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リサコラム
連載944回
      本日のオードブル

『Live in A Dream』

第6話

「非現実の

アフターサービス」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




シャネルが生前、住んだ

レジデンスがパリのリッツ。

そこはシャネルのセンスで

整えられたベッドルームがあるようです。

1泊、最低でも300万円。

まあ、1週間は滞在が普通でしょうか?






 



第6話 「非現実のアフターサービス」



 「あのぉ、私の希望するプランはおいくらくらいなものでし

ょうか?」女性はちょっとおどおどした様子でテーブルの向い

に座る男性に尋ねた。男性は、白い蝶ネクタイにピンタックの

入ったシャツを着て、黒いタキシードを着ている。何もない殺

風景の事務所とはあまりにも似つかわしくない。女性は不安を

感じていたが、乗り掛かった船だし、今までの5年を振り返る

と、自分自身に心の贅沢をさせたいという気になってはいた。


            


 2児の母で、シングルマザーの彼女は準備に数年をかけて

今年やっと新しい事業を企業化することができたが、もう後戻

りはできなかった。彼女が目指す地元の農作物を使っての農産

加工業は、SNSの力を借りて、何とか軌道に乗りつつあった

が、しかし、365日休みなし、幼稚園生と小学生で、まだま

だ手のかかる子供2人をひとりで養っていかなくてはなら

ない。これがあと何年続くだろうと思うと、ふと、束の間

の逃げ場を見つけたい熱望に駆られる。1日でいいから、

半日でもいいから、2人の子供を母に預けてひとり、夢心地

で過ごしたかった。


            


 しかし、この『非日常体験プラン』というものは信用できる

のだろうか?世の中には欺瞞とダミーがうようよしている。こ

んな時代にあって、こんな夢のようなことってあるのだろうか?

彼女はこのことを信頼できるママ友から聞いたのだ。彼女はその

経験をしてからというもの、見違えるように生き生きとして若

返り、脱サラ1年後にはもうすでに会社を2つも作ってしまっ

た。それもこれも「これ」のおかげだと言うのだから、彼女も

その同じ甘い蜜を味わってみたいと思ったのだ。


            


 面接官のような男性は、「〇〇さんのご紹介でございますね」

と黒縁メガネの中から、じっと彼女を眺めた。「そうです」

「すでにご希望は伺っておりますが、そちらのお部屋は少々

お高くございまして、アフターサービスも入れますと250,000

円でございます。アフターサービスなしでしたら半額の125,000

円で結構でございます。「アフターサービスって、いまいち…一

体何なんでしょう?」「このプランですと、大変格安だと思いま

す。ご紹介の方が上得意客の方でございまして、その方のスペシ

ャルディスカウントも加わり250,000円で結構です。もちろん、

アフターサービスにつきましてはご随意ではございます、私共も

強くアフターサービス付きのプランをおすすめいたします」


            


 「そうなんですか…」彼女は何が何だかわからなかった。

ただ、信用に値するポイントはただ1つ、彼女の信頼できる

友人の力強い推薦ということだけだった。


            


 タキシードの男性は、「いかがなさいますか?アフターサ

ービス付きでよろしゅうございますか?」と言った。女性は

「う~ん」と、うなり声を上げてから、「やっぱり、アフタ

ーサービスというものがどうしても私にはよくわからず…」

「それはよくわかります。今、すぐ申し上げたいところです

が、これこそが、私共の企業秘密でございまして…ただ、私

もアフターサービス付きを強くお勧めいたします。本来なら

アフターサービスなしでは、ご希望の効果は持続しないと言

った方がいいくらいです。さらに、このような価格で通常は

お出しできるサービスではありませんし…」「そうなんです

か…」女性は手を口に当ててしばらく考えてから、思い切っ

て、「それではそれでお願いいたします」と言った。


            


