行かなくて済む。


            


 早速、彼女はキッチンの引き出しから大きな伊達メガネを取り出

すとたまねぎを刻み始めた。たまねぎを刻むために置いているその

大きなメガネだが、それでも完全には防ぎきれず、ぼろぼろと涙を

流した。彼女は悲しいから涙を流しているのか、それとも、たまね

ぎで涙を流しているのか、わからなくなっていた。そして涙をエプ

ロンでふくと、大きなため息をつた。長年、主婦をやっていても、

このたまねぎを刻む度に、料理をすることが辛くなる。家族はみな

たまねぎ料理が好きだが、その度に、大粒の涙をぼろぼろ流してい

ることをみな知らない。彼女はたまねぎをボールに移してレンジに

いれた。そして、片手鍋に冷たい牛乳2カップを入れると、そこに

丸いざるを乗せ、小麦粉を計量スプーンなど使わずに目分量で入れ、

冷たい牛乳の上にさらさらと落とした。


           


 中学の家庭科の授業では、バターを溶かしたフライパンにふるっ

た小麦粉を入れ、木べらで休みなく、ぽろぽろになるまで混ぜ、

それに、ダマにならないように少しずつ牛乳を加えてゆくと教わ

ったが、そんな律儀な方法では主婦の時間はとても足りなかった。

だから、もう20年も前から、牛乳に直接小麦粉をざるでふるい

入れてから、バターを溶かすやり方をしていた。彼女は木じゃく

しで鍋をゆっくりかき混ぜながらから口ずさみはじめた


Moon river, wider than a mile

I’m crossing you in style someday

Oh, dream maker you heart breaker

Whatever you are goin’, I’m goin’ your way….


                     


 これまで何度歌ったかわからない、ヘンリー・マンシーニ作曲の

世界中が知っているこの歌は、音域が1オクターブしかないオー

ドリーのため作られたと言われる。

 『ムーンリバー』、それはオードリーの歌声の入ったバージョ

ンと映画『ティファニーで朝食を』の中でイントロと合わせて

全部で3つがあるが、彼女はそのどれも好きだった。『ムーン

リバー』は1961年の公開の映画『ティファニーで朝食を』で

ヒットすると瞬く間に世界中で大ヒットした。しかし、オードリー

自身はプロの歌手ではないからということで、生前にはオードー

リーの歌声の『ムーンリバー』はアルバム化されなかった。


            


 “Moon river, wider than a mile~” 彼女はこの歌を歌い始め

るとすべてがバラ色に見えてくると感じていた。こんなに平和な気

分にさせ、そして夢を搔き立てる歌はほかにはないと思っていた。

おそらく、星の数ほどカバーされ歌われ続けているだろうが、手

に入る限りの『ムーンリバー』のCDやレコードを彼女は収集し

ていた。


            


 鍋の牛乳がぼつぼつ言い始め、どろりととろみを帯びたホワイ

トソースに変ってゆくのを確認すると、彼女は一旦火を止めた。

そしてレンジからしんなりしたたまねぎを取り出し、別の鍋でベー

コンと一緒に炒め始めた。飴色になる前の2,3分、火が通った

ところで、ホワイトソースを移し入れ、大きなガラスの耐熱皿に

バターなど塗らず、牛乳で湿らせてから、レンジであたためたご

はんを入れ、その上からブロッコリー、エリンギ、ミニトマトを

乗せ、ホワイトソースをかけた。そしてその上からパン粉ではな

く、クラッカーを砕いて散らした。あとはオーブントースターで

焼くだけだから、みんなが帰って来るまであと1時間は自分の時

間がある。サラダはドリアを焼いている間にさっと作ればいい。


            


 主婦であり家庭のシェフである彼女はそこまで終えると、ざっと

キッチンを片付けてから、椅子に腰掛けた。そしてキッチンの小窓

を半分だけ開けると、また小声で、


            


