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リサコラム
連載927回
      本日のオードブル

『空想の部屋』

第4話

モネの絵とサイクリスト


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





はためく3色国旗

喜びに湧いている人々と街。

1878年の

パリ万博の時に開かれた

祭りの様子のようですが…




 



第4話「モネの絵とサイクリスト」



 多くの人は自分の誕生日が一番好きな日に違いないと思います。

同じ誕生日の人とはなんだかつながっているようにも感じるもの

ですし、親近感を覚えるもの当然だと思います。さらに運命的な

出会いは自分の誕生日と深くかかわっていると思います。青春時代

に友人ができなかった私にとっては自分の誕生日がタイトルの一

部となった絵画に出合ったことで、人生が大きく動き出したので

すから。



            


 今はプロの自転車レーサーとして世界中の大会に出るようになっ

私ですが、小学生の頃からずっと、友人、両親からはとろいと言

われてきたのです。学校の通知表の先生のコメント欄には「引っ込

み思案なところが見受けられる、人と接するのが苦手、作業が遅

い」などと書かれていました。今は、そんなマイナスの評価はし

ないのですが、しかし、それは事実で私は反論をする気もありませ

ん。そのため、実際に親友どころか、友人もできませんでした。

幸い、そんな箸にも棒にも掛からない人間はいじめの対象にさえ

ならなかったのだと思います。それはよかったことだと今では思っ

ています。


            


 
私の性格は平たく言えば、石橋を叩いて渡る性格です。学校の

遠足の時は、万一に備えて、懐中電灯、雨具にウェットティッシ

ュ、お菓子はリュックの内容量を計算して選ぶという、おおよそ

子供らしくない子供でした。もちろん、お菓子の金額も決められ

た額以下になるように計算して用意していました。そんな具合で

すから、何事も時間がかかるのです。


            


 小学生の頃は、10分休みにドッチボールしようとなると、

ドッチボールに最適な靴に履き替えて出て行くと、既にゲームは

始まっています。10分休み時間のドッチボールでさえそんな具合

ですから、学校の夏休みの自由研究の作品作りとなると、夏休み中

かかりました。やっと課題が決まっても、作品の模型作りから始め

ますので、どうしても時間がかかるのです。そこで最も短時間で、

材料も少なくできるように逆順で考えました。


            


 段取りが決まれば材料集め、作品作りですが、宿題と日程を

調整しながら1日にどの時間にどのようにやるかも決めるたりする

ものですから、友達と遊びに行ったりはできなかったと思います。

幸いなことに誰も誘いにやって来ませんでした。まぁ当然のこと

でした。そしてやっと、下調べをしてメモに取り、材料と分量と

そして予算立てもしてからホームセンターに1人自転車で買いに行

くのです。自転車は電車やバスなどと違って途中でバス停や駅に

止まったりすることもありませんから、最短距離で行けます。そ

れも段取りのひとつに入っていました。ものごとをロスのないよ

うに進めるのが、そして単独行動をする好きだったのです。


            


 そんな人間付き合いが下手で、友人もいない小学生にとっては

好きな場所へ行って、いろんな場所でいろんな発見をしたりする

のが趣味になりそして自転車は親友のような相棒になりました。


            


 そして、私は高校1年生のある日、近くの美術館でオルセー美術

館所蔵のクロード・モネの絵画展を見ました。モネという画家は

フランスのジベルニーという場所に自分の庭園を造り、造園家と

しても名を馳せた画家だとありました。その中で特に睡蓮の絵は教

科書にも載っている有名な絵ということまでは知っていました。し

かし、その中に不思議な絵が1枚ありました。それが『パリ、モン

トルグイユ街、1878630日の祝祭』というものです。フラン

ス国旗がたくさん描かれている、パリにあるモントルグイユという

通りでの祭りを描いたものだったのです。ちょうど、フランスで開

かれた万国博覧会の時の様子で、印象派絵画展に出品された絵だと

描かれていました。お祭り気分に沸き立つ街の雰囲気が油絵のタッ

チによく現れており、観客の声援が聞こえてきそうな賑やかな絵で

した。


            


 しかし、私を惹きつけたのは、6月30日の祝祭という日付でし

た。それは、私の誕生日だったのです。私は運命論者では決してな

いのですが、高校生のその時まで、友人らしい友人もいなく、唯一

の趣味と、相棒が自転車でしたから、その絵に運命的な出会いを感

じたのです。その絵との対面はその時限りでしたが、私の自転車熱

は加速し、世界中の自転車乗りの憧れのロードレース、ツール・ド

・フランスに出ることが夢、目標になりました。


            


 そしてとうとう、高校卒業後に単独、プロの自転車選手を目指し

てフランスに渡ることになりました。もちろん、そこでは自分だけ

との闘いではありません。チーム競技ですから、チームの中で厳し

い上下関係、ルールがありました。しかし、基本的には自分の体

力、精神力との闘いですから、コミュニケーション能力は問われま

せん。そこが私にはもっとも適したスポーツだったのです。私は遠

征を重ね、数々の国際レースにも出場するようになり、好成績を納

めることができるまでになったのです。そして、私にとっては奇跡

のようなことが起きました。それは今年、パリオリンピックの選手

に初めて選ばれたことなのです。コースの沿道にはフランス国旗

他、様々な国旗を振る人々が声援を送る中を、パリの名所をめぐ

りながらひた走りました。


            


 そこでフランス政府に任命されたお抱えカメラマンによって撮ら

れた写真の中の一枚がSNSを賑わせることになったのです。

それがピック通りの建物の屋上から撮られた写真でした。まさに、

1878年6月30日のモントルグイユ街の祝祭の絵そっくりだと、

多くの、そう、フランス大統領さえ、自身のインスタグラムに投稿

したほどです。実際は違う通りでしたが、アングルとその様子が

酷似していたのです。


            


 狭い通りにひしめく人々、声援、はためくフランス国旗、モネの

あの絵を彷彿として人が多かったことでしょう。カメラマンにとっ

ては最高の1枚になったことだと思います。アングルと状況がぴた

りと合っていたのですから。そして、私にとっても忘れられない

思い出のシーンになりました。私がツール・ド・フランスに出たい

と思うようになったきっかけを作ったモネの絵の中に、自分自身が

いたのですから。さらに、その絵の日付がまさに、私の誕生日だと

いうことも偶然が奇跡を呼んだとしかいいようがありません。


            


 
誕生日というのはとても強い力を持つ、不思議な記念日に違

いないと思います。そんな意味で、この先もクロード・モネの

絵と言えば、睡蓮ではなく、 

La Rue Montorgueil à Paris fête du 30 juin 1878


『パリ、モントルグイユ街、1878630日の祝祭』と

答えるでしょう





 



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

  『パリ、モントルグイユ街、1878年6月30日の祝祭』

の模写&アレンジです。

 写真の話しは実話です。2024年

8月4日のマクロン大統領のインスタグラムに

投稿されたモネの絵と競技の写真から

作った架空のストーリーです。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年8月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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