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リサコラム
連載1001回
      本日のオードブル

『千夜と千日』

第2話

「パリの雪の朝」


木村里紗子のプロフィール

マダム・ワトソンで400名以上の顧客を持つデザイナー。
大小あわせて、延べ1,000件以上のインテリア販売実績を持つ。
著書「シンプル&ラグジュアリーに暮らす」(ダイヤモンド社
紙の本&電子書籍)(2006年6月)
「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」
(電子書籍2014年8月)
道楽は、ベッドメイキング、掃除、アイロンがけなどの家事。
いろいろなインテリアを考えだすこと。
新リゾートホテルにいち早く泊まる夢を見ること。
外国語を学ぶこと。そして下手な翻訳も。

20年来のベジタリアン。ただし、チーズとシャンパンは好き。
甘いものは少々苦手。
アマン系リゾートが好き。ただしお酒はぜんぜん強くない。
好きな作家は
ロビン・シャーマ、夏目漱石、遠藤周作、中谷彰宏、
F・サガン、
マルセル・プルースト、クリス・岡崎、千田琢哉、他たくさん。




パリに雪が降る

大雪が降る。

中世の街はたちまち、

メルヘンの世界へと。







 



第2話 「パリの雪の朝」




 「パリに大雪、降ってる!すごい!」千代はLDKでテレビのニュ

ースを見ながら、まだパジャマを着たままで大あくびをしながら部屋

に入ってきた夫の千春に向かって言った。


            



 「ねえ、パリに大雪が降ったんだって、60年ぶりよ、記録的だっ

て!」「はあ」「わ~、モンマルトルの丘でスキーやってる!すごい

ね~、スキー場でもないのに!」


            


 千春はテレビの方には目もやらず、パジャマを脱ぎながら、バスル

ームへ行った。しばらく、強いシャワーの音がした後、白いバスロー

ブを羽織り、白いタオルで頭をすっぽりかぶった千春が湯気と共に

パタパタとスリッパの音を立てながらリビングに入って来た。千代

は千春のいつもながらの姿を見て、「まさに、そんな感じ!車も家

も真っ白け!60年ぶりだから、まさに、記念日だね!」千代がそ

う言うと、千春は「うん」とだけ言って、ダイニングテーブルの周

りを一周してから、カウンターの向こうに回り込んだ。千春は素早

くカウンターの下からコーヒー豆の缶とミルを出して、がりがり始

めると、香ばしい香りが当たりに立ち込めた。まだ頭からタオルを

かぶったまま、すぐに慣れた手つきでコーヒーメーカに粉と水を

入れると、スイッチを入れた。次に結婚祝いにもらったマグカップ

二つとお揃いの皿を2枚出すと、トレーに並べた。


            


 「パンが焼き上がりました」結婚祝いにもらったパン焼き機から

女性の声がした。千春は素早く、焼き立ての食パンをまな板の上に

取り出した。片手にキッチンタオル、もう片手に新婚旅行先のドイ

ツで買ったゾーリンゲンの長いパン切りナイフを持って「あちち!」

と言いながら、均等にパンをカットすると、パンかごに移し、

そのままダイニングテーブルの上に置いた。その間も千代はずっと

テレビの海外ニュースにくぎ付けになっている。


            


 
夫の千春は冷蔵庫から、野菜ジュースのパックをひとつ脇に抱

え、数種類のジャムの瓶が載った細長いトレーを片手に持ち、もう

片手で冷えたゴブレット2個をひょいとつかむと、テーブルの上に

並べた。1m角くらいのテーブルは、パンかご、食器のトレーやビ

ン類、飲み物の容器などでいっぱいになった。


            


 「モーニングの準備ができたよ!」千春はソファの横に座り込ん

でずっとテレビを見ている千代に声をかけた。「うん、ありがとう」

千代はテレビに向かってそう言うと、「先にいただくよ!」と千春

の声が背中に聞こえた。「どうぞ」千代はまたテレビに向かって答

えた。


           


 
「これは、記念日になりそうね~。でも、たまに降ったら電車は止

まるし、道路は滑るし、高速は止まるし、色々やっかいだけど、降ら

なかったら困る人もいるよね、スキー場とか、観光地とか。でもさ、

パリの人って、なんでも遊びに変えるっていうのか、遊び方もセンス

あるっていうか、やっぱ、なんか違う気がしない?日本じゃ、大雪が

降ったからって、仏教寺院の丘の斜面でスキー遊びなんてするかな?