Moon river, wider than a mile~”と歌い始めた。

そもそも、自分はオードリー・クラブをこの先どのようにしたい

と思っていたんだろうか?もしかしたらそんなクラブなんて作るべ

きではなかったのか、必要ではなかったのかもしれない。オードリ

ーのファンであり、信望者であるみんながそれぞれに自分でファン

道を追求すればいいだけの話ではないか?そう、オードリーのよう

な人生、生き方を模倣したいと願っているのなら、それぞれがそう

なるように生きればよいのだ。ムーンリバーを渡る日はみんなそれ

ぞれのタイムスケジュールなのだとしたら、その夢の日を分かち合

う必要もないのではないか?そういうことになるだろう。そんな思

いが浮かんでは、自分で答えを出し続け、そして、先のことわから

なかったし、なるようになるだけだったのだからと自分を納得させ

た。


           


 映画『ティファニーで朝食を』は1961年、夜が明けたばかりの

ニューヨーク5番街に、人気のない通りを1台のイエローキャブ

がやって来るところから始まる。タクシーは、静まり返った街の

ティファニー宝石店の前で止まる。黒いスレンダーなカクテルド

レスを着た女性がひとり降り立つ。映像は、TIFFANYCo.とい

う大きな切文字の看板を下から見上げるようなアングルで、裕福

への憧れを表す。しかし、主人公は貧しい出身という設定なのに

、こんなゴージャスなオーダーメイドのドレスを自分で買えるわ

けはない。だれかに買ってもらうにしてもとても高価だろう。さ

らにオーダーメイドであるだろう黒い長い手袋、合わせた小ぶり

な黒いハンドバック。それに、ティファニー宝石店でもし作るな

らどれほどの価格になるだろうというくらいの、たくさんのパー

ルがつながったネックレスはイミテーションであったとして安く

はなかろう。1960年代にこんなスタイリッシュないでたちができ

た一般人がニューヨークにいたのだろうか?いたとしたら、おそ

らく映画スターくらいだろうに…『ティファニーで朝食を』は始

まりからたくさんの矛盾があるのに、そんなことは置いといて、

ストーリーは展開する。ティファニー宝石店のショウケースの前

でテイクアウトのコーヒーを飲み、手袋のままペストリーを食べ

、そして袋ごとゴミ箱に捨てて颯爽と立ち去るオードリー。この

2分53秒にいったいどれほどの女性が憧れとはかない夢を抱い

たことだろうか。


            


 大戦が終わって15、6年、ようやく世界に平和が訪れて、

もうこれからは戦争などしたくないと世界中の多くの人々がそう

思い、願っていた頃、インターネットなどもちろんなく、そして、

アメリカには依然、根深い差別もあり、貧富の差もありはしたけ

ど、まだアメリカンドリームがあった時代。女性の憧れはきっと

ここから始まったのだろう。オードリーの出世作は、この映画の

前の『ローマの休日』ではあるけれど、映画の主題とは裏腹に、


            


お金持ちとの結婚やお金持ちになることを夢見た女性たちの憧れ

を搔き立てたはずだ…そこまで考えてきて、彼女自身、今さらな

がらと思いながらも、あることに気づいた。おそらく自分だけで

なく多くの人がこのシーンに、そしてこの1960年代という古き良

き時代に憧れを持っているかもしれない。21世紀に生きる私たち

はその時代になにかしら、甘くノスタルジックな思いを抱き続けて

いるのかもしれないと。


              


 “Oh, dream maker you heart breaker,

Whatever you are goin’, I’m goin’ your way….
” 

「あなたが行くところへは、どこへでも行く」…彼女は確かめに

行くべきところはやはり、そこしかないと思った




 



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

 『ティファニーで朝食』をもじって

『ベッドルームで朝食を』というテーマの

自分のベッドルームを雑誌BonChicでやったことがあります。

永遠の憧れそして不朽の名作かもしれません。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年6月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

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    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
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