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リサコラム
連載929回
      本日のオードブル

『空想の部屋』

第6話

「ジルベニーの庭」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





睡蓮の池は

絵の中で見るより実物のほうが

遥かにすばらしいと言った

美術評論家がいらっしゃるようです。

モネ先生、どう思いますか?








 



第6話「ジルベニーの庭」




 「本日はお日柄も良く、開館初日のお天気にいたしましては、

少々、難アリとは存じますが、まあ、この通り、外は猛烈な台風

の嵐でございますから。しかし、ようこそ、いらっしゃいました。

こんな台風の中、わざわざご来館くださったのですから、しばし

日ごろの憂さを忘れ、そして、思いっきり想像の世界に身をまか

せていただき、ご自分の中にあるもう一つの扉を開け、さらに

もう一つ、またさらにもう一つと、奥深く隠された神秘の世界へ

とご自分を誘っていただければ願ってもないことでございます。


            


 そもそも人生というものはかくも短く、ままならぬものでござ

います。「おぎゃあ」と生まれたその瞬間から人の世の競争が始

まるのでございますから。


            


 私の祖父の話によれば、その「おぎゃあ」の瞬間から、私の母親

は目立ちたがり屋だったそうです。泣き方からしてものすごく、

ちょうど今日の台風のようだったと聞きました。そして成長する

にしたがい、その性質は、外づらよく、うそ、はったりが得意

な、負けず嫌いの少女へと進化していったそうでございます。


           


 まずはオードリー・ヘップバーンの映画を見てからはハリウッ

ドスターになると大言壮語し、しかし、容姿からそれもままなら

ないことが自分でわかると、次は宝塚に入ることに決め、しかし

それも同じ理由とさらに、経済的理由でままならず、次に、彼女

はピアニストになることを決意したそうです。しかしひと月で、

先生から「君はプロにはなれないだろう」とお墨付きをいただ

き、それならと、友人のバイオリンを借りてバイオリストにな

ろうという決意をしたそうです。しかし、その友人は自分のバ

イオリンを貸してはくれず、まぁ当然でございますが、親は無

論、買ってはくれず、そこで、バイオリニストになる夢も潰え

たのです。


            


 それで次に、なんと、ニューヨークのダンサーになると言い

出したそうです。『フラッシュダンス』という映画を見て、

感化されたようです。しかし、プロのダンサーになれるような

人は3歳くらいからクラシックバレエなどを習っていたなどの

下地のある人です。さらにリズム感や身体能力が伴わないとそ

の世界で活躍するのは難しいようでございます。何しろ私の母

は走ればビリ、身長差で並べば1番前から3番目でございまし

た。


           


 それならと、奨学金を得て、海外留学から帰国子女へ、その

後は語学を武器に世界を股にかけるビジネスマンになることを

決意したそうです。しかし、そこも難関といいますか、狭き門

といいますか、まずは、奨学金を得られる学力にはまるで達せ

ず、帰国子女→世界を股にかけるジェットセッターは程遠い道

のりとなったそうなのです。


            


 女優の道も音楽家の道もダンサーの道もジェットセッターへの

道も閉ざされ、高校卒業後に母が選択した道は、家の近所の小さ

な不動産屋に就職することでした。そこで定年まで営業事務をや

りました。しかし、目立ちたがり屋の母親が営業事務で満足する

わけがありません。毎日何とかして有名になれないか、他人から

注目を浴びるようなことができないかという恐るべき執念が、

なんと週末画家になることを決心させたのでございます。あらゆ

る成功者への道が閉ざされた後、貧乏な人間でも始められるもの

として、残されたものが絵を描くということだったのです。


            


 紙と鉛筆、何色かの絵の具があれば、誰でも絵を描くことは

できます。彼女は片っ端から有名画家、それも誰もが知るよう

な、つまり、レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザから模写を

始めました。模写に必要なスキルは想像力より観察眼でござい

ます。母親の中ではそれが最も得意なスキルだと発見したよう

なのです。と申しましても、タテから見ても、ヨコから見ても

モナリザには見えない作品だったそうですが…、しかし、なん

と彼女は自分のモナリザに気をよくして、有名どころの絵を次

々と模写していったのでございます。当然、何の訓練も受けた

ことのない素人の描いた絵は、これが同じ絵なのかと思う程、

似て非なるものが大半だったようです。それでも年月を経るご

とに、斜めから見たら、何とか見られるのではないかと思える

ものも出て参りました。そして、それらの絵を集めてみると、

枯れ木も山の賑わいなどと申しますが、ひょっとすると、ひょ

っとするかもとなりました。


            


 ここにお集まりの皆様、「何の能力もないと言われた人間で

も、人真似ならできる。そしてそれが1番の近道」と母は常々、

口ぐせのように申しておりました。ここにございます千点の絵

は、すべて私の母が誰もが知る有名どころの画家の絵を模写し

たものでございます。つまり、世界中のあちこちの美術館に足

を運ぶことなく、ここに来ればルーヴル美術館にある絵も、

NY近代美術館にある絵も、すべて同じ空間でご覧いただけるの

です。もちろん、すべて模写でございます。


            


 そして、このエントランスの正面に掲げておりますのは、母が

生前、一度足を運びたかったと申しておりましたジベルニーの

モネの庭園にあります、睡蓮の絵の模写でございます。以上、

私の長々とした前置きをご容赦いただいき、そんな母の意思を

息子の私が継ぎまして、この贋作美術館の開館にこぎつけしま

した次第でございます。


            


 母が好きだったモネのジルベニーの庭から、この美術館の名

を『ジルベニーの庭』と名付けさせて頂きました。贋作美術館

にふさわしい名前かと存じます。それでは、ご来館の皆様にお

かれましては、ごゆっくりと贋作の世界に足を踏み入れられ、

ご自分の中に眠っている別の扉を開けていただければと願う次第

でございます
。」



   



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

 ジベルニーの庭、まだ、訪れたことのない

行きたい場所のひとつです。

庭師モネの30数年を体感したいです。




p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年8月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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