 「かしこまりました」男性はそう言うと、すぐに女性に住所

などの必要事項を書かせた。「それではスタッフが近日中に正

式な契約書をご自宅に持参いたします。その際、ご自宅の中も

少し見させて頂きたいと存じます」と言った。女性は友人から

そのことは聞いてはいたが、いったい、自分の部屋を見て何を

するつもりなのかとその点だけが心に引っかかっていた。男性

はそんな女性の不安な表情を察して、「ご安心くださいませ。

短時間で済みます…他にご質問がなければ、以上でございます

が…」と言った。女性はまだ半信半疑ではあったが、「わかり

ました。1か月後、またこちらに来ます」と言った。そして女

性は事務所の外に出た。


            


 それから1週間後、契約書を持ってスタッフの女性が彼女の

家にやって来た。そして家の中を丹念に見て回り、「わかりま

した。それでは3週間後に、お待ちいたしております」と丁寧

に頭を下げて帰って行った。


            


 約束の日、女性はまた同じ事務所にやって来た。蝶ネクタイ

の男性は、女性に、「リラックスできる準備がおできになられ

ましたら、ご自由にあのドアの中へお入り下さいませ。ごゆっ

くりと非現実を味わっていただくことになります。ただ、イリュ

ージョンですから、実物に触れたりすることはできません。

しかし、6時間後には本当のご褒美が持っているはずです」

それだけ言うと、男性は「それでは」と、部屋から出て行った。


            


 女性は思い切ってその非現実の世界への扉を開けた。中に

入り、そして絶句した。そこは彼女がずっとずっと憧れていた

パリにあるリッツのシャネルスイートそのものだった。ただ全

てがイリュージョンだから、手に触れて、ものの実態を感じる

ことはできない。しかし、この空間は紛れもなく、あのシャネ

ルスイートそのものだった。彼女はその部屋のひじ掛け椅子に

腰をかけてシャネルそのものの気分になっていた。これは夢な

のかそれとも現実なのか?そして次第に現実から遊離する感覚

に落ちて行った。


            


★夢見心地の3時間が経ち、ドアをノックする音ではっと我に

返った。「ああ、どうぞ!」「失礼いたします」先ほどの男性

がゆっくりとドアを開けると女性はまだずっと夢うつつの状態

で、雲の上を歩いているようなそんなふわふわした感覚のまま

男性の後ろを歩いた。


 「どうぞこちらへ」男性はまた殺風景な事務所のドアを開け

た。そこには黒いリムジンが止まっていた。「どうぞ、ごゆっ

くり」彼はぼんやりしたままの彼女に深々と頭を下げた。

そして運転手の案内で彼女が後部座席に滑り込むと、やわらか

いシートにもたれた。


            


 そして約30分後、リムジンは彼女の家の前で止まった。運転

手は意味あり気な顔でにっこり笑うと、すぐにいなくなった。

彼女はまだ夢うつつで家のドアを開けた。


            


 何か違う気がする。そう、空気が違う。彼女は脱力感に見舞わ

れ、寝室のドアを開けた。そこは先ほど見たシャネルスイートの

ような白く波打つなめらかなカーテンがベッドの上を覆い、シワ

というものが見当たらない鏡の表面のように整ったベッドが用意

されていた。「これは、いったい、どういうことなの?」女性は

シーツの上をそっと手で撫でるように触った。「私があのイリュ

ージョンを見ている間に現実にそんな部屋が出来ていたってこと

?そして、家中をピカピカに磨き上げて…ウソみたい、いや、ほ

んとよね?」彼女はバスルームに直行すると、うっとりする香り

のバスジェルで体を泡だらけにした。そして次第に非現実と現実

が合体してゆくのを感じた。


            


 「これがかの有名なアフターサービスということなのね」彼女

の幸せな人生の第2幕が始まったようだった





  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1


 シャネルスイート、2年前、N様邸にお作りしました。

きっと毎日が非日常に違いありません。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年12月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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