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リサコラム
連載947回
      本日のオードブル

『Live in A Dream』

第9話

「ひとりきりの

クリスマスナイト」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




森の中の別荘

しんしんと降る雪を

ガラス越しに眺める

幻想的なベッドルーム

明日はクリスマス

そこで流れる歌は?





 



第9話 「ひとりきりのクリスマスナイト」



 12月24日、が落ちた森の小径をひとり黙々と歩いた。雪は長靴

の半分位まで埋まるほどの深さに降り積もっている。まだ10分ほど

歩いただけで、すでに足先は感覚を失い、指先は手袋を2枚重ねてい

るにもかかわらず、じんじんとしびれていた。これから先、あと1キ

ロくらいの道のりがあるだろう。


            


 私は、“サイレント、ナイト、ホーリーナイト~”と、大声で歌い

ながら、神が作り出したアートのように白く美しい風景に祈りを込

めた。それは侘しさとはまるで無縁の別世界だった。


            


 雪に埋まる足を引き抜いては、また一歩、また一歩と、まっさら

の白い道に自分の足跡をつけてゆく。その度に、ある言葉が頭の中

でパッと光り輝いた。


            


 最近では年末に雪を見る事もまれになったが、私の子供の頃は冬

の朝は常にこんなにしばれる感覚があった。雪もよく降った。雪合

戦に、雪だるま作りにとなると、大騒動だった。それもそのはず、

私は大家族で育ったのだから。兄姉4人と、ベビーシッター兼雑用

係の通いのお手伝いさんが2人。叔父、叔母、祖父母、両親。さら

に、どういうわけかわからないがどこかのお兄さんがいつも住んで

いた。その昔は書生と言ったそうだったが、つまりは下宿人だっ

た。私はそんな大勢の中で一番下の人間として誰にも意識されず

育った。そして、クリスマスには大勢でわさわさと夕食のテーブル

でケーキを食べた。


            


 いつの間にかお手伝いさんはひとりになり、知らないお兄さんも

兄姉も家を出て行った。そして、祖父、祖母の順で天国に行き、

大家族は、とうとう両親と私になった。しかし、すぐに兄姉の

子供がやって来るようになり、ガヤガヤした日々が展開された。

そして高校卒業、大学入学と同時に私は寮生活に入った。大勢の男

たちの中で日々を送り、クリスマスは家に帰らない10人くらいの

寮生たちと一緒にその辺りで買ってきたケーキにろうそくをつけ、

そしてシャンパンもどきの甘すぎる炭酸入りワインを飲み、無駄話

をして形ばかりのイヴを過ごしたりした。


            


 社会人になると、やはり会社の寮に入り、大学の寮とあまり変わ

らない男くさい日々を送った。クリスマスイヴには大半が彼女との

クリスマスを外で楽しむ中、私と同類の、女性に相手にされない

人間2、3人が寮のひとりの部屋に集まってひざを突き合わせて飲

み会をした。次の日が休みであれば遅くまで飲んで食べて、そんな

ことを繰り返した。


            


 そんな私もなんとかパートナーを見つけて結婚することができた

が、翌年、双子の男の子が生まれ、一気に家族が4人に増えた。

子供が成長すると共にクリスマスはさらに頭の痛いイベントになっ

た。クリスマスや誕生日のプレゼントのミニカーがどんどん増え、

救急車6台がサイレンを鳴らすうるさい日々は、クリスマスになる

と最高潮に達した。その子供たちも成長してそれぞれ結婚すると、

すぐまた子供連れでやって来ては、家の中は始終、しっちゃかめっ

ちゃかになった。そんな戦争状態のような日々が10年ほど続いた

後、息子の娘たちがクリスマスにも子供を連れてやってこなくなる

と、今度は妻が自分の友達やらを呼んで、『大人のクリスマス』と

称した飲み食い会を始めた。


            


 妻は友人を集める達人だった。さらに要領がよかった。自分は場

所だけを提供して、友人たちの持ち寄り料理をわいわい食べ、その

女友達に後片付けをさせ、キッチンをきれいに磨き上げさせてから

帰した。きっと仕事でも同じように要領よく人を使っているのだろ

う。その後、数日は友人たちが来る前よりはるかにピカピカになっ

たキッチンを眺めながら、スーパーのお惣菜で食卓を飾り、料理ら

しいものを作らなかった。


            


 そんな『大人のクリスマス』が10年ほど続いた後、私が定年を

迎える今年の1月4日、彼女は離婚を申し出た。私は全く寝耳に水

で、理由もわからないまま、翌日、役所が開くと同時に離婚届は受

理され、彼女はすぐに出て行った。


            


 それから春、引退を機に思い切って、念願の森の別荘を持とうと

決めた。もともとDIYは好きだったため、友達の大工さんやら、

左官さんやらいろんな人たちの助けを借りながら、ログハウスのよ

うな小さな家で長年の夢を叶えることができた。完成当時、私の

心臓はバクバクするくらいに喜びにあふれ、ベートーヴェンの歓喜

の歌が生身に染みた。私は初めてひとり暮らしになった。


            


 夏が秋と次第に入れ替わり、小さな別荘の庭にも木枯らしがやって

来て木々の葉を落とさせ、その裸になった木に雪が積もるようにな

った。そして今日、12月24日がやってきた。


 今日は周辺にある無人販売で野菜やわずかな果物を手に入れて、

またザクザクと雪の中を踏みしめて歩きながら、私の森の家に帰っ

て来た。一歩、一歩、雪の中に足を入れる度に、頭の中であの言葉

が光り輝いた。それは「ひとりきりのクリスマスナイト」だった。


            


 この世に生まれて、65年、大勢の人間の中で強制的に生活せざ

るを得なかった人間にとって「ひとりきりのクリスマスナイト」が

どんなに輝いて見えたことか、心の底から湧き上がるこの憧れの風景

がどれほど神々しいオーラを放って私のしびれた足と指先を温めて

くれるものなのか、ずっと「ひとりきりのクリスマスナイト」を

経験してきた幸運な人間には決して、決して、わかるまい。



  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1


 今日はクリスマスイヴ

1年で最もせわしない日。

ひとりきりで雪を眺めながらベッドでほんが読めたら

ステキ以外に何があるでしょう?



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2024年12月号です。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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