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リサコラム
連載928回
      本日のオードブル

『空想の部屋』

第5話

「セーヌの水浴場」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





セーヌ川の

湖畔にある

行楽地のひとつ

ラ・グルヌイエール

そこでふたりの若い画家は

よく絵を描いていたようです。

この絵は若きルノアールの絵に

ちょっと 似ているようです。




 



第5話「セーヌの水浴場」



 教授は一人の女子学生の答案用紙に目を留めた。


            


 そこには『印象派の絵画の特徴をこの二枚の絵で述べよ』という

設問に対する長々とした回答が用紙の裏面まで書き連ねてあったから

だった。それは小説のような会話から始まっていた。


            


 「みんな楽しんでるみたいね」白いドレスの女性は深いため息を

ついた。「君だって、十分に楽しんでるじゃないか」白いドレスの

脇に立っているシルクハットの男性は、女性の青いサッシュのウェ

ストに手を回した。


            


 「ええ、楽しんでますわ。パリからここまで馬車で揺られてきた

んですもの。まぁ素敵な場所だとは思いますわ。グルヌイエール…

そう、カエルの生息地って意味の場所にね。鉄道で30分で来れる

っていうのに、なんで、今どき、馬車なの?もう恥ずかしいったら

ありゃしないわ。もう、上流階級のステイタスが馬車なんて時代、

もう流行らなくなるわ」


            


 男性は、女性の白いドレスを上から下まで舐めるように眺めると

「ここに来るためにわざわざ作ってやったドレスを汚すわけにはい

かないからね」と、静かに答えた。


            


「だって、このドレス、暑いったらありゃしないわ。今年の猛暑

にこんな格好しなきゃならないなんて、不平等だわ。私、ステイ

タスなんて、もうけっこう。だって、ほら、ごらんなさい。あそこ

で水浴している若い女性たち、もろ肌脱いで気持ちよさそうじゃあ

りません?それに、あなただって、ずっとさっきから、彼女たちを

見てるじゃないの!私だって、こんなもの脱ぎ捨てて、水の中に

浸りたいわよ」


            



 「貴族出の淑女たるもの、あんなカエル族と同列になるわけには

いかないだろう」男性がそう言うと、女性はきっとした視線で男性

を睨みつけた。


            


 「パリの街だってパリ改革で斬新に変わりつつあるでしょ。女性

はもっと身軽になるべきよ。これからは女性もスポーツに参加でき

るようになるはずだわ。まずはこのセーヌで水泳を習いたいものだ

わ。女性は女性として生まれるじゃないわ。社会が女を女性として

しまうだけよ。私だって、男性と同じように大胆な発言をしたり、

仕事を持って社会で大いに活躍したいと思ってますわ。飛行機が空

を飛ぶ時代になったんだし、私だって飛行機乗りになれるかもしれ

ないんですから」


            


 男性はちょっと蔑むような目つきで女性を見ると笑い出した。

 「女性が飛行機で空を飛ぶ?どうやって?スカートが邪魔で乗れ

るわけないだろう」男性はまるで相手にしない雰囲気で、そう軽く

笑い飛ばすと、「ボートにでも乗るかい?」と、貸しボート小屋の

看板を指差した。


            


 「ボートなんて乗りたくはないわ。さっきから言ってるけど、

このドレスを脱ぎ捨てて泳ぎたいのよ。ほら、あの人たちみたい

に…」「そんなドレス姿で泳ぐつもりかい?」男性はまた馬鹿に

したように笑った。


            


 「今だけよ。そんなふうに馬鹿にできるのは。そのうちね、

こんなコルセットも全部なくなる時代がやってくるんだから、

私はそう思ってるわ。きっと私たち女性たちが反乱を起こして、

強くなって、そしてスポーツだって、何だってできる時代がやっ

てくる。私、確信しているの。だって、あのカエル族の彼女たちが

それを示してるじゃない。私はもう、着飾って出かけるのはいやな

のよ。ほら、あそこで絵を描いてる画家が2人いるでしょ。私たち

もあのキャンバスの中にいるはずよ。だから、私、モデルになって

るつもりで、我慢してここに立ってるんだけど、左の人、筆を動か

すのがものすごく早いでしょ。きっと顔なんてラフだろうけど。そ

れより一瞬の動きをとらえた絵がこれから流行ると思う。それに比

べて、隣の絵描きさんはちょっと遅いでしょ。きっと私はまだ、

キャンバスの中に描かれていないはずよ」女性はそう言うとその

場で服を脱ぎ始めた。


            


 「何をやってるんだ!やめなさい!」「いいえ、やめないわ!

私は進歩的な女性なのよ。なんと言われたってへっちゃらよ。私

もカエル族になるわ。私ね。実はこっそり水着を買ったの。この

ドレスの下に着こんでいるから安心して」そう言うと、女性は素

早くドレスを脱ぎ捨てると、どぼんと川の中に飛び込んだ」


            


 これが私の推測です。パリからほど近いブージヴァルに住んで

いたモネとルノアールが、1869年8月にセーヌの湖畔のラ・

グルヌイエールで共に画架を立てて描いたこの二つの絵は、印象派

の始まりと言われますが、それより、ルノアールの絵の中には白い

ドレスの女性が描かれていて、モネの絵の中には描かれていないの

が、私は最も気になりました。」


            


 教授は自慢の顎髭を撫でながらしばらく考えて、「なるほどね」

と言った。「大胆な推理と言えば、推理。だが、印象派の彩色分

割法なんて言葉を全く使わず、印象派の絵画の説明をした生徒は

始めてだし、絵の技術はまだまだだが…印象派の画家だって、最初

は下書きの絵だとか散々にこき下ろされたんだしね、特別に合格点

をやるとするか!」教授は女子生徒の答案用紙に『A』のハンコを

押した.




 



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

  『ラ・グルヌイエール』という場所の名前が

絵の名前になったルノアール24歳の時の作品を

iPadで模写&アレンジしました。
印象派の絵はチューブの

絵具を塗りつけたようなタッチで、当時は下書きの絵の

ようなと、絵としては認められなかったようです。

同じ場所で描かれたモネ29歳の絵は人物より、

水面のリアルな動きが印象的に描かれています。

検索でどうぞ!



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年8月号です。



           


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.s.3
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    の英語版です。

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    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
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-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
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