MadameWatson
マダム・ワトソン My Style Bed room Wear Interior Others Risacolumn
News
HOME | 美しいテーブルウェア | 上質なベッドリネン&羽毛ふとん | インテリア、施工例 | スタイリッシュバス  | Y's for living
リサコラム
連載946回
      本日のオードブル

『Live in A Dream』

第8話

「ホワイトクリスマス」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




都会に降る大雪

白い世界がこんなにも美しく

清らかで神々しいものかを

実感できる

それはまたとない光景になる。





 



第8話 「ホワイトクリスマス」



 ♪I’m dreaming in a white Christmas, just like ones I used

to know…
マイケル・ブーブレの定番のクリスマスソング、私は

いったいどのくらいこの曲をバックに使って仮想現実を作ってきた

だろうか?デジタルクリエイターとして。


            


 しかし、ほんとうにいい曲だ。出だしのこのフレーズしか歌えな

いが、ホワイトクリスマスを歌いながら、私は数えきれないくらい

仮想現実の世界を縦横無尽に歩いた。仮想現実とは遠く離れた場所

で、おそらくは果たせない夢を、小さなスマホの画面で果たすこと

だと言い換えができる、と私は思っている。


            


 スマホを開けば、紺碧の海を見下ろす崖の上に建つ家で、海と

つながったプールのデッキチエアに寝そべることができる。あるい

は、アラスカの大地を犬ぞりで走り、ヨーロッパに渡り、パリに行

き、エッフェル塔を跳び越して、次はニューヨークに飛び、エンパ

イアステートビルのてっぺんでランチをする、そんな荒唐無稽な様

々な顧客の要望にも応えながら、20数年をデジタルクリエイター

という仕事に費やしてきた。最初はガレージのオフィスの中で。

次は窓のない雑居ビルの一室で。朝なのか昼なのか、夜なのかも

わからないような時間軸の中で、一心に仮想現実を作り出してき

た。私にとって仮想現実がまさに現実なのだから、今が何時であ

ろうと、一向に問題ではなかった。


            


 そして今ではスマホの中の至る所に美しい世界、または驚くよう

な仮想現実が毎秒、無数に展開されている。それが現実なのか仮想


現実なのかを見分けるのはプロでも非常に難しいだろう。でも、

私のようにデジタルクリエイターとして仕事がある限り、それが

悪いわけとは言いたくない。


            


 しかし、30年前に天国に行ってしまった祖父にこんな話をした

ら、理解できるだろうかと、時々思うことがある。祖父は戦争に

行って運良く戻ってきた人間だが、戦地として行った南方のジャ

ングルでの話を小さい頃によく聞かされた。もし祖父が今も生きて

いたとしたら、今は120歳位になっているだろう。彼はまさに、

地に足をつけた現実を生きてきた人間だが、しかし、不思議なこと

に私と似ているところがある。それは、夢のようなことや、贅沢な

ことが好きなことだ。食べ物も、着る物も、持ち物も、そして住む

家にも、贅沢を旨としてこだわりを持っていた。私はそんな祖父を

尊敬し、さらに憧れの対象として見ていたことも事実だった。普通

のサラリーマンの父を持つ息子の私はいつしか、父ではない、祖父

のようなかっこいい生き方をしたい、そのためにはなんとか成功し

たいと思うようになっていた。そして、選んだ職業がデジタルクリ

エイターだった。


            


 祖父は常に、あっち行ったり、こっち行ったり、旅をしながら

悠々自適に暮らしていたが、そんな暮らしに心から憧れはありなが

らも、デジタルクリーターとして忙しくなると、現実に旅行に行く

必要も、リゾートのような家を作る必要もないのかのように思う

ようになった。


            


 そして、今年の夏、私は大病を患った。日ごろの不摂生の賜物

と言えるだろうが、入院生活というものを経験して初めて現実と

仮想現実は違うということを実感することになった。仮想現実を

作り続けながら、現実との区別がつかなくなっていた私にとって

ベッドでの生活は新たな経験でもあった。仕事では、常に手触り

感のあるもの作り出してきたつもりだが、人間という一つの生き

物には、仮想現実では不足している感覚が必要だということを突

き付けられた思いだった。それから次第にデジタル世界がいやに

なってきた。


            


 私はもし、このベッドから出て、外を歩けるようになったら何

をしたいかと、毎日、毎時間、毎分、毎秒ごとに考えた。そして

私がどうしても経験したいと思ったことが1つだけあった。それは

ずっと暖かいところで生まれ育ち、生活をしてきて、さらにスキー

もやったことがなかったせいで本物の雪を触ったことすらなかっ

た。だから、本物の雪を触りたいと思った。その感触は一体どん

なものなのか、退院したらぜひ味わいたいと思うようになった。


            


 それにはどこの雪がいいのか?北海道なのか、アラスカなの

か、私は夏中、病院のベッドの中で考え続けた。人間、いつどう

なるかわからないということを身をもって経験した私は、祖父の

ように一度はぜいたくな経験をしたいと思うようになっていた。

その場をパリのホテル、リッツのあるヴァンドーム広場に設定し

た。秋がきて、やっと、退院できることになると、パリのリッツ

で雪を感じたいと思ったのだ。


            


 パリは大雪が降ることがたまにある。しかしそれがいつ降るの

か、もちろん推測できないが、11月、単身でパリに行った。

そして、リッツまで徒歩圏のアパルトマンを探して、そこに住む

と、毎日、気象情報ばかりを探った。過去のデータでは、2013

年、2010年には11月にパリで大雪が降っていた。そして、

幸運なことに、2024年の11月21日から、13年ぶりにパリ

は大雪に見舞われた。屋根裏の小さな窓からは真っ白い世界が広

がっていた。夢に見てきたことを実現できるチャンスは今しかな

かった。


            


 22日の午前4時、吹雪の中、ヴァンドーム広場に向かった。

私はリッツの前の広場を大股で、ゆっくりと歩いた。私の他には

誰もつけていない足跡をそのまっさらな雪の上に残しながら。

そして、保冷バックに雪を詰め込むとリュックに入れた。からだ

はブルブル震えていたが、寒さのためではもちろんなく、震える

ほどの感動のためだった。雪と言うものはこんなにも繊細で、

そして柔らかいものなのか、それをパリのホテル、リッツを前に

して体験したのだ。


            


 ひと月早いホワイトクリスマス、♪I’m dreaming in a white

Christmas, just like ones I used to know…
もうここで倒れて

もいいとさえ思った。仮想現実を作り続けてきたデジタルクリエ

イターの夢が実現したほんものの白い夢の世界だった





  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1


美しくないものを覆い隠し、

美しいものだけを見せてくれる、

パリの大雪、一度でいいから経験してみたい。


p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年12月号です。



           


p
.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
    お申込はこちら→「Contact Us」                                     

                                       * PAGE TOP *
Shop Information Privacy Policy Contact Us Copyright 2006 Madame MATSON All Rights Reserved.