しないよね、ねえ、どう思う?」千代は黙々と食事をする千春の方を

見た。


             


 「うん、そうだね」千春はそう言うと、すぐに、「お先!」と言っ

て、食器をキッチンのシンクに運んだ。手早く食器を洗う音がして、

次に、バスルームで歯を磨く音がした後、千春はスーツ姿の数学者に

なって、ようやく朝食のテーブルについた千代の横にやってきた。


            


 「あのさ、さっき、記念日って言ってたけど、僕らも記念日のお祝

いしようか?最近できた駅前のフレンチとかどう?」と早口で言っ

た。「お祝い?いいけど、なんのだっけ?結婚記念日は今日じゃな

いよ」「いや、結婚記念日じゃなくて、結婚した日から2年8カ月

と27日…」「ええ?なに、なに?2年8カ月と、20何日…」

「つまり、2年と270日で、1000日目の記念日だよ」

「1000日目!へえ…」「フレンチでいいなら、予約入れとくけ

ど、さっき、パリ、パリって騒いでたから…」千代はいちごジャム

をたっぷり塗ったパンを頬ばりながら、目玉をくるくる回すと、

「う~ん」と曖昧に唸ってから、「1000日記念日ね、まあ、

いいけど、数学の先生だと、記念日はそうなるのか、いいよ、わ

かった、フレンチで行こう!」千代がそう言うと、千春は「それ

じゃ、予約しとくね、千代さん、遅刻しないようにね、行って来

るよ!」と言うと、玄関までスリッパで滑るように駆け出した。

そしてすぐに、ドアの鍵をかちりと閉める音がした。


            


 千代は、まだ、テレビを見ながら独り言を言った。「ちょうど

60年ぶりって、60年前ってことだから、ええと、19…」

その時、
ドアの鍵が開く音がした。次に玄関の方から千春の大

きな声が聞こえた。「ごめん、2024年はうるう年だったから、

今日は1001日だ、ごめん、ごめん!」「ああ、そう、別にいい

けど、駅前のフレンチ、7時ね」と千代がダイニングから、首を

玄関の方に向けて答えると、千春は、「さっき、何が60年ぶり

って言ってたっけ?」とまた叫ぶ声が聞こえてきた。


            


 千代は片手にパンのかけらを持ったままで、玄関に走り寄ると、

「パリの大雪よ!」とうんざりした顔で笑った。「ああ、そう、

1966年か!それじゃ!」というと数学者はバタンと音を立て

て出て行った。


            


 結婚して、1001日目の朝も、100日目の朝も、この微妙な

すれ違いは変わらないように千代には思えた。そして、おそらく

2000日目もそうだろうと。ただ、利点もあった。この2本の

平行線は決してぶつからないということだった。





   




上のイラストから、「リサコラムの部屋」に入れます。



p.s.1


 平行線は平和な線でもありますね。

千代と千春のように世界の国々がこの先もお互い

干渉することなく、

平和であり続けますますように。



p.s. 2  インスタグラム、私の日常です。

  
「もの、こと、ほん」は下の写真から、2026年1月号へ。



           


p.s.3
    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

    の英語版です。

    写真からアマゾンのサイトでご購入いただけます。


           


    タイトルは、"Bedroom, My Resort”

    Bedroom Designer’s Enchanting Resort Stories:

    Rezoko’s Guide for Fascinating Bedrooms


    趣味の英訳をしてたものを英語教師のTodd Sappington先生に

    チェックしていただき、Viv Studioの田村敦子さんに

    E-bookにしていただいたものです。
 
p.s.3
    下は日本語版です。

    E-Book「Bedroom, My Resort  リゾコのベッドルームガイド」

   どこでもドアをクリックして中身をちょっとご見学くださいますように。


                 







































































シンプル&ラグジュアリーに暮らす』
-ベッドルームから発想するスタイリッシュな部屋作り-
 
(木村里紗子著/ダイヤモンド社 )                      Amazon、書店で販売しています。 なお、電子書籍もございます。

マダムワトソンでは 
                                    
    木村里紗子の本に、自身が愛用する多重キルトのガーゼふきんを付けて
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