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リサコラム
連載954回
      本日のオードブル

『名画の中へ』

第6話

Yumeko


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。





竹久夢二の

『黒船』

夢二の理想の女性像を

求めて彷徨う

船にも見えます。

そんな都合のいい女性はいるのかな?






 



第6話  「Yumeko」



 私は昨年の春、京都の街に1日1組だけのハウス、フランス流

にはシャンブル・ドット、まぁ簡単に言えば、民泊に毛が生えた

ような民宿を作りました。


           


 開業に至るまでは紆余曲折ありましたが、ただ、場所はずっと前

から決めていたのです。京都に観光に来られる方のお宿ですから、

歩いて10分以内で御所に着ける、そして、おいしい料理屋さんが

隣近所にある場所でと、そんなやや厳しい条件で探した結果のこの

場所でした。まずは空き家になった町家を買い取り、古いよいとこ

ろは極力残しながら、冬寒く、夏暑い京都の気候でも快適に過ごせ

る宿に改装したのです。


            


 晩御飯は隣近所の料理屋さんが面倒見てくれますから、私は朝の

コーヒーと、お野菜がたくさん乗ったオムレツをお出しするだけで

す。実は京都は全国でも1番くらいにパン屋さんが多いといいま

す。ですから、朝食のパンは近所の美味しいパン屋さんの焼き立て

をお出ししています。その朝食が好評なのか、1年経とうとしてい

る現在まで、休館日以外は1日も部屋を開けることなく営業ができ

ています。


            


 それでも運営は大変です。私とアルバイトのたった2人で営業し

ておりますので、お客様がチェックアウトされた後はもうてんやわ

んやの大騒動です。ベッドリネンはなめらかなシーツの風合いをな

くさないようにのりをつけず、すべて手アイロンで仕上げたものを

使っておりますし、羽毛ふとん、アレルギー対応のおふとん、枕な

ど使い、そして必ず毎回ふとん乾燥機、もしくは天日干しにて消毒

をいたしております。その様子は全てSNSで公開しておりますので

それを見て、「すごいと思った、安心した、清潔感が感じられたから

この宿にした」などと言うコメントが多数ありました。それで、

もう止められなくなりました。


            


 お部屋の準備はおふとんが乾く間に部屋のすべての埃を落し、

掃除機をかけ、さらに床、家具などの拭き掃除、窓ガラスも毎日拭

き上げます。もちろん水回り、お風呂も一分の隙もないくらいに完

璧に清掃をした後で、さらに電気を消した中で懐中電灯の灯りだけ

を当てて汚れが残っていないかの確認をします。ハンガー類もすべ

てアルコール消毒いたしますし、ドア、壁までふける部分はすべて

アルコールで拭き掃除をいたします。


            


 そして、お客様をお迎えしたら、生のハーブを使ったハーブテ

ィ、自家焙煎の店から毎日配達してもらうコーヒーかお抹茶をお客

様の目の前でお淹れします。お風呂は、寒い時分はゆず湯、5月5

日の子供の日はしょうぶ湯をご用意いたします。たった1組のため

なのに、本当に大変で、もう息つく暇もありません。なんでこんな

に大変なことを始めてしまったんだろうという思いがふと浮かぶ度

に、いやいや、これでよかったのだと自分をなだめています。


            


 それと言うのも、私は家を飛び出してしまったために、もう後

には引けないからなのです。家には母が1人おります。私は母から

離れたかったのです。箸の上げ下ろしまでとよく言いますが、母親

とはいえ、小姑のように、毎日、朝から晩まで細かな注意喚起を受

けます。(笑)これまで、もう数え切れない位の喧嘩をしましたし

、家出も試みましたが、その度に、私にはここしか戻る場所がない

のかと思い知らされ、悲嘆に暮れました。


            


 私は物心つく頃からずっと、母1人、子1人の質素な暮らしで、

父が家にいる様子を知りません。その真の理由をずっと聞き出せず

に、中学、高校、そして成人を迎え、そして社会人になりました。

仕事を始めたら、母と離れている時間は長くなりましたが、それで

も母との折り合いの悪さは私の大きなストレスでした。母は70歳

を前に現役で仕事を続けており、自活していくのには何の不安もな

いと思います。そこで私は5年前、このハウスを作ることを心に決

めました。


            


 どんな部屋で、どんなインテリアで、どんなおもてなしをするの

がいいのか、人をもてなすというのはどういうことなのかを考え続

けました。もちろん、今も日々、考えています。そこで1つの結論

に至ったのはより良いおもてなしは、ゲストにも同等くらいのスト

レスを感じさせているということです。もてなす方はもちろん良い

気分で過ごしてもらえるようにと心を砕きますが、もてなされる方

も同じように、嫌な客と思われたくない、感じよいお客さんであり

たい、宿のスタッフに過度な負担をかけたくない、時には多少はオ

ーバーに褒めなくてはならないなどと考えるものなのです。だから

おもてなしというのは一方通行ではないと思います。相互に心を砕

いて、つまり、相手からも、もてなしを受けているのだと思うので

す。


            


 もし、そんなことを母に言おうものなら、「また、夢見る夢子が

始まったよ!」と、まずはなじられ、それから私の考えの甘さ、

さらには私の生き方そのものに対する批判が10倍返しでやってき

ます。母の機嫌を損ねないように、それ以上小言を言われないよう

にと、そればかり心を砕いてきた私の人生ですが、実は、お互いに

ストレスを与えていたのだと感じるようになりました。


            


 私は生まれてから35年間、母と一緒に暮らして来て、やっと、

離れて暮らすことができましたが、こんなひどい親子が他にあるわ

けないとずっと思ってきました。しかし、つい最近、友人が遺産

相続を巡り、骨肉の粗争いをし、残った親と裁判沙汰になったと

聞きました。しかも、2年たってもお互いに譲らず、和解は希望

せず、この先どうなるだろうかと悲嘆にくれたメッセージが度々

送られてきます。今は人間不信に陥っているようです。


            


 また、別の人は、自分の家を含め、右隣りを見ても、左隣りを

見ても、前を見ても、後ろを見ても、親子関係がうまくいっている

家なんて全くないと言います。そんな現実を知って、テレビコマー

シャルで流れるなごやかな家族の風景は、はたして大多数なのだろ

うか?と考えるようになりました。現実に、泊まりに来られるお客

様と世間話をしていても、しばらくすると親子関係の行き詰まりの

話に発展することがよくあります。それもかなり深刻な。そんなと

き、うちだけじゃなかった、とほっとする思いです。


            


 ハウスメーカーの家のコマーシャルのように、3世代の家族の団

らんの風景は、みんな俳優だからできるのであって、撮影が終われ

ば、バラバラに帰っていく。あれは、他人だからうまく行くんだよ

と言った解説者がいました。私は真なりだとその時に、開眼しまし

た。家族団らんのコマーシャル風景はそれが一般的な家庭のものの

ように信じ込ませるものであって、真実ではない。だから、うちだ

けがどうしてうまく行かないのかと悲観的な気持ちになる必要はな

いとわかったのです。


            


 そして、もうひとつ、私はずっと母から、『夢見る夢子』と言わ

れてきました。夢のような実現不可能なことばかりを夢見ていると

いう意味です。私は前に一度、竹久夢二の美術館で彼の絵を見た時

に、あんな穏やかな世界で暮らしたい、あんなたおやかな女性にな

りたいと思いました。それ以来、竹久夢二のファンになりました。

そして、自分の宿に竹久夢二の世界観を反映したいと思いました。

黒猫を抱いた美しい着物の女性のような女将になりたいと思ったの

です。しかし、夢二の40数年の短い人生は穏やかどころではなか

ったのです。今でいうグラフィックデザイナーとして、成功を納め

はしても、私生活は犯罪の1歩手前を行く、いえ、今では犯罪者そ

のものでしょう。数々の女性遍歴をする中で、嫉妬に駆られて殺傷

事件のようなことも起こしています。しかし、そんな気性の激しい

人が描いたとは思えない絵ばかりです。そのことを知ってから、仕

事ではうまくいっていても、人間関係もうまくいっているとは限ら

ないからこそ、こういう穏やかな美しい姿形の女性の絵が好まれた

のではないかと想像しています。


            


 私は黒猫を抱いた有名なあの絵を模写して、宿ののれんに染め抜

き、宿の名を『Yumeko』としました。だって、人生劇場には

一筋縄では解決できないこと、人間関係ばかりですから、無理に解

きほぐそうとせず、なすがまま、なされるがまま、多少、白昼夢を

見ているようなこの黒猫を抱いた女性の風情で、京都の町歩きを、

御苑の庭を散歩して頂ければと、そんな思いを込めているつもりな

のです




  



上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。


p.s.1

竹久夢二の生きた時代は大正ロマンという時代だそうですが、

人生は波乱万丈、海外渡航を経験したものの

帰国後、瞬く間に人生の終焉を迎えます。

儚さが伝わるように、ちょっと雪景色にしてみました。

箱に書かれた文字は、『黒船』ではなく、

『魔多無和斗尊』わかりますでしょうか?

マダム・ワトソンという当て字です。

意味は、摩訶不思議多くも、無理なく、

和を尊ぶ斗でありたい?(笑)




p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2025年2月号です。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
  1,944円にてお届けいたします。
 
 ご希望の方には、ラッピング、イラストをお入れいたします。     
                           
    